HTML5 Conference 2012レポート―HTML5の過去・現在・未来

2012年9月18日(火)
インプレスジャパン コンピューターテクノロジー編集部

最後に、「Web最先端、エキスパートたちの視点から」と題されたセッションを取り上げる。このテーマのもと、新野淳一氏(publickey)が司会をつとめ、及川卓也氏(グーグル株式会社)、白石俊平氏(株式会社シーエー・モバイル)、羽田野太巳氏(有限会社 Futomi)、小松健作氏(NTTコミュニケーションズ株式会社)が登壇した。

これまでの発展とこれからの発展

本セッションでは以下の3点について、それぞれの意見が交わされた。記事では便宜上、5名の発言をひとつの話として扱わせていただく。

  • これまでの3年ほどを振り返って変わったこと
  • Webテクノロジーの成功要因について
  • これからのWebテクノロジーは社会とどのようにかかわっていくか

まずは、イベントの主催団体である「html5j.org」発足時(2009年当時の名称は「HTML5 Developers JP」)の話があった。Flashの評価が高かった一方でHTML5は冷遇されていた。初回の勉強会に集まったのはたったの7人。今回のような1000人規模のイベントが開けるほどになるとは、当初のメンバーは誰も想像していなかったという。

ところが現在、HTML5はWeb以外の業界からも注目され、3年前とは状況が大きく違っている。それはHTML5で実現できることの幅が広がり、画像や音を単に再生したりといった“WEBらしい”機能だけでなく、他のデバイスとの連携など、HTML5自体がWEBの枠を超えた有用なものに発展してきたからである。そしてここまでの発展には、開発者個人によって作られたコミュニティと、ブラウザ開発ベンダーなどが一緒になって作りあげていくというオープンな環境が、うまくかみ合ってきたことが大きく寄与している。とくに、誰もが自由に作ってフィードバックをくり返すことができた点が功を奏した。

一方で別の要因として、iPhoneがFlashに対応しなかったために、シェアの高いiPhone端末のために開発者たちがやむをえずHTML5を使った状況や、アプリを作って「App Store」に登録する際のAppleによる審査を通らなくても、HTML5で開発すればWebアプリとして直接提供できるという利点があるなど、Appleの影響が大きかったことも指摘された。

そういった環境下で、デバイスの進化などの要素も絡み合い、ビジネスがきちんと成り立ちはじめた。もともとWebが持っているポテンシャルをどんどん引き出せるものとして、HTML5は注目を集めはじめたということだ。

Webテクノロジーは、用途が広がるなかで必要性も高まり、将来に向けて発展していくことは確実だ。PCやスマホなどに限らず、テレビやカーナビ、デジタルサイネージなど、ディスプレー表示されるものはすべてWebになりうる。ステークホルダーもどんどん増えていく。

それに伴い、新しい課題が発生する可能性がある。例えば車のメーターを表示させるものであれば、システムのパフォーマンスが悪いと命に係わる。そのようなときに、現在とは違う観点での課題解決力が必要になる。また、多様な業界で使われる技術としてHTML5を標準化していくには、自動車や家電といったWeb以外の業界とも歩調を合わせて協力していかなければならない。登壇者からは、「そのような環境下でも、これまでのようなWebらしいドライブ感やスピード感を保ちながら、技術革新を続けていくことができるだろうか」、という現実的な懸念も指摘された。

(コンピューターテクノロジー編集部 永山菜見子)

図4:壇上を埋め尽くすボランティアスタッフ

本セッションを含む当日の様子はUstreamの過去のライブで視聴できる。また登壇者の講演資料も随時公開されているので併せて参照するとよいだろう。

著者
インプレスジャパン コンピューターテクノロジー編集部

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