ベアメタルクラウド―2015年のクラウド市場を占う注目のキーワード
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クラウドの分野で、「ベアメタル」という言葉を聞くようになった。「ベアメタル」とは「むき出しの金属」を意味する。サーバについて使われるときは、OSも何も入っていない状態のサーバを指す。言ってしまえば、昔からある物理サーバだ。
なぜ改めてベアメタルなのか。ベアメタルとクラウドは両立するのか。こうした2015年初頭のベアメタル事情について、株式会社リンクのサービス「ベアメタル型アプリプラットフォーム」への取材を交えて見てみよう。
仮想サーバの長所と短所
ソーシャルゲームやブラウザーゲーム、スマートフォンゲームなどのサーバでは、当たり外れによってサーバに必要なリソースが大きく変わり、必要なときには急いで増やす必要がある。また、人気がなければ、すばやくリソースを減らしたり撤退したりすることもある。
そのため、こうした分野のサーバでは、早くからIaaSなどのクラウドサービスの利用が進んできた。自前でサーバを購入すると、最大負荷の可能性を考えて台数を用意しなくてはならないし、調達にも時間と手間がかかってしまう。それに対してクラウドサービスでは、仮想サーバをすばやく用意し、「必要なときに、必要なだけリソースを増減できる」のが特徴だ。
その反面、ゲームサーバだからこそクラウドで困ることもある。ゲームサーバでは、反応速度や処理速度に問題があると、ユーザーが不満を持って離れてしまう。しかし、一般的なクラウドサービスでは1台の物理サーバに複数の仮想サーバが相乗りするため、ほかの仮想サーバがCPUやディスクなどを激しく使うと自分のパフォーマンスが落ちてしまうことがある。絶対的な性能を求めるとなると、仮想化のオーバーヘッドも気になる。「マシンパフォーマンスをそのまま使いたい」という要望をつきつめると、仮想サーバでは不満の残るユーザーもいる。
物理サーバを仮想サーバのように使う
「物理サーバを、仮想サーバのようにユーザーの手ですばやく増減させたい」——。そんな虫のいいニーズに応えるべく、「ベアメタルクラウド」と呼ばれるサービスが最近登場してきている。いわば、「物理サーバを仮想サーバのように使える」サービスだ。
前述したリンクのベアメタル型アプリプラットフォームのほか、IBMのSoftLayerなどが、ベアメタルクラウドのサービスを提供している。また、IaaS基盤ソフトであるOpenStackやCloudStackも、物理サーバの管理に対応してきている。
実際に、リンクのベアメタル型アプリプラットフォームを見てみよう。管理画面にアクセスすると、物理サーバを追加するボタンがある。ここからホスト名やOS種別、サーバのスペック、ネットワーク設定などを指定すると、物理サーバができあがる。課金体系も、日数×台数ベースだ。
仮想サーバならあたりまえの操作だ。しかし、これを物理サーバで提供しているのがベアメタルクラウドの新しい点だ。仮想サーバはソフトウェアで実現されているため、ソフトウェア的にサーバを作るのはあたりまえのことであるし、OSなどのセットアップもディスクイメージや自動インストール機能などによってできるようになっている。しかし、物理サーバの場合は、新しいサーバ機を用意する必要がある。このサーバにネットワークケーブルなどを接続して起動し、物理ディスクにOSをインストールする。どうしても人手が発生してしまい、「ユーザーが自分の操作で」というわけにはいきにくい。それを自動化して、ユーザーが「申し込み」ではなく自分で「操作」して物理サーバを増やせるようにしたのがポイントだ。
サーバの作成時間は、だいたい15〜30分程度。ディスクイメージのコピーではなく実際にOSを自動インストールしていることによる時間で、サーバのスペックによって異なる。サービス提供者に依頼せずに自分の手で意図したタイミングで作成できるので、クラウド的な使い方ができる点が大きい。
ユーザーのニーズからベアメタルクラウドを開始
リンクではもともと、前身となる専用サーバホスティング「アプリプラットフォーム」を提供していた。内部的にはセットアップをできるだけ自動化して運用コストを削減していたが、どうしても人が動く部分があった。
「クラウドサービスを使っていて高パフォーマンスを求める企業の方々から、クラウドでは『期待したパフォーマンスが得られない』『ノードによってパフォーマンスにばらつきがある』といった不満を聞いており、物理サーバへのニーズがあることを感じていました。そこで、物理サーバをより手軽に利用していただくサービスとして弊社でベアメタルクラウドを提供することにしました」とリンクの担当者は語る。選択肢として、仮想サーバ1台で物理サーバ1台を専有する形のサービスも検討したが、最終的にはベアメタルクラウドの形となった。
最もよく使われる分野は、やはり前述したゲームのサーバだという。最初からある程度のリソースが必要で、かつ後から柔軟にサーバ数を増減する必要がある用途だ。一方、「すべてがベアメタルクラウドに合うとは思いません。小さいリソースから始めるには、仮想サーバによるクラウドサービスのほうが向いているでしょう」とも担当者は語る。なお、将来的には仮想サーバから物理サーバへのデータ移行機能も計画されている。スタートアップ時など仮想サーバでスモールスタートしてから、アクセス状況にあわせて物理サーバでスケールアップしていくといった柔軟な運用にも対応する予定だ。
取材時点で、ユーザーは70数社。5月にサービス開始してから、ユーザー数の増加はゆるやかだったという。「しかし、9月ごろから急に増えてきました。問い合わせはサービス開始当初から多くいただいていて、この頃には少しずつ実績が増えてきたため、採用に踏み切っていただけたのではないかと思います」(リンク)。
ベアメタル型アプリプラットフォームのサイトに事例が掲載されている、株式会社フジテレビジョンのゲーム「ゲゲゲの鬼太郎 妖怪横丁」も、そうした実績の一つだ。同社では、他社のパブリッククラウドサービスからアプリプラットフォームに移行し、さらに本番サーバと開発サーバを同じネットワークにするためにベアメタル型アプリプラットフォームを採用したという。
今後は、年100社ずつユーザーを獲得し、3年で300社を目標としている。「最初はゆるやかだったとはいえ、サービスを発表してすぐ最初の申し込みがあり、手応えを感じました。そのため、営業が最初から自信を持って売っていけました」(リンク)。
次回は、実際の操作方法や他クラウドとの比較などより実践的な内容を紹介していきたい(2月下旬掲載予定)。
ベアメタル型アプリプラットフォーム
http://app-plat.jp/
取材協力・株式会社リンク
http://www.link.co.jp/
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