自動運転車で我々の生活はどう変わるのか
ゲスト執筆者のアンバー・ケースは起業家、作家、講演者であり、Fortune500に挙げられる企業のコネクテッドデバイスへの取り組みを手助けする研究者でもある。2012年にEsriに買収されたロケーションベースソフトウェア企業、Geoloqiの共同設立者でもあり、元CEOでもあった。
テスラが自動運転の自動車を発表したのは今年の夏の事だ。Appleも自動運転車ビジネスに乗り出すと噂されている。今すぐにiCarなどが発売されるわけではないにしても、自動運転自動車が我々の生活を大きく変える事について話をしておかなければならない。どの様にして作られ、販売されるのかという事だけでなく、我々のライフスタイルをどの様に変えるのかという観点においてもだ。
話を始めるに当たって、まず次の10-20年の間に起こりえるであろう4つのシナリオについて考えてみよう。
自動車が住処であり、職場になる
車の内装はよりリビングルームの様になる。あるいはベッドルームの様になるかもしれない。前の晩に良く眠れなかったのなら、通勤の際に寝ることが出来る様になるだろう。
結果として、車に最も求められることはパワフルなエンジンではなく、静音性と上質のサスペンション、そしてラップトップやモバイルデバイスの接続性となる(デバイススクリーンに過剰に光を当てないための低反射ガラスも重視されることになるだろう)。
音楽再生の他、テレビ会議や電話のためにもスピーカーの質はこれまで以上に重要になる。車内で仕事をする人にとってデバイスの接続は肝要だ。となると通信業者から既存のプランにバンドルされる形で自動車で使うための無線ネットワークプランなども出てくることだろう。
自動運転車により新しいビジネスが生まれる
自動運転車によって新しいビジネスモデルおよび起業の機会が生まれる。例えば町に出かける時に、燃料代を節約するため途中で荷物を下ろす代わりに、業者がスポンサーしている広告を見るという選択肢が出てくるかも知れない。広告に関して言えば、自動運転車が広まることで人々はより多くの時間を広告を見ることに割くようになるだろう。
通勤中に仕事をする事が一般的になる事で、人々は今より30-40%多くの広告を見ることになる。これにより宣伝効果はより高いものとなり、アプリの販売は伸び、自動運転車の開発、流通のためのコストの回収に
役立つことだろう(マイナス面として人々のメディア依存はよりひどくなるだろうが)。
車に乗ってるときの食事もより自由なものになることから、ドライブスルーもより幅広く質の高いものになることだろう。
自動運転車が新しい車文化を生み出す
車が単にA地点からB地点に移動する間過ごすだけの空間から生活の空間になることで、それを取り巻く文化も豊かなものになるだろう。
シャワーさえ使えれば、我々の多くはほとんどの時間を車の中ですごすようになるだろう。シャワーが使えるからという理由だけでジムの契約も伸びるかもしれない。また企業は社員への待遇としてスパやシャワーを提供するようになるかもしれない。
車内で生活する人向けに、シャワー、トイレ、食事およびランドリーサービスを備えたパーキングスペースなども現れるだろうか。
車内を家族でより快適に過ごせる様になる事から、車による旅行も増えることだろう。みんなで黙りこくってモバイルデバイスをいじってる事が多いだろうが。
また自動運転車のオーナーは「どこか知らない所に行きたい」「都会の生活にストレスをためてるので、どこかマシなところに連れて行って」といった目的に合わせてカスタマイズされた旅行の申し込みも出来るようになる。
昔の世代の人たちは車をドライブインシアターでいちゃつく為に利用したが、次の世代の人たちは運転中でもいちゃつく様になるのかもしれない。
運転の自動化によって起こる死亡事故と人間性について議論するようになる
自動運転車によって、飲酒運転やその他の不運な事故による死亡者は大きく減るだろうが、完璧な自動化システムというものはない。
コンピュータ化された乗り物による死亡事故が最初に起これば、非常に大議論を巻き起こすことになるだろう。機械に人の命を左右する権利などあるものだろうか?
20世紀初頭に起こった最初の自動車事故は益々盛んになる機械化に対する懸念を巻き起こした。最初は奇妙に思われていたものが早々に文化的に受け入れられる事はありえるが、それでも自律システムに対し人々が拒絶反応をみせるであろう事は疑いようがない。10代にとって運転を学ぶのは大人になるための通過儀礼のようなものだが、運転免許が過去の遺物になるまでにどれほどかかる事だろう?
これらの予想は、やがて我々が直面する課題のほんの触りに過ぎない。プライバシーや安全性などについても解決されなければならない問題はある。
運転者が必要なくなる未来が今とどれほど違うものなのかまだ分からない以上、我々はまだ問題を解決するための準備が整うのはまだ先の話だろう。
トップ画像提供:zeitfaenger.at
その他画像:Institute of Technology in Massachusetts
※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。
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