ビジネスUXの投資効果とは? 〜採用で向上する生産性を数値で評価する
BUX事例(2):GSカルテクス「人事管理システム」
〜画面操作時間・処理時間を2倍以上に短縮〜
次の事例はGSグループ系列社でガソリン等石油製品の輸出入及び販売をしている大手企業、GSカルテクスの「人事管理システム」です。
GSカルテクスの人事管理システムがC/S(Client Server)環境からウェブ環境に移行したのは2000年でした。その当時は、既存のシステムを生かすべく旧システムであるRIA環境を残し、ウェブ環境に移行しました。これはC/S環境の長所であるデータ処理速度を生かさなければならないデータ・ハンドリング部門の業務ではC/S環境の方が適していたからだそうです。しかし、二元化されたシステム管理環境はコスト高になるため、2005年に同社は、ウェブ環境とC/S環境を統合する作業を行いました。しかし、そのシステムでは十分な業務処理速度を実現できず、また、インターフェースやデザインのような業務画面の改善に関する要望が多くなったそうです。
このような結果になった背景には、UI設計者が開発プロジェクトの設計フェーズのみを担当し、その後の開発プロジェクトがエンジニア中心で運営されたことが考えられます。これは同社に限らず、日本のシステム開発でもよく起こることです。設計当時のUIとは違ってしまっても、スケジュール、予算、システム仕様が原因となり、当初とは違うシステムが出来上がってくることがあります。
第3回でも述べますが、ビジネスUXを実現する開発プロジェクトはUXデザイナーが開発プロジェクトの最後まで参加し、設計当初のデザインが守られているかをチェックします。これこそが、UXシステムの開発プロジェクトを成功させるための必要最低条件だと考えます。そのためにはエンジニアはUXデザイナーをどう使うかを知っておくことがとても重要です。UXデザイナーにどのタイミングでどのように依頼をするかを知っておくことで、プロジェクトがスムーズに進むはずです。
結局、何度もシステムリプレースを繰り返し、業務効率が向上しなかったGSカルテクスは、業務担当者のニーズを解決するための技術検討を行った結果、RIAを活用したビジネスUXの実現を選択しました。ビジネスロジックを再活用するべくMS SQL DBを残しつつ、画面改善というニーズを同時に満たせるRIA製品を約7〜8件検討したそうです。当時の狙いはDB部分を残し、新システムの構築コストを抑制して画面を強化することで、処理速度と操作時間の短縮を両立することでした。
人事評価、給与管理、勤怠管理、福利厚生を中心に現場のルールをもとに開発された「e-HRMシステム」は、手作業の業務をシステム化し、人事関連のシステム間インターフェースを強化しました。また、シミュレーション、統計資料及び人事データ抽出機能を強化し、HR業務のワンストップサービス及びナビゲーション機能も強化したことで、画面操作・処理速度は、2倍以上速くなり業務効率が大きく向上しました。その他の採用効果については以下の図をご覧ください。
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