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Apple Carを買うことはできないかもしれない―だがそれでいい

2015年3月16日(月)
ReadWrite Japan

ここ数週間の間、アップルがテスラモーターズに対抗する電気自動車生産を計画しているという噂が駆け巡った。伝えられるところによると、コードネームは「Titan」だという。先月、9to5MacはおそらくApple Carプロジェクトチームのものと思われる社員リストを入手した。同時に、ブルームバーグは、アップルが2020年までにApple Carを生産する計画を立てていると報じた。

しかし、真新しいiCarを走らせる想像ばかりが先行すると、多くのアップルファンや評論家らは一様にTitanを間違った角度からとらえてしまう可能性がある。Titanは、実際には「Apple Car」と言えるものではないかもしれないのだ。Titanが新しい、自動車に最適化されたOSを自動車メーカーに披露するためのトロイの木馬だとしたらどうだろうか?メーカーがそのOSを採用し、アップルが通勤も支配するかもしれないとしたら?

参入障壁

多くのApple Car懐疑論者は、現物の車製造ついて当然ながらいくつかの重要な事実を指摘している。先週、ゼネラルモーターズの元CEO、ダン・エイカーソンは、アップルに自動車産業へ飛び込む能力があるかどうかは疑わしいという意見を述べて議論に加わった。

「利益率の低い、重工業に参入するという長期的な見通しは、非常に疑わしいだろうと私は思っています」エイカーソンはインタビューでブルームバーグに語った

「彼らが本格的に製造業に参入する場合は、慎重に考えた方が良いでしょう。私たちは鋼鉄や粗鋼を買って、そこから車を製造しています。参入しようとしても、彼らにはその方法が全く分からないのです」。彼はこう付け加えた。

エイカーソンは間違っていない。事故で傷つくことなくA地点からB地点まで人々を運ぶ現代の車を製造することは、ポケットに収まる端末の製造をアジアの工場に発注するのとは全く異なるものだ。

だが、アップルが試作車を作っているからといって、実際に自社で製造を行うというわけではない。コンセプトをもとに車を製造するノウハウを持つ製造請負業者がすでに存在しているからだ。Titanは、単に未来の電気自動車を作る方法を自動車メーカーに示すために設計された試作車なのかもしれない―アップルのソフトウェアをその中心に搭載して。

百聞は一見にしかず

これはアップルのライバル、グーグルが多かれ少なかれ既に他の分野で行っていることだ。グーグルは、「純粋な」Androidを搭載するNexusラインのスマートフォンを設計している。他の多くの携帯電話メーカーが、自社の携帯電話にプレインストールしている、カスタマイズされたAndroidとは異なるものだ。

Nexusの各製品は、異なるハードウェア・パートナーによって製造されている。Galaxy Nexus、Nexii 4、5、6はそれぞれ、サムスン、LG、モトローラによって作られている。どれも人気商品にはならなかったが、熱心なAndroidファンには好評で、モバイル端末に対するグーグルのビジョンが分かるものだった。

グーグルは無人車プログラムに関連するOS開発を進めており、現在製造中のTitanでアップルが同じ計画を持っていると想像するのはたやすい。アップルは単に自動車メーカーに車を示し、「これがあなたがたのやるべき方法です」と言うのかもしれない。そして自動車メーカーが、そのメッセージに興味を示すことも考えられる。そうなればアップルは、ドライバーや開発者を夢中にさせるような、全く新しいソフトウェア・エコシステムを生み出すのに最適なポジションに収まるだろう。

車におけるiPhone規模の改革

アップルは画面やバッテリーのついた製品の設計に秀でている。読者はお気づきかと思うが、電気自動車にも画面やバッテリーがある。ドライバーが車やそのメディアを制御できるような、機能性の高いカー・オペレーティング・システムが必要不可欠だ。その開発に、iPhoneやiPodを作り出した経験を活用するのは、アップルにとって大した困難ではないだろう。

アップルは、自動車に最適化されたOS―CarPlayか、より総合的な新OSのどちらか―を採用する利点を、自動車メーカーに示すことが可能かもしれない。そうなれば、アップルはiPodやiTunesでメディア消費を改革したのと同様に、自動車の運転を改革することができる。

今のところ、車のダッシュボードで使用するソフトウェアを開発することは悪夢といっていい。あらゆる自動車メーカーには、ドライバーがアクセスできるソフトウェアに独自の見解を持っている。そしてテスラを除いて、それらはすべて、われわれが毎日使用している消費者向け技術に一世代か二世代ほど後れを取っている。

もしもアップル製のOSが多数の車に搭載されたら、アプリ開発者は唐突に自社製品が実行可能なプラットフォームを得ることになるだろう。

プラットフォームを開発し広めよ

我々は以前にも同様のシナリオを見てきた。iPhoneが登場する前、携帯電話にはあらゆる種類のOSが使用されていた。その結果、モバイル端末用のアプリケーションやゲームを開発することには大きな苦労があった。

だが、iPhoneが広まると、開発者は突如として、新しいアプリを開発し、ダウンロードしてもらって利益を得る道筋を見つけることができた。その後Androidが登場し、広く採用されるようになったため、開発者は別のプラットフォームを気にする必要が出てきた。しかしそれでも、もう一種類だけである。そのためアプリは、iPhoneとAndroidスマートフォン向けに同時リリースされることが非常に多い状況となっている。

Titanは、iPhoneソフトウェアの成功を繰り返そうとするアップルの試みなのかもしれない。開発者がアプリケーションを構築、販売できるプラットフォームを広めようというわけだ。ソフトウェアを売って、収益をあげ、それを繰り返して、開発者に大儲けしてもらおうというわけだ(まあ、少なくとも幸運な少数のみではあるが)。

5年後に新車を購入する際、われわれは赤か青、2ドアまたは4ドア、そしてTitanOSまたはAndroidAutoのどちらがいいかをディーラーと相談しているかもしれない。

トップ画像提供:Apple

Brian P. Rubin
[原文]

※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。

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