HTML5 Conference 2012レポート―HTML5の過去・現在・未来
Web技術者の祭典「HTML5 Conference 2012」が9月8日、慶應義塾大学 日吉キャンパスで開催された。申し込み総数1,000人超、4トラック22セッションと、HTML5に関するイベントとしては国内最大級。主催はHTML5開発者コミュニティhtml5j.org。本レポートでは、基調講演を中心にいくつかのセッションをセレクトしてお伝えする。
このイベントは通過点に過ぎない
メイン会場となる藤原洋記念ホールで行われた基調講演では、株式会社シーエー・モバイルのWeb先端技術フェローであり、html5j.org管理人でもある白石俊平氏と、グーグル株式会社のエンジニアリングマネージャである及川卓也氏が登壇した。
「HTML5に関する過去・現在・未来」と題して、まずは白石氏が本イベントとコミュニティのこれまでを振り返る。html5j.orgは定例の勉強会(HTML5とか勉強会)を主体とし、年に一度大きなカンファレンスを開催してきた。2011年8月にグーグルと共催した「Chrome+HTML5 Conference」がそのはじまりで、昨年は200名を募集したところ6日で応募者が1000人に達したため抽選で来場者を決定したという。その教訓もあって今回は募集者数を1,000人に拡大したものの、受付開始後わずか30時間で定員を超えるなど『HTML5というキーワードの盛り上がりを再確認できた』と話す。
HTMLとか勉強会は月に1度定期的に開催しており、すぐに枠が埋まってしまうことでも有名。直近3回はモバイル向けのフレームワークを取り扱ってきた。
図1:HTML5とか勉強会の歴史 |
また、約5000人のメンバーを誇るML(Googleグループ)では白石氏自身が最新情報スレとしてこれまで200件以上を投稿しているなど、非常にアクティブなコミュニティとして成長を続けている。今日のイベントは通過点に過ぎず、今後も、html5j.orgが標榜している「つながる」「学べる」「盛り上がる」をテーマに、活動を加速させていくという。
HTML5はアプリケーション開発フレームワーク
続いて、及川氏は技術的なトピックに関して所属するGoogleのサービスを例に解説した。同社のWebテクノロジーは2004~2005年にスタートした「Gmail」や「Google マップ」に遡る、今ではおなじみのサービスだ。2007に提供を開始した「Google Gears」はアドオンとして各社のブラウザにインストールしてもらい、オフライン機能などを拡張させた。その後2008年に、同社の代表的なツールの1つであるChromeブラウザが登場する。「アプリケーションプラットフォームとしてのWebに最適化したブラウザだ」と同氏は自負する。
2009年ころから次第にHTML5というキーワードが使われるようになり、2010年「アップルショック」と呼ばれる、故スティーブ・ジョブズ氏が発表したAppleによるFlashの停止措置が引き金となり、一気にHTML5へのシフトが進むことになる。この時期からiPhoneを皮切りにスマートフォンやタブレットが本格的に普及をはじめる。
図2:基調講演に登壇した及川氏(写真左)と白石氏(写真右) |
現在ではブラウザに留まらないところまで技術が広がっている。HTML5はアプリケーションの開発フレームワークとなり、これまでWebの世界ではできなかったことがどんどん実現されている。GPUアクセラレータなどを駆使し、ネイティブ環境と遜色ない環境が整いつつある。「かつてのブラウザはインターネット閲覧ソフトだったが、現在ではクラウドプリケーションのフロントエンドになっている。と同時に、ローカルデバイスとの連携も今後ますます発展していくだろう」及川氏はこのように講演を締めくくった。