仮想化の導入だけではコスト削減を実現できない!?

2013年3月28日(木)
塚本 浩之

仮想環境管理ツール選択の着眼点

仮想環境の管理では、管理対象の数の増加に適切に対応することがポイントとなる。

仮想サーバの数は物理サーバの増加ペースとは比較にならないほど急速に増大する傾向がある。最近では仮想化ソフトウェアの性能も向上しており、マルチコア化による物理サーバの性能向上もあって物理サーバ上に集約できる仮想サーバ数も増加している。さらに現在では1台の物理サーバ上で数十の仮想サーバが同時に稼働するような構成も珍しくはなくなってきている。
こうした大規模な環境を的確に監視するには、「運用管理者が1台1台丁寧に目を配る」などという方針では到底対応しきれない。運用監視ツールに求められるのは、多数の仮想サーバを俯瞰的に監視し、全体状況を見やすく提示する一覧性や、問題の発生をいち早く察知して管理者に通知してくれるインテリジェンスなどだ。その上で、運用管理者の作業をストレスなくサポートしてくれる洗練されたインターフェイスやワークフロー設計が伴っていることも重要だ。

図5:System Answer 仮想監視(本社事務用仮想ゲストの一覧)(クリックで拡大)

問題発生に気づいた場合、掘り下げ方向では時系列を遡った分析が必要な場合もあれば、同じタイミングで他の仮想サーバがどうなっていたのかを探る水平方向の調査が必要になる場合もあるだろう。こうしたさまざまな分析を的確に支援するためには、ツールの可視化機能にも高度な洗練が求められることになる。また、問題点を迅速に発見するには、対象を効率よく抽出できることも重要になる。
たとえば、リソース消費量や負荷状況などに基づいたランキング表示などは、多数の仮想サーバの中から注目すべき対象を絞り込む上で効果が高いし、あるグループだけを絞り込むような検索機能も重要だ。

図6:System Answer 仮想監視 (仮想ホストのリソースサマリ)(クリックで拡大)

たとえば、あるユーザーが利用している仮想サーバ群だけを抽出する、といった操作はクラウド事業者などでは日常的に必要になるだろう。

さらに、仮想化ソフトウェアがどのような処理を行なったのか、その詳細を容易に知ることができるようになっていることも求められる。たとえば、VMwareでは負荷状況に応じて仮想サーバを自動的に他の物理サーバに移動させる機能などがあるが、こうした機能は運用管理者の介在を廃して自動運用を可能にする一方で、運用管理者がシステムの現状を把握しにくくなるという面もある。そこで、vMotionなどのイベントが発生した場合にその記録を確実に取得し、運用管理者に見やすい形で提示する機能があれば、「いつ何が起こったか」を確認しやすくなるはずだ。

図7:System Answer 仮想監視(イベント検索)(クリックで拡大)

仮想サーバの性能監視では、物理サーバを共有する仮想サーバの組み合わせによって性能が上下するなど、物理サーバよりも運用管理が複雑化することは避けられない。さらに、仮想化ソフトウェアの管理対象外のネットワーク機器や外部ストレージなどにアクセスが集中することで多数の仮想サーバが一斉にパフォーマンス低下に見舞われるなど、仮想化環境だけを監視しているだけでは対応できないトラブルの可能性もある。運用管理の現場では、「仮想環境の監視」ではなく、あくまでも「仮想化環境を含むシステム全体の監視」を実現する必要があるだろう

アイビーシー株式会社 技術部 部長

メーカー系SIでICTインフラ環境のインテグレーションを経てIBCに入社。製品やコンサルティングサービスを含めたソリューション全般を担当し、IBCのミッションである「ICTインフラの安定稼働」に対し、技術的な立場から何が出来るのかを日々検討しながら活動。

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