「Tablet Solution Award 2012」受賞7ソリューションを一挙紹介!

2012年4月20日(金)
Think IT編集部

2012年2月28日、Androidタブレットを活用した法人向けソリューションのコンテスト「Tablet Solution Award 2012」(主催:インプレスビジネスメディア)の表彰式が開催された。全142の応募ソリューションの中から、日本ユニシスのクラウド型タクシー配車システム「smartaxi」」がグランプリ(最優秀賞)を獲得。その他6社のソリューションが協賛企業賞や特別賞を受賞した。本稿では、同コンテスト各賞の受賞ソリューションを紹介する。

グランプリ グランプリ
smartaxi
日本ユニシス
タブレットとクラウドで効率的・迅速なタクシー配車を実現

デジタル無線に代わるSaaS型ソリューションを提供

タクシー事業者は各車のドライバーに呼びかけて配車を行うために無線を用いているが、これまで主に使用してきたアナログ無線は2016年6月までに完全停波することが決まっており、デジタル無線への移行が急がれている。しかし、多くのタクシー事業者は、依然として続く経済不況の影響やタクシー台数の適正化対応などによって厳しい経営を強いられており、デジタル無線の導入に踏み切れないでいる。

タクシー業界が直面しているこの課題に着目し、日本ユニシスが開発したのが「smartaxi」(スマートタクシー)である。同社 流通第二事業部 ビジネスサービス営業四部 サービスイノベーションプロジェクトの村島光太郎氏は、同システムを次のように説明する。

「smartaxiは、タクシー無線に比べて不感地帯が少ないNTTドコモの携帯電話回線を使用し、車載端末として汎用的なAndroidタブレット端末(GALAXY Tab)を採用しています。デジタル無線に移行する際に必須となる基地局(アンテナ)の建設や専用端末の配布などの設備投資は不要なうえ、バックエンドの配車システムをタクシー会社側で個別に導入・構築するのではなく、SaaS型サービスとして日本ユニシスが提供します」

同社は、タクシー業界最大手のkmホールディングス(以下、km)と協業。横浜市を営業エリアとするkmグループのケイエム国際タクシーとともに2011年8月より実用化検証を実施し、翌9月にsmartaxiの本番稼働を開始した。

タクシー利用者に一番近い車両をシステムが検索して自動的に配車

smartaxiを活用することで、どのような配車が可能となるのだろうか。

まず、空車状態で街を走っているタクシーに搭載されたAndroidタブレット端末のGPS情報が、日本ユニシスのエンタープライズクラウドサービス「U-Cloud」にリアルタイムに集められ、各車両の現在位置が地図画面上に表示される。タクシー会社の配車センターのオペレーターは、タクシー利用者から迎車依頼を受けると、あらかじめ顧客データベースに登録されている固定電話番号からCTI(Computer Tele-phony Integration)連携によって自宅位置を検索する、あるいは今いる場所を直接ヒアリングして、同じ地図画面上にフラグを立てる。

すると、タクシー利用者の現在位置から一番近くにいる車両が検索され、対象車のドライバーへの呼びかけ、利用者のもとへのナビゲーション、到着予定時間の計算など、配車に関する一連の処理が自動的かつ迅速に行われる。流通第二事業部 システムサービス四部 システム3プロジェクトの主任である楡亮輔氏は、さらにこのように補足する。

「タクシー依頼者の一番近くにいる車両の検索は、直線距離ではなく実際のルート検索で行うため、かなりの高精度で到着予定時間を計算できます。なお、smartaxiを運営するU-Cloudと配車センター、車載端末の間の通信すべてを秘匿通信で行うとともに、利用者に関する情報は車載端末には一切残しません。万一、車載端末が盗難に遭った場合には、smartaxiとの接続がセンター側から遮断されます」

アジャイル開発を推進し現場のニーズを迅速に反映

「Tablet Solution Award 2012」表彰式の模様 「Tablet Solution Award 2012」表彰式の模様

もっとも、ここまで漕ぎ着けるまでに、さまざまな苦労があったのも事実だ。

「ケイエム国際タクシーのドライバーの方々と何度も話し合いを重ね、試行錯誤しながらユーザーインタフェースの設計にあたりました」と語るのは、システム統括部 Webビジネス技術室の担当マネージャを務める真野悟氏である。

「タクシードライバーの中には60歳以上の比較的高齢な方も多く、特に強く求められたのが、『文字を読みやすく』『タッチパネルのボタンはできるだけ大きく』といった要望です。これらの内容を素早く端末に反映し、ふたたび評価を受けることで、ユーザーインタフェースを洗練していきました」(真野氏)

同氏はそうした観点からも、一般的なカーナビと同等の7インチという画面サイズで高い視認性を持つとともに、マルチタスクのアプリケーションを容易に開発・統合できるAndroid OSを搭載したGALAXY Tabを採用したことは、ベストな選択であったと考えているという。

サーバー側ではオブジェクト指向プログラム言語の「Ruby」、それをベースとしたWebアプリケーション開発フレームワークの「Ruby on Rails」を全面採用。配車センターで使用するオペレーター用の画面を含め、バックエンドのシステム構築を行ってきた。システム統括部 Webビジネス技術室 Rubyセンターの主任である篠田健氏は、そこでの取り組みを次のように語る。

「タクシー配車のような、臨機応変な対応が求められる業務には、その時々の状況にあわせて画面表示を変化させる動的なWebアプリケーションが最適です。こうしたシステム開発で最も高い生産性を発揮するのが、Ruby on Railsなのです。すべての処理をRuby/Ruby on Rails環境で実装していくことでアジャイル開発を推進し、現場から寄せられる多様なニーズを取り入れてきました」

タクシーに搭載されたAndroidタブレット端末に表示された「smartaxi」
タクシーに搭載されたAndroidタブレット端末に表示された「smartaxi」

クラウドならではのメリットを活かしさらなるサービス拡充を目指す

こうして約80台の車両を対象に稼働を開始したsmartaxiは、すでに大きな成果をもたらしている。アナログ無線による手配に比べ、配車効率が大幅に向上した。

「配送センターのオペレーターの方からは、『迎車依頼が殺到する雨の日でも、以前の30%以上の配車実績を上げている』という評価をいただきました。また、最適なタクシーを自動で見つけて配車するため、各ドライバーに対して平等かつ均等に指示を送ることが可能となり、営業面でも大きな貢献を果たしています」と楡氏は語る。

この実績をもとに、日本ユニシスではsmartaxiを全国各地の他のタクシー会社にも積極的に展開していく考えだ。流通第二事業部 ビジネスサービス営業四部 サービスイノベーションプロジェクトの山本恵美氏は、smartaxiビジネスの現状を次のように語る。

「全国にある日本ユニシスの営業網を利用して展開するなど、営業活動を本格化させています。すでに数社から具体的な引き合いが寄せられています」

一方、日本ユニシスでは、smartaxiのさらなる機能強化やサービス拡充を見据えた構想にも着手している。

「既存サービスの『無事故プログラムDR(ドライブレコーダー)』、電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHV)向け充電インフラシステムサービス『smart oasis』との連携をはじめ、タクシー利用頻度の高い顧客に向けた配車依頼アプリの提供、他のクラウドサービスとの連携など、さまざまな機能拡張のあり方を検討しています」(村島氏)

問い合わせ先 ● 日本ユニシス株式会社
URL:http://www.unisys.co.jp/solution/smartaxi/
Mail:smartaxi-info@ml.unisys.co.jp

協賛企業賞受賞 協賛企業賞受賞
ヘルスライフパスポート
アイエスゲート
34カ国対応により世界で利用可能な問診支援アプリ

医療機関を訪れた患者が、タブレット端末を使って現在の症状や過去の病歴を入力できる。医師の診察前に実施する問診作業を効率化するのに役立つ。

34カ国の言語に対応し、質問内容を日本語以外で表示できる点が特徴だ。指定した言語で質問を表示するほか、その内容をどの言語で翻訳するのかも指定できる。これにより、日本に限らず世界の様々な地域で利用することが可能となる。

問診内容はメールで医療機関の受付に送信され、PDFファイルとして保存できる。これを印刷して医師に渡せば、日本語を話せない外国人でも、既往病歴などを的確に告知できる。医療機関での利用を想定するほか、ドラッグストアや旅行代理店、海外へ渡航する個人用途も見込む。

ヘルスライフパスポート
問い合わせ先 ● 株式会社アイエスゲート
電話:03-5879-4527
URL:http://www.isgate.co.jp
Mail:h.honda@isgate.co.jp

協賛企業賞受賞 協賛企業賞受賞
PanoPlaza
カディンチェ
パノラマ写真を使って店舗や施設内を再現

周囲360度の撮影が可能なパノラマ写真を活用し、店舗や施設などの様子をタブレット端末上に再現する。ユーザーはあたかもその場にいるかのように、施設内を自由に移動することが可能。不動産物件や結婚式場などの様子を、現地へ行かずに案内するといった用途に向く。

写真内に動画や画像、テキストなどを埋め込む機能を備える。店舗の詳しい情報や販売する商品情報などを、動画やテキストを使って分かりやすく説明できる。そのほか、フロアマップを表示して現在地を特定したり、キーワード検索により指定したエリアを探し出したりすることもできる。導入実績として、大丸松坂屋百貨店が大丸東京店の1階にある洋菓子売り場を、Pano Plazaを使ってウェブサイト上に再現している。

PanoPlaza
問い合わせ先 ● カディンチェ株式会社
電話:03-6412-8958
URL:http://www.kadinche.com
Mail:info@kadinche.com

協賛企業賞受賞 協賛企業賞受賞
SMMASh
シエロアスール
動画と資料の2画面表示が可能な情報配信プレーヤー

タブレット端末の画面を2分割し、動画とスライドなどの異なるコンテンツを同時に表示する。例えば一方の画面で商品に関するプレゼン資料を表示し、もう一方の画面で具体的な使い方を動画を使って分かりやすく説明するといったことが可能になる。社内研修やセミナー用コンテンツなどを作成する用途に向く。

動画は一時停止したり、拡大したりといった操作が可能。スライド式のプレゼン資料なら、画面下部にスライド一覧を表示し、好きなページを容易に呼び出せる。2画面の表示比率を変更し、一方の画面だけ拡大させることも可能だ。そのほか、動画にリンクしてスライドを表示する同期機能や、利用者がどの画面でクリックしたのかを記録する機能なども備える。

SMMASh
問い合わせ先 ● 株式会社シエロアスール
電話:03-5402-4284
URL:http://www.cielo-azul.jp
Mail:smassh@cielo-azul.jp

グランプリ 特別賞受賞
ABook
エージェンテック
動画や音声を埋め込んだコンテンツを容易に作成

PDFや動画、画像、音声などを組み合わせてインタラクティブなコンテンツを作成し、これをタブレット端末に配信できる。営業担当者は本コンテンツを活用することで、顧客に対してインパクトのあるプレゼンを実施でき、自社商品などの訴求力を高められる。

独自のオーサリングツールを備え、PDF内の任意の場所に動画や画像、音声をドラッグ&ドロップで簡単に埋め込める。これらをタップした際に再生するのか、画面を切り替えるのかなどのアクションを指定することも可能だ。

セキュリティ対策も万全で、ユーザーごとに配信できるコンテンツを制限したり、コンテンツの公開期限を設定したりすることでデータ漏えいに備える。

ABook
問い合わせ先 ● 株式会社エージェンテック
電話:03-5207-3781
URL:http://www.agentec.jp
Mail:sales@agentec.jp

グランプリ 特別賞受賞
Pro-Salon
三和マッチ
美容室の予約/顧客管理をタブレット端末から利用可能に

美容室業務をタブレット端末を使って支援する。予約済みの顧客の来店時間をチェックしたり、顧客のカルテをもとに過去の髪型や要望などを事前に確認したりできる。立ち仕事の多い業務であることを想定し、持ち運びが可能なタブレット端末を使って主要な情報にアクセスできるようにした。

カルテ画面では、タブレット端末のカメラを使って施術した髪型を記録できるほか、施術中に気づいたことをメモとして保存できる。

レジ機能も備え、施術内容を画面上から選択するだけで料金を表示する。これをもとにオーナーは、日々の売上などを把握することができる。ポイントを付与したりクーポンを発行したりすることも可能。

Pro-Salon
問い合わせ先 ● 三和マッチ株式会社
電話:086-239-1077
URL:http://www.netstudio.jp

グランプリ 特別賞受賞
iField
マルティスープ
端末内蔵のGPSやカメラをフィールド業務に活用

タブレット端末を活用してフィールド業務を支援する。直感的な操作でフィールド業務に求められる様々な機能を利用できるようにした。

特にGPSを活用する。管理者は各作業員の現在位置を特定するほか、「いつ、どこで、誰が、どうした」といったステイタスも迅速に把握できる。作業員は、対象物件の設備情報や写真などを端末経由で確認できるほか、ナビゲーション機能を使って目的地までのルートも調べられる。

報告書の作成もタブレット端末を使うことで簡素化する。端末が備えるカメラを使って作業完了写真を送信すれば、報告書を作成する時間を短縮することも可能だ。そのほか、メンバー間でメッセージを交換する機能なども備える。

iField
問い合わせ先 ● マルティスープ株式会社
電話:03-5302-1357
URL:http://www.multisoup.co.jp

“オープンソース技術の実践活用メディア” をスローガンに、インプレスグループが運営するエンジニアのための技術解説サイト。開発の現場で役立つノウハウ記事を毎日公開しています。

2004年の開設当初からOSS(オープンソースソフトウェア)に着目、近年は特にクラウドを取り巻く技術動向に注力し、ビジネスシーンでOSSを有効活用するための情報発信を続けています。クラウドネイティブ技術に特化したビジネスセミナー「CloudNative Days」や、Think ITと読者、著者の3者をつなぐコミュニティづくりのための勉強会「Think IT+α勉強会」、Web連載記事の書籍化など、Webサイトにとどまらない統合的なメディア展開に挑戦しています。

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