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世界は「ポストスタートアップの時代」に入ったのか?

2015年9月1日(火)
ReadWrite Japan

ゲスト執筆者のキャロル・ブロードベントはシリコンバレーのマーケティングエージェンシー Crowded Oceanの共同設立者であり、社長である。この投稿は彼女と共同設立者 トム・ホーガンの両名で書かれたものである。

業界の専門家たちは我々の済む世界はポストPC、ポストデスクトップ、ポストソフトウェアの時代になったとよく言う。最近、我々の企業は36社目のスタートアップ企業を送り出したが、その中で慣習についてどれほど変わったか、またスタートアップたちの中で最良の事例というものがいかに重んじられているかと見てきた。

そこで気づいたのは最初のスタートアップを送り出した頃に支配的であった慣習が、ほんの5年で既に通用しないか、あるいは見なおしの必要に迫られているということだ。以下は幾つかの例になる。

ポストジオグラフィック: 地理的要因に束縛されていた時代の後

これはかつて「バーチャル」と言われていたことで、本社というものが存在しないことを言う。CEOは何処かの海岸沿いにおり、CTOはそこから時差2-3時間くらいの離れた所にいる。当たり前だが営業はそこら中にいる。会社はプロジェクトプラン、嫌になるほど長いテレビ会議、そして街で定期的に行われるミーティングで成り立っている。

ポスト知的財産:知的財産の扱い

これもポストジオグラフィックの流れの一部のようだが、根本的な違いがある。過去、会社は部分的にバーチャルでありえたが、開発チームはそうは行かなかった。彼らは(CTOがいる所に)一箇所に集められ、フルタイムの従業員で無ければならなかった。しかし最近、主にApple,Google,Facebookがシリコンバレーの才能あるエンジニアの多くを握っているせいもあり、この考え方も変わった。知的財産はCTOの手で生み出され、管理されるが、そのCTOはバーチャルな配置だけでなく、インドや中国、ウクライナといったオフショアの人材でもありえる。開発者もまた従業員ですらないということもある。

ポスト-ポストシリコンバレー:第二第三のシリコンバレー

かつてはサンタクララ、クパチーノ、マウンテンビュー、パロアルトなど特定の地域で培われた文化的DNAが今では新しい地域で根付いており、NYにSilicon Alley、オースティンにはSilicon Gulch、イスラエルにはStartup Nationが生まれ、それぞれ栄えている。

今日では国中に数百ものスタートアップのインキュベーター、アクセラレータがいる。そして新たに信じられていることに、それぞれの地域によって人的資源や会合の特色があり、アイデアを一つのところに持ちより互いに高めあっている。

地理的要因による変化もある。かつてサンフランシスコは「バレー」ではなかった。しかし今では評価額10億ドル以上の価値ある企業がサンフランシスコからペニンシュラにまで存在する。この事は新しい技術者の雇用を生んでおり、SFに居を構えペニンシュラまでバス通勤するものや、家も仕事もSFという者もいる。

この土地の会社だけでなく、州外から登記だけをこの地に移している会社もある。また非米国企業(主にイスラエル)ももしバレーに営業所(出来れば本社)があればより早く業績を上げられると考えている。

主要な自動車メーカーやサプライヤーがシリコンバレーに店舗を構えるようになれば、ソフト、スマートフォン、ロボティクス、映像認識、自動運転車でイノベーションが生まれる事だろう。

ポストブルペン:缶詰作業はもはや一般的ではない

かつてスタートアップに人気があったプライバシーが余り無いオープンオフィスは人気に陰りが見られるという。従業員たちはプライバシーが無いことに対してフラストレーションを感じており、研究によるとオープンオフィスのアクセシビリティや開放感といった利点は、明らかに落ちる生産性で相殺されているという。

思いもよらなかった結果が2つある。

a) ヘッドフォンの売り上げが爆発的に上がった

b) より多くの従業員がリモートで仕事をするようになった。これは通勤が嫌だということではなく、家で仕事をしたほうがはかどるためだ。

ポストアジャイル:

アジャイル開発のコンセプトからきているこの単語は、今やあらゆる会社に当てはまることだ。2週間サイクルで日々のスクラムを積んでいくアジャイル開発の手法は、マーケティングやその他の部門にも広まっており、短いサイクルのマネジメントは今では一般的なものだ。我々スタートアップマーケティングの世界では、大きなプロジェクトでも24時間休むことの無い情報のアップデート、毎日Twitterで行われるブレインストーミングと毎週容赦なくやってくるブログ投稿の締め切りでプロジェクトは一週間単位で回っている。

ポストリーンスタートアップ

2011年にエリック・リーズによって広められたリーンスタートアップというコンセプトが標榜する事は、技術系スタートアップは市場に参入する前にMVP (minimum viable product 実用最低限の商品) を用意しなければいけないということだ。

企業が新しい事に素早く順応し、市場の反応に素早く対応できているのであれば、その商品は実用上最低限の機能で十分であり、その方が市場の需要にあった商品を素早く出せるという理屈である。

しかし、商品の送り出しより先に価値ある提案やメッセージによって人の心をつかまなければいけないという法則は時として失敗する事がある。そしてその失敗は非常に大きなものだ。

今日ではあなたのいうリーン・マーケティングが(最低限の資金しかない、人材しかいない、どのようなものであれ、成長マーケティングによるアプローチはリーン・マーケティングにとって代わっている。リーンマーケティングとは顧客獲得までのサイクルを早めることが全ての戦略であり、B2Cのスタートアップ企業にとっては特に素晴らしいコンセプトだろう。しかしセールスサイクルが長期になるB2Bにおいては必ずしも当てはまるものではない。

ポスト販売じょうご:これまでと異なる見込み客の絞込み

昔からある顧客に興味を持ってもらうことから購入してもらうまでのプロセスは一本の流れになっていたが、しかし現在では興味から購入までに、モバイル、SNSが主体となる様々なチャンネルによるコミュニケーションと、再帰的なステップが介在しており、統合的なマーケティングプランはこれまでに無く重要になってきている。

スタートアップはあらゆる生命体同様、環境に適合するよう進化する。HPがおかれた環境はジョブズやウォズニアック、セルゲイやラリー達が置かれている環境とは異なる。今の世代のスタートアップはこれまでよりもより身軽で実験性に富んだものとなる。10年後、こういった特徴は一般的なものとなり、スタートアップ企業は常に他者の二歩先を行く更なる進化を遂げることだろう。

画像提供:Epic Bets

Carol Broadbent
[原文]

※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。

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