クラウド時代の可用性向上―サービスレベルに応じた具体策とは?

2014年9月26日(金)
井谷 征市

本連載では、サイオステクノロジー社(以後サイオス)の製品「LifeKeeper」「DataKeeper」を題材に、企業経営において避けては通れない「事業継続ソリューション(BCPソリューション)」の解説を全4回にわたってお届けする。第3回はクラウド時代の可用性とはと題して、クラウド環境における可用性向上の方法について、具体的に適用するケースに分けて紹介する。

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クラウド時代へ突入

近年、VMware/Hyper-Vのような仮想環境への移行はあたり前となっている。比較的重要度の低い開発・テスト環境や情報システムなどから始まった仮想環境への移行は、サーバー統合によるサーバー台数の削減やITリソースの有効活用、運用管理コスト削減などのさまざまなメリットをユーザーにもたらしてきた。そして最近では、より重要度の高い基幹系システムにおいても仮想環境への移行がはじまっていて、事例も多く紹介されている。

仮想環境の活用は現在ではさらに一歩進んで、クラウド環境への移行により、ITを所有することから利用することへと変化してきている。クラウドへの移行の流れは仮想環境のときと同様に、重要度の低いシステムからはじまり、現在は基幹系のような重要度の高いシステムでも活用が検討されはじめている。そうした中でも、可用性向上への課題は常に存在しており、そのニーズは今も変わらぬどころか、むしろ高まってきている。

仮想環境ではハイパーバイザー側で可用性向上の機能が一部提供されていたり、クラウド環境ではクラウドベンダーが提供するサービス毎に一定のSLA(Service Level Agreement、サービス品質保証)が提供されてはいるが、実際にはそれぞれの環境に応じた可用性確保の方式を検討する必要があり、かつミドルウェアやアプリケーション保護の必要性は依然として残っている。ここで検討されるのが、弊社の「LifeKeeper」のようなクラスターソフトウェアだが、高可用性の基本的な考え方自体は以前から大きく変わってはいない。それはSPOF(単一障害点)を可能な限り排除することである。

クラウド環境における可用性の確保

可用性はそれぞれのサービスレベルに応じて確保する必要がある。一般的にクラウド環境では、インフラ部分の可用性は一定のSLAが提供されているが、それ以上の可用性が必要であったり、保護対象範囲を広げる必要がある場合は、以下の表に示すようにLifeKeeper製品群を適切に選択することでニーズに応じた可用性の実現が可能となる。

表1 可用性に応じたLifeKeeper製品の選択
表1 可用性に応じたLifeKeeper製品の選択

シングルノードのアプリケーションの保護

もし、プラットフォームの可用性がクラウドベンダーの提供しているSLAで十分であれば、次にアプリケーションの保護を検討する必要がある。この場合には「LifeKeeper Single Server Protection for Linux(以下、SSP)」が適している。SSPはシングルサーバーの可用性向上を目的としており、アプリケーションの監視とリカバリー機能を提供し、アプリケーションのリカバリーに失敗した場合には仮想マシンのOS再起動を行うことができる。これらの障害回復動作の実行はユーザー設定により柔軟に指定が可能である。対応するアプリケーションは、LifeKeeper for Linuxで提供しているApplication Recovery Kit(ARK)が利用可能で代表的なアプリケーションであれば、監視オプションが標準で含まれている。標準提供されていないアプリケーションでも、ユーザー自身でスクリプトを作成することによりシンプルに監視が行う環境を構築することができる。このようにSSPは、Webサーバーやアプリケーションサーバー、データベースのスレーブなどのロードバランシング型の可用性を提供しているシステムにも適用可能であり、アプリケーションの可用性を向上させると同時に、システム全体の可用性を向上させることができる。

サイオステクノロジー株式会社
フィールドエンジニアとしてUNIX系ハードウェア、クラスターソフトウェアの導入作業を経験した後、x86サーバーやストレージの技術的なプリセールス支援を担当。サイオステクノロジー入社後は、LifeKeeperプリセールスとしてLifeKeeper製品の技術的な提案支援、セミナー・勉強会での講演等を行っている。

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