マウス・カーソルで指定した画像の一部を拡大表示するLeap Motionプログラム

2013年11月12日(火)
薬師寺 国安

今回のアプリは、画面上に表示された画像の一部分にマウス・カーソルを乗せ、タッチした状態(タッチ・ポイントが赤)で移動させると、マウス・カーソルのあたった個所が拡大表示されるアプリです。早速開発手順を見ていきましょう。

まずはWPFプロジェクトの作成から

今回のLeap MotionアプリもWPFで作成します。

これには、Visual Studio 2012(以下、VS 2012)のIDEを起動して、メニューバーから[ファイル]−[新規作成]−[プロジェクト]と選択して、それにより表示される[新しいプロジェクト]ダイアログで「Visual Basic」のテンプレートから「WPF アプリケーション」を選択します。このアプリはVS2012で作成していますが、VS2013でも作成は可能です。

※Leap Motionは、.NET Framework 3.5と4.0に対応しています。しかし、.NET Framework 4.5でも動作します。今回のアプリは全て.NET Framework 4.5で作成していますが、あくまでも対応しているのは、.NET Framework 3.5と4.0です。心配な方は、.NET Framework 4.0で作成すると安心でしょう。

[名前]欄には、ここでは「ZoomLensLeapMotion」と指定します。

ソリューション・エクスプローラー内にImageというフォルダを作成して、画像を1枚配置しています。画像サイズは特に指定はありません。今回はPNG画像を使用していますが、JPEG画像でも問題はありません。

ダウンロードされたサンプルファイルには、画像ファイルは追加済みです。

ポーリング方式の採用

今回のサンプルは4回目のサンプルと同様、「ポーリング方式」を作用しています。「ポーリング方式」とは、Controllerクラス(Leap名前空間)だけを使用した方式です。詳細については、「C#によるLeap Motion開発の全体像」を参照してください。

WPFの基本的な作成手順は、「画面上の図形を5本の指で操作する基本的なLeap Motionプログラムを作る」と同じ手順となるので、説明を割愛します。具体的な手順は、第1回の「参照の追加」「プロジェクトのルートに「LeapCSharp.dll」と「Leapd.dll」を追加する」「プロパティを設定する」を参考にしてください。

今回のLeap Motionアプリについて

今回のアプリは、タッチ・ポイントが赤の場合(タッチ状態)で、タッチ・ポイントが画像の上にある時、マウス・カーソルの位置が拡大表示されるアプリです。タッチ・ポイントが青(ホバー状態)の時は、マウス・カーソルを移動させても拡大画像には反映されません(図1参照)。

図1:画像の上にあるマウス・カーソルの位置が拡大して表示された(クリックで拡大)

実際に動かした動画は次のようになります。

画面のレイアウト(MainWindow.xaml)

sourceImageという名前のImageコントロールを1個配置し、Widthに320、Heightに240と指定して、SourceプロパティにImageフォルダの画像を指定しておきます。

次に、zoomImageというImageコントロールを配置し、WidthとHeightをsourceImageと同じにします。Sourceプロパティにも同じ画像を読み込んでおきます。Canvas.LeftとCanvas.Topも大体、sourceImageに近い値を指定しておきます。最初の状態では、VisibilityにCollpsedを指定して非表示とします。

zoomImageの子要素としてプロパティ要素を配置し、その中に、と記述します。ScaleXとScaleYに指定している値は、X軸とY軸に沿ったスケールファクター(倍率)です。

次に同じくzoomImageの子要素としてプロパティ要素を配置し、その中に、と記述します。直径70pxのEllipseGeometryが表示されます。EllipseGeometryにはLensという名前を付けています。

プロパティ要素は、コンテンツのアウトラインの定義に使用するジオメトリを設定できます。通常、イメージの一部を表示するだけの場合は、Clip を使用する必要があります

最後に一番前面にタッチ・ポイントを表示する、paintCanvasという名前のInkPresenterコントロールを配置します。

書き出されるXAMLはリスト1のようになります。

リスト1 (MainWindow.xaml)

<Window x:Class="MainWindow"
  xmlns="http://schemas.microsoft.com/winfx/2006/xaml/presentation"
  xmlns:x="http://schemas.microsoft.com/winfx/2006/xaml"
  Title="MainWindow" Height="1080" Width="1920" WindowState="Maximized">
  <Canvas>
    <Image x:Name="sourceImage" HorizontalAlignment="Left" Height="240" VerticalAlignment="Top" Width="320" Canvas.Left="261" Canvas.Top="127" Source="Image/林_08.png"/>
    <Image x:Name="zoomImage" Stretch="Fill" Width="320" Height="240" Source="Image/林_08.png" Canvas.Left="263" Canvas.Top="128" Visibility="Collapsed">
      <Image.RenderTransform>
        <ScaleTransform ScaleX="3.5" ScaleY="3.5"/>
      </Image.RenderTransform>
      <Image.Clip>
        <EllipseGeometry x:Name="Lens" RadiusX="70" RadiusY="70" Center="0.5,0.5"/>
      </Image.Clip>
    </Image>
    <InkPresenter Name="paintCanvas"/>
  </Canvas>
</Window>

レイアウトは図2のようになります。

図2:各コントロールをレイアウトした(クリックで拡大)

プログラム・コード(MainWindow.xaml.vb)

では、次にプログラム・コード(MainWindows.xaml.vbファイル)を見ていきましょう。

コードは4回のコードと似通っている部分については割愛します。4回のコード説明を参照してください。異なる部分のみ解説します。

名前空間の読み込み

「Leap」と「System.Windows.Ink」名前空間だけを読み込みます。

メンバー変数の宣言

次にメンバー変数を宣言します。

今回もWin32 APIを使用するためにWin32 APIの宣言も行います。4回と同じWin32 APIを使用しています。

「leap」、「touchIndicator」、「touchPoint」、「windowWidth」、「windowHeight」、「x」、「y」、「tx」、「ty」、「FingersCount」等のメンバー変数については4回と同じのため、そちらを参照してください。これ以外に、ImageXとImageYメンバー変数を宣言します(リスト2)。

リスト2 メンバー変数の宣言

・・・・コード略・・・
  Private ImageX As Double
  Private ImageY As Double
・・・コード略・・・・

MainWindow_Loadedメソッドの処理

MainWindow_Loadedメソッド(=メイン・ウィンドウのLoadedイベントのハンドラ)では、MainWindowが読み込まれた時の処理を実装します。

AddHandlerステートメントを使って、構成ツリーのオブジェクトがレンダリングされる直前に発生する「CompositionTarget.Renderingイベント」に対するイベント・ハンドラとしてUpdateメソッドを指定します(※Updateメソッドの実装内容は後述)。

インク・ストロークの外観を表す、DrawingAttributesオブジェクトのインスタンス「touchIndicator」のWidthプロパティとHeightプロパティにそれぞれ「10」を指定します。スタイラスの形状を指定するStylusTipプロパティに「StylusTip.Ellipse」を指定して円形とします。Leap Motionの上で指をかざすと、かざした指の本数に応じて10px(px=ピクセル)の円が表示されるようになります(リスト3)。

リスト3  MainWindowが読み込まれた時の処理を行うMainWindow_Loadedメソッドの実装内容(MainWindow.xaml.vb)

 Private Sub MainWindow_Loaded(sender As Object, e As RoutedEventArgs) Handles Me.Loaded
  AddHandler CompositionTarget.Rendering, AddressOf Update
  touchIndicator.Width = 10
  touchIndicator.Height = 10
  touchIndicator.StylusTip = StylusTip.Ellipse ' 10pxの円が表示される
 End Sub

Updateメソッドの処理

Leap Motionで画像のトリミングと保存を行うためのサンプルプログラムを作る」と同じにつき割愛します、上記記事を参照してください。

次にLeap Motionのタッチ処理になります。タッチのイメージは次の図3のようなイメージです。

Updateメソッドの処理(ホバー処理)

手前側が「ホバー状態(hovering)」、奥側が「タッチ状態(touching)」を表します。空間の範囲は前後「1」〜「-1」となっています。

図3:Leap Motionのタッチ検出イメージ(Leap Motion SDKのAPIドキュメントから引用)(クリックで拡大)

まずホバーの場合は、表示されている円がBlueの色になります。タッチ・ポイントの位置をメンバー変数「x」と「y」に格納します。

画面に表示されている指の数をleap.Frame.Fingers.Countプロパティで取得して、メンバー変数「FingersCount」に格納しておきます。

Win32 APIのapimouse_event(MOUSEEVENTF_LEFTUP, 0, 0, 0, 0)を実行します。タッチ・ポイントがホバー状態(青色)になった時は、拡大画像は消滅します(リスト4)。

リスト4 ホバー時の処理(MainWindow.xaml.vb)

For Each Pointable As Pointable In leap.Frame.Pointables
  ……コード略(前述)……
  If Pointable.TouchDistance > 0 AndAlso Pointable.TouchZone <> Global.Leap.Pointable.Zone.ZONENONE Then
    touchIndicator.Color = Colors.Blue
 
    x = touchPoint.X
    y = touchPoint.Y
  
    FingersCount = leap.Frame.Fingers.Count ' 表示されている指の本数を取得して、メンバー変数FingersCountに格納しておく
      apimouse_event(MOUSEEVENTF_LEFTUP, 0, 0, 0, 0)
    ……コード略(続きは後述)……
  End If
Next

次にタッチした処理です。タッチした場合は、表示されている円が赤に変わります。

Updateメソッドの処理(タッチ処理)

指が1本認識されている場合は、SetCursorPos(touchPoint.X, touchPoint.Y)と指定して、タッチ・ポイントとカーソルの位置を同じ位置に表示します。

  apimouse_event(MOUSEEVENTF_LEFTDOWN, 0, 0, 0, 0)
  apimouse_event(MOUSEEVENTF_MOVE, 0, 0, 0, 0)

と指定して、マウスの左ボタンを押した処理と、マウスを動かした処理を行います。

指が5本表示されてタッチされた場合は、zoomImage(拡大表示されている画像)を非表示にします。

タッチ以外の処理ではタッチ・ポイントの色がGoldになり、何も発生しません。

具体的にはリスト5のコードになります。

リスト5 タッチとタッチ以外の処理

If Pointable.TouchDistance > 0 AndAlso Pointable.TouchZone <> Global.Leap.Pointable.Zone.ZONENONE Then
  ……コード略(前述)……
  ElseIf Pointable.TouchDistance <= 0 Then
    touchIndicator.Color = Colors.Red
  If FingersCount = 1 Then
                    SetCursorPos(touchPoint.X, touchPoint.Y) ' タッチ・ポイントとカーソルの位置を同じ位置に表示する。
                    apimouse_event(MOUSEEVENTF_LEFTDOWN, 0, 0, 0, 0) ' マウスをクリックした処理
                    apimouse_event(MOUSEEVENTF_MOVE, 0, 0, 0, 0) ' マウスを動かした処理
            End If
 
            If FingersCount = 5 Then
              zoomImage.Visibility = Windows.Visibility.Collapsed
            End If
            ' タッチ対象外
          Else
            touchIndicator.Color = Colors.Gold
          End If
        Next
    End Sub

sourceImage_MouseLeftButtonDownメソッド(タッチ・ポイントが赤になった時)の処理

次はsourceImage(元の小さな画像)をタッチした時の処理です。

zoomImage(拡大された画像)を表示します。

sourceImageの相対的なマウス・ポインターのX位置を取得してメンバー変数ImageXに格納します。

sourceImageの相対的なマウス・ポインターのY位置を取得してメンバー変数ImageYに格納します。

ImageXとImageYを引数にLensPositionメソッドを実行します(リスト6)。

リスト6 sourceImage__MouseLeftButtonDownメソッドの処理

  Private Sub sourceImage_MouseLeftButtonDown(sender As Object, e As MouseButtonEventArgs) Handles sourceImage.MouseLeftButtonDown
    zoomImage.Visibility = Windows.Visibility.Visible
    ImageX = e.GetPosition(sourceImage).X
    ImageY = e.GetPosition(sourceImage).Y
    LensPosition(ImageX, ImageY) ' LensPositionメソッドの実行
  End Sub

sourceImage_MouseMoveメソッドの処理

次はsourceImage(元の小さな画像)の上でマウス・カーソルが動いた時の処理です。

sourceImageの相対的なマウス・ポインターのX位置を取得してメンバー変数ImageXに格納します。

sourceImageの相対的なマウス・ポインターのY位置を取得してメンバー変数ImageYに格納します。

ImageXとImageYを引数にLensPositionメソッドを実行します(リスト7)。

リスト7 sourceImage_MouseMoveメソッドの処理

  Private Sub sourceImage_MouseMove(sender As Object, e As MouseEventArgs) Handles sourceImage.MouseMove
    ImageX = e.GetPosition(sourceImage).X
    ImageY = e.GetPosition(sourceImage).Y
    LensPosition(ImageX, ImageY) ' LensPositionメソッドの実行
  End Sub

sourceImage_MouseLeftButtonUp(タッチ・ポイントが青になった時(ホバー状態))の処理

次はsourceImage(元の小さな画像)がホバー状態になった時の処理です。

拡大表示されていたzommImageを非表示にします(リスト8)。

リスト8 sourceImage_MouseLeftButtonUpメソッドの処理

  Private Sub sourceImage_MouseLeftButtonUp(sender As Object, e As MouseButtonEventArgs) Handles sourceImage.MouseLeftButtonUp
    zoomImage.Visibility = Windows.Visibility.Collapsed
  End Sub

LensPositionメソッドの処理

最後は、マウス・カーソルの動きに合わせて、その部分が拡大される処理です。

Lensという名前を持つ、EllipseGeometryのCenterプロパティに、メンバー変数ImageXとImageYを指定します(リスト9)。

リスト9 LensPositionメソッドの処理

  Private Sub LensPosition(x As Double, y As Double)
    Lens.Center = New Point(ImageX, ImageY)
  End Sub

※注意
今回紹介したサンプルコードを動かす際には、「LeapCSharp.NET4.0.dll」や「LeapCSharp.dll」、「Leap.dll」を読者の皆さん自身のフォルダ内にあるDLLファイルに指定し直さなければ動かない可能性があるので、動かない場合は再指定して下さい。

  • マウス・カーソルで指定した画像の一部を拡大表示するLeap Motionプログラム

    『新世代モーションコントローラー Leap Motion -Visual Basicによる実践プログラミング-』 第5回のサンプルプログラムです。
薬師寺国安事務所

薬師寺国安事務所代表。Visual Basic プログラミングと、マイクロソフト系の技術をテーマとした、書籍や記事の執筆を行う。
1950年生まれ。事務系のサラリーマンだった40歳から趣味でプログラミングを始め、1996年より独学でActiveXに取り組む。1997年に薬師寺聖とコラボレーション・ユニット PROJECT KySS を結成。2003年よりフリーになり、PROJECT KySS の活動に本格的に参加、.NETやRIAに関する書籍や記事を多数執筆する傍ら、受託案件のプログラミングも手掛ける。Windows Phoneアプリ開発を経て、現在はWindows ストア アプリを多数公開中

Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2012)。Microsoft MVP for Development Platforms - Windows Phone Development(Oct 2012-Sep 2013)。Microsoft MVP for Development Platforms - Client Development(Oct 2013-Sep 2014)。Microsoft MVP for Development Platforms-Windows Platform Development (Oct 2014-Sep 2015)。

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