XenServer 5.5によるサーバー仮想化を体験しよう!

2009年8月24日(月)
平田 敦

ハードウエアの準備とダウンロード

 今回は、「第1回:企業の仮想化を加速するCitrix XenServer(http://thinkit.jp/article/999/1/)」で紹介したCitrix XenServer(無償版)の最新バージョンであるCitrix XenServer 5.5、Citrix XenCenterをインストールし、XenServer上でWindows仮想マシンを作成するまでの流れを説明します。

 XenServerのインストールから実行までにかかる時間は約10分と、非常に簡単です。また、直観的で操作性の高い管理コンソール、XenCenterを使用して、数百もの仮想マシンを一元的に管理することができます。このインストールと管理の容易性は、XenServerを選択するメリットの一つです。

 それでは、XenServerによるサーバー仮想化体験を行うための手順についてステップ・バイ・ステップで進めていきましょう。

 はじめに、XenServer、XenCenterをインストールするため、2台の物理x86コンピューターを用意します。一方をXenServerホストとして使用し、もう一方でXenCenterを実行します。それぞれのシステム要件とインストール要件は図1-1をご参照ください。

 無償版のXenServerとXenCenterのダウンロードは、ダウンロードサイト(http://www.citrix.co.jp/products/xenser/download.html)から行います。
 今回は、このサイトを経由してXenServer 5.5 のインストールCDイメージ(XenServer-5.5.0-install-cd.iso)と日本語XenCenterのMSIパッケージ(XenCenter.ja.msi)をダウンロードします。

XenServer 5.5のインストール手順

 XenServer 5.5 のインストールCDイメージ(XenServer-5.5.0-install-cd.iso)には、XenServerホストを物理コンピューター上に構成し、Windows仮想マシンを作成するために必要な基本パッケージが含まれています。

 今回は、ダウンロードしたXenServer 5.5のインストールCDイメージから作成したインストールCDでインストールを行いますが、それ以外にもネットワーク上にTFTPサーバーを用意し、PXEブートを使用してインストールすることもできます。

(1)物理コンピューターをインストールCDから起動します。「Welcome to XenServer」の画面が表示されたら[Enter]キーを押下してインストールを開始します(図1-2参照)。

(2)起動メッセージの後、ハードウエア検出と初期化が実行され、インストールに使用するキーマップを選択する画面が表示されます。使用するキーマップとして[jp106]を選択して[OK]を選択します。
 これ以降のインストール画面では、以下のキーを使って操作します。
・各要素間の移動:[TAB]キーまたは[ALT+TAB]キー
・各要素の選択:[SPACE]キー
・次画面に移動:[F12]キー

(3)「Welcome to XenServer」画面にて[Install or upgrade XenServer Host]を選択して[OK]を選択、XenServerのインストールを進めます(図1-3参照)。

 次のページでは、XenServerのインストールウィザードでの設定内容についてポイントをまとめます。

XenServerの各種設定におけるポイント

・インストールパッケージを選択する画面

 インストールCDからXenServerのインストールを行うため、[Local media]を選択します。
 なお、XenServerホストのインストール先のコンピューターがハードウエアによる仮想化支援機能(Intel VT、またはAMD-V)をサポートしていない場合やBIOS設定で無効になっている場合は、Windows仮想マシンを実行できないことを警告するメッセージが表示されますので、ご注意ください。

・Linux Packをインストールするかどうかを選択する画面

 Linux Packは、インストールしたXenServerホスト上でLinux仮想マシンを作成する場合に必要です。
 Linux Packをインストールする場合は、XenServerダウンロードサイトからLinux PackインストールCDイメージ(XenServer-5.5.0-linux-cd.iso)をダウンロードしますが、今回はWindows仮想マシンを作成するため、ここでは[No]を選択します。

・XenServerホストのルートパスワードの設定画面

 ルートパスワードはXenCenterからXenServerホストに接続する際に使用されます。任意のパスワードを入力して[OK]を選択します。
 なお、XenServer 5.5では、Active Directoryサーバーによる認証もサポートされますので、既存のActive Directory環境で、XenServerの管理者権限の制御を簡単かつ安全に行えます。

・XenCenterへの接続インターフェース(管理インターフェース)の設定を行う画面

 コンピューターに複数のNICがある場合は、XenServerの管理インターフェースとして使用するNICを選択する必要があります。使用するNICを選択して次のステップへ進みます。

・XenServerホストのホスト名の指定とDNSサーバーの設定を行う画面

 ホスト名とDNSサーバーを指定して次のステップへ進みます。

・XenServerホストのタイムゾーンを設定するための所在地を選択する画面

 適切なタイムゾーン設定を行い次のステップへ進みます。

・XenServerホストの日時を設定する画面

 [Using NTP](NTPによる自動設定)、もしくは[Manual time entry](手動設定)を選択します。なお、[Manual time entry]を選択した場合は、インストールの終盤で、システムの日時を手動で設定する画面が表示されます。

 以上でXenServerインストールのための情報設定は終了です。

 [Install XenServer]を選択してXenServerのインストールを実行します。インストールが開始されると進行状況バーが表示されます。

 「Installation Complete」画面が表示されたら、ドライブからCDを取り出して、XenServerホストを再起動します。再起動するとXenServerの起動画面が表示され、システム設定コンソールのxsconsoleが表示されます(図2-1参照)。

XenCenterのインストール

 XenCenterは、Windows上で動作する管理コンソールです。英語版のMSIパッケージはXenServerのインストールCDにも含まれていますが、ここでは先にダウンロードした日本語のMSIパッケージ(XenCenter.ja.msi)を使用してインストールを行います。

 Windows上で、日本語XenCenterのMSIパッケージをダブルクリックして、インストールウィザードを起動します。

 最初のようこそ画面にて[次へ(N)]をクリックして、インストールウィザードにしたがい、XenCenterのインストールを行います(図2-2参照)。

 XenCenterのインストール機能として、[XenCenter5.5]と[XenServer 4.0サポート]が表示されますが、XenServer 4.xホストを管理する必要が無い場合は[XenServer 4.0サポート]を選択する必要はありません。また、インストール先の変更もできます。デフォルトのインストール先は、“C:\Program Files\Citrix\XenCenter”です。

 インストールが完了すると、デスクトップおよび[スタート]メニューにXenCenterのアイコンが追加されます。

Windows仮想マシンと準仮想化ドライバのインストール

 Windows仮想マシンのインストールはXenCenter、もしくはCLI(コマンドラインインターフェース)から、テンプレートを複製してインストールを行います。

 Windows仮想マシンのインストールには、「Windowsオペレーティングシステムのインストール」、「準仮想化ドライバ(Citrix Tools for Virtual Machines)のインストール」の2つの段階があります。ここでは、XenCenterを使用して、実際にWindows Vista仮想マシンを作成してみます。

・Windowsオペレーティングシステムのインストール

(1)はじめに、デスクトップまたは[スタート]メニューからXenCenterを起動します。

(2)XenCenterのツールバーから[サーバーの追加]を選択します。XenServerホストのIPアドレス(またはホスト名)とルートパスワードを入力して、XenServerホストへ接続します(図3-1参照)。

(3)XenCenterの左ペインにて、XenServerホストを選択、ツールバーから[新規VM]をクリックして、Windows Vista仮想マシンテンプレートからWindows Vista仮想マシンを作成します。
 各仮想マシンテンプレートには、仮想ハードウエアの構成を定義するための設定が含まれています(図3-2参照)。

(4)新規VMウィザードにしたがい、作成する仮想マシンの名前、インストールメディアの場所、仮想CPUの数と仮想マシンのメモリサイズ、仮想ディスクのサイズ、仮想ネットワークインターフェースの設定を行い、新規VMウィザードでの設定を完了します。
 ここでは、インストールメディアの場所を、XenServerホストの物理DVDドライブとして、仮想CPUの数と仮想マシンのメモリサイズ、仮想ディスクのサイズ、仮想ネットワークインターフェースはすべてデフォルトの設定にしたがって仮想マシンを設定します(図3-3参照)。

(5)XenCenterの左ペインにて、Windows Vista仮想マシンを選択、中央ペインにて、[コンソール]タブを選択します。XenCenterのコンソール画面にて、Windows Vistaオペレーティングシステムのインストールを進めます(図3-4参照)。

・準仮想化ドライバ(Citrix Tools for Virtual Machines)のインストール

 Windows Vistaオペレーティングシステムのインストールの完了後、Windows Vista上で、準仮想化ドライバ(Citrix Tools for Virtual Machines)のインストールを行います。準仮想化ドライバは、エミュレートされたドライバに置き換わり、WindowsとXenServer間での高速なトランスポートを提供します。

 Windows準仮想化ドライバ(Citrix Tools for Virtual Machines)を仮想マシンにインストールするには、XenCenterのメニューから[VM(M)]-[XenServer Toolsのインストール(T)]を選択します(図3-5参照)。

 準仮想化ドライバ(Citrix Tools for Virtual Machines)のインストールの完了後、仮想マシンを再起動すれば、仮想マシンのインストールは終了です。

 仮想マシンの[全般]タブから、「仮想化の状態」が「最適化済み(Version 5.5インストール済み)」となっていることを確認してください。

インストール後の作業

・ISOイメージライブラリの使用

 インストールメディアの場所として、XenServerホストの物理DVDドライブのほかに、インストールメディアのISOイメージライブラリを使用することもできます。ISOイメージライブラリの利用には、XenCenterのツールバーから[新規ストレージ]を選択して、NFSまたはWindowsファイル共有 (CIFS)を作成する必要があります(図3-6参照)。

 ここでは、ISOイメージライブラリとして、Windowsファイル共有(CIFS)を作成しています。Windowsファイル共有(CIFS)は、共有ディレクトリへのルートアクセスができるように設定し、UNCパスを使用してXenServerから接続します。

 共有をマウントすると、その中にあるISOイメージは、新規VMウィザードのインストールメディアの場所やXenCenterのDVDドライブのプルダウンリストなどから使用することが可能です(図3-7参照)。

・XenServerのアクティブ化とライセンスのインストール

 XenServerは無償で提供され、業務での使用においても、制限や使用期限はありませんが、初回インストール後30日以内に製品をアクティブ化する必要があります。XenServerのアクティブ化とライセンスファイルの入手は、XenCenterのライセンスマネージャ(XenCenterのメニューから[ツール(L)]-[ライセンスマネージャ(L)…]を選択)から行うことができます。

 以上で、XenServer 5.5とXenCenterをインストールから、XenServer上でWindows仮想マシンを作成するまでの流れは終了です。一通り解説してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか?

 次回は、今回作成したXenServerホスト環境を使用して、XenDesktopによるデスクトップ仮想化環境を構築していきたいと思います。

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
外資系サーバーベンダーのシステムエンジニアを経て、2004年にシトリックスに入社。テクニカルサポート部にて、社内、社外のエンジニアに対する新製品の技術支援や技術トレーニングを行うプロダクトサポートスペシャリストとして従事した後、現在は、マーケティング本部で、プロダクトマネージメント、テクニカルマーケティング、新製品のレディネス業務などを担当。

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