プレスリリースを読もう!
英語でデータベースの基本用語を押さえよう
本連載では、英文の資料を読みながら、英語の表現とデータベースの知識を身につけていきましょう。第1回で取り上げるのは、2008年2月4日にリリースされたPostgreSQL 8.3のプレスリリース(http://www.postgresql.org/about/press/presskit83.html.en)のオリジナル原稿の抜粋です。
PostgreSQLのバージョンは3けたの数字で表されます。現在のバージョンは8.3.3で、最初の2けたをメジャー番号、最後の1けたをマイナー番号と呼んでいます。メジャー番号が上がるごとに新規機能、特徴などをまとめたプレスリリースが行われます。では、実際のプレスリリースをみてみましょう。
4 February 2008, New York, NY: The PostgreSQL Global Development Group today announced the release of version 8.3 of the high-performance object-relational database management system.
PostgreSQLは"Global Development Group"というインターネットでつながった開発者仲間で保守と開発が続けられています。日本においては、筆者も所属する日本PostgreSQLユーザ会が普及を目指して活動しています。そのグループからの発表です。PostgreSQLは、"the high-performance object-relational database management system"、つまり高性能のオブジェクトリレーショナルデータベース管理システムです。オブジェクト指向(object-oriented)の意味ではありません。
データベースでオブジェクトと言うと、テーブル(table)、インデックス(index)、ビュー(view)などのデータベースに格納される対象物のことを指し、おおむねSQL文の"CREATE ・・・"で作成されます。テーブルや列の情報など、リレーショナルデータベースの管理も自身のデータベースで行います。これらをメタデータあるいはシステムカタログと呼びます。
PostgreSQLはこれらのオブジェクトを単位として効率よくデータベースを管理しているためオブジェクトという名称を明示的に冠にしています。オブジェクトにはオブジェクト識別子(OID)をシステムが付与します。続きを読みましょう。
This release includes a record number of new and improved features which will greatly enhance PostgreSQL for application designers, database administrators, and, with more than 280 patches by dozens of PostgreSQL contributors from 18 countries.
"a record number of new and improved features"は「これまでの記録を更新する数の新しい機能と改善された機能」ということでしょう。18カ国にまたがるPostgreSQLの"contributors"「貢献者たち」によって280以上のパッチも適用されました。
ここまでは特に難しい表現はありませんね。補足ですが、誰でもPostgreSQLの開発者仲間になることができますので、興味のある方は、まず試しにPostgreSQLに触れてみてください。では、次に進みましょう。
サポート企業のコメント
次のパラグラフはサンマイクロシステムズ、ソフトウェア担当上級副社長、リッチ・グリーン氏のコメントの引用です。
"The continued evolution of the open source PostgreSQL database gives users the option of deploying a non-proprietary database, allowing them to save money, improve performance and increase productivity.
"evolution"は「進化」、"proprietary";「独占開発の」とか「私有の」という意味です。従って、"non-proprietary"は「非商用の」とでも訳せばよいでしょう。
PostgreSQL 8.3 is an impressive new release and we encourage customers around the world to explore it," said Rich Green, executive vice president of software at Sun Microsystems.
まずはこの2つの文章を意訳してみましょう。「分詞構文」"allowing"は「~を実現するために」を意味しますが、この部分は省略します。「たゆまない進化を続けるオープンソースのPostgreSQLは非商用のデータベースを利用するユーザーにこれぞという選択肢をもたらします。PostgreSQL 8.3 は特に目立った最新リリースですので、皆さんぜひお試しください」
では表現方法について解説しましょう。"impressive"は「強い印象を与える、感動的な」が一般的な訳し方ですが、「目だった」としてみました。注目していただきたいのは、"option"つまり「選択肢」に"an"ではなくて"the"がついていることです。いくつかある選択肢の中の1つではなく、「これが」「これぞ」という信念が伺えます。
"encourage"は「ぜひやってみて」という軽い意味でよく使われる表現です。では次に進みましょう。