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  インタビュー

Citrixの最新トレーニングセンターが国内に開設 〜プロジェクト成功率を高める人材育成のポイントを本社キーマンに聞く〜

2013年9月26日(木)
吉政 忠志

シトリックス・システムズ・ジャパンが世界で5か所目になる「エグゼクティブブリーフィングセンター」を開設しました。開設にあたり、米国の本社からも多くの役員が来日しました。今後の本格的な仮想化デスクトップの時代に突入する上で重要な、人材育成とその効果について、シトリックスのワールドワイドエデュケーション・バイスプレジデントであるジュリアン・スカリーシー氏と、シトリックス・システムズ・ジャパンのエデュケーションサービス部シニアエデュケーションプログラムマネージャー松平知永氏にインタビューしました。

エグゼクティブブリーフィングセンターとトレーニングセンターへの大型投資

ジュリアン・スカリーシー氏の来日のきっかけとなった、「エグゼクティブブリーフィングセンター(以下、EBC)」は、シトリックスのソリューションに関する詳しい情報などを身近に聞き、デモを体感することで、シトリックスが提供する最新のモバイルワークスタイルを肌で感じることができる施設です。EBCは、現在、アメリカ(カリフォルニア、フロリダ)、インド(バンガロール)、フランス(パリ)に開設されており、今回4ヵ国目の開設となる東京は、東アジアで初めての拠点となったそうです。

シトリックスのジュリアン・スカリーシー氏(クリックで拡大)

この設備はエグゼクティブがシトリックスのソリューションを検討する上で重要になる自社の課題と解決方法を体験できるよう、マルチデバイスデモに対応したワイド型マルチスクリーンや最新のビデオカンファレンスシステムを備え付けたブリーフィングルームなど最新の設備が設置されています。また、シトリックスの社員がモバイルワークスタイルを実践するフリーアドレスオフィスも隣接することで、社員が固定されたシートに座らず、XenDesktopによる仮想デスクトップに接続し日常の業務を行い、GoToMeetingやShareFileなどでコラボレーションを行っている様子を見学できます。

コラボレーション系のソリューションでは百聞は一見に如かずという通り、実際に体験しながら、課題と解決方法を理解していくのが一番とされています。読者の皆様も検討の際にはぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?

エグゼクティブ ブリーフィング センター(クリックで拡大)

このEBCに併設され、今回リニューアルしたのが、同社のトレーニングセンターです。ラボ演習用の端末としてWebCamが搭載された最新のHDX ReadyのWyseシンクライアントを配置し、受講者はXenDesktop、XenApp、XenServer、NetScalerによって完全仮想化されたリモートのラボ環境へ接続できます。

リモートのラボは全世界から24時間365日アクセスできる上、トレーニングのカリキュラム毎にシトリックス各製品の仮想化されたワークロードがプロビジョニングされ、実習を行うことができます。トレーニング効率の向上がお客様やパートナーのビジネスの投資対効果の向上につながると思うのですが、それが最大限発揮できるよう配慮されたトレーニング環境という印象を持ちました。

大型投資の背景

このように、今回仮想化デスクトップの市場の隆盛に備えてトレーニング環境にも投資をしたシトリックスですが、その背景には教育ビジネスの好調さもあるようです。ジュリアン・スカリーシー氏が言うには「ワールドワイドにおけるこの3年間での売上高は12.5%のCAGR(平均成長率)で成長しており、中でも日本市場の教育部門は47%で成長しています。これは、日本国内での認定スクールの拡大と、教材の早期日本語化が効果を出していると考えています。」とのことです。

売れている製品が非常に早いタイミングで教材を日本語化すれば、教育のビジネスが活性化するのは当然のことと思います。ただ、それだけではないと考え、成長の背景を深く掘り下げて聞いてみました。

プロジェクト成功率を高めるトレーニング

「プロジェクトの成功率を高めるには経験が一番!」と考えている読者も多いと思います。その考え方に私も賛成です。しかし、「現場での経験によるプロジェクト成功率の向上」はその過程に様々な試行錯誤と失敗による経験が存在しています。お客様や利用者にとってみれば、自分のシステムで失敗経験を積まれてはあまりいい気もしません。またソリューションプロバイダーのマネージメント層や営業部門のメンバーも、トラブルなくシステム構築を終えたいものです。

ここにシトリックスの教育部門の売り上げ増加の理由があります。通常のトレーニングは基礎的な学習がメインで、実践的なノウハウは実践でと思われがちですが、シトリックスのトレーニングの強さはまさにこの実践力習得の高さにあるようです。

ジュリアン・スカリーシー氏が言うには「トレーニングによりスキルを高め、その取得レベルを測定した上で、最適な人材を適所適材でプロジェクト配置すればプロジェクトの成功率が高まります。そういう意味でもトレーニングと資格取得は重要です。調査データでもプロジェクトの最大成功要素に「チームのスキル(60%)」をあげています。これは構築フェーズだけではなく、サポートの負荷も軽減し、保守業務の効率も向上します。つまりソリューションプロバイダーや情報システム部門のビジネスの投資対効果を引き上げることができるといえます。統計データを見ると、1週間のトレーニングを事前に受けることで、プロジェクトの成功率は80%から100%近くまで引き上げることができるとのことです。しかも、そのトレーニングの投資は全体予算の3%に過ぎないというデータも出ています。3%の投資で、プロジェクトの成功率をほぼ100%に引き上げ、保守業務を円滑に行えるというのはとても魅力的なことだと思います。」とのことでした。

PHPやRuby on Railsの認定試験を運営する筆者の経験からもとても理解ができる話でした。ただ、トレーニングを受けた人材も時間がたつとスキルが下がり、運営のリスクもあがるため、継続的なトレーニングを受けることもお勧めしたいです。このように書くと営業的な文章に、見えてしまうかもしれませんが、大きな教育が必要になるまでにスキルが落ちてから大型のトレーニングを行うよりも、継続的に差分を受講させた方が投資対効果が高くなると思います。

XenDesktop7のトレーニングで強化された点

英語版のトレーニング教材のリリースから1か月で日本語化され、まさに本格展開を始めようとしているXenDesktop7のトレーニングですが、さらに強化され、より実践された点があります。
ジュリアン・スカリーシー氏は、「XenDesktop7リリースにあたって全面的にカリキュラムを見直して、ソリューションベースとライフサイクルに焦点を当てたカリキュラムにしました。その方がより実践的な理解を得られると考えたからです。しかも、カリキュラムは各国によって違います。各国の取引先や見識者からのフィードバックを活かし、よりその国にあったソリューションと顧客ニーズを取り込んだカリキュラムにしています。」と述べています。

教育事業の運営面での話になりますが、各国のニーズに対応したカリキュラムを組むことは手間とコストがかかります。しかし、実現できれば、受講者にとって投資対効果が高いトレーニングを展開することができます。この辺りも、今後の仮想化デスクトップ市場の拡大に備えたシトリックスの本気度合いが見える部分でもあります。

シトリックス・システムズ・ジャパンの松平知永氏は「教育パートナーが実施していない上位トレーニングや教育パートナーのインストラクターのためのトレーニングを行うために日本でもインストラクターを雇用しました。このインストラクターは認定スクールへのスキルトランスファーも担当し、より一層の支援にもあたります。また、日本でも以前から行っている合格者を招いたイベントや、教材やバグレポートなどの情報交換を行うソーシャルネットワークなども引き続き活性化に尽力していきます。」と述べています。

ジュリアン・スカリーシー氏とシトリックス・システムズ・ジャパンの松平知永氏(クリックで拡大)

より実践力を向上させたXenDesktop7の教育カリキュラムと充実した教育環境はエンジニアでない私が聞いてもとても魅力的なものでした。仮想化デスクトップのエンジニアを志す方はぜひ受講をされてはいかがでしょうか?

最後にお得な情報をお伝えします。シトリックスは日本語の無料トレーニングをインターネット上で公開しています。仮想化デスクトップの基礎技術の確認と、トレーニングの体験をする意味でもお勧めです。

XenDesktop7無料オンライントレーニング「Introduction to XenDesktop 7」

この2時間の無料オンラインコースでは、デスクトップとアプリケーションの仮想化の用語について説明します。新規のお客様も既存のお客様も、XenDesktop 7アプリケーションおよびデスクトップソリューションの導入や、このソリューションに移行するかどうかに関係なく、アーキテクチャ、コンポーネント、主なソリューションシナリオ、およびユースケースについて理解を深めることができます。詳細は以下をご覧ください。
→ Introduction to XenDesktop 7

【関連リンク】

参考情報:XenDesktop7ラーニングマップと認定資格マップ

(リンク先最終アクセス:2013.09)

吉政創成株式会社 代表取締役

IT業界のマーケティング分野で20年近い経験を持つマーケッター。株式会社トゥービーソフトジャパンをはじめとするベンチャー企業から大手企業まで幅広くマーケティング支援を行う。現在はマーケティングアウトソーシング会社である吉政創成株式会社の代表取締役を務めつつ、PHP技術者認定機構 理事長、Rails技術者認定試験運営委員会 委員長、ビジネスOSSコンソーシアム・ジャパン 理事長も兼任。

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