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【ブレイクアウト セッション】日本発xRスタートアップが世界で勝つためには

2019年10月29日(火)
工藤 淳

イノベーションのさらなる未来に向け、日本マイクロソフトによる「Microsoft Innovation Lab 2019」が開催された。第1回となる今回は、国内の有力スタートアップや政府関係者によるセッション。また、デジタル分野で革新的なプロダクト/サービスを持つスタートアップ企業を集めた「ピッチ コンテスト」などが行われた。最終回の今回は、日本発xRスタートアップの未来を業界のリーダーたちが語り合った「ブレイクアウト セッション」を紹介する。

【パネリスト】
國光 宏尚 氏
株式会社 gumi 代表取締役会長
福田 浩士 氏
株式会社 meleap CEO
山口 征浩 氏
株式会社 Psychic VR Lab 代表取締役

【モデレーター】
久保田 瞬 氏
株式会社 Mogura 代表取締役社長
Mogura VR News 編集長

急成長を続けているxR市場
2019年はその進化の大きな転機となる

「AR、VR、MR」の総称である「xR」領域で、日本のスタートアップが次々に名乗りを挙げている。2019年秋にはマイクロソフトの最新ヘッド マウント ディスプレイ「HoloLens 2」の発売も予定され、いよいよ本格的に市場が動き出すのは確実だ。現在はグローバル企業が先行するこの市場で、果たしてこれから先、日本のソフトウェアやコンテンツは互角に闘うことができるのか。すでに第一線で活躍する日本発xRスタートアップのリーダーたちの生の声を聞こうというのが、今回のセッションだ。

マイクロソフトの最新ヘッド マウント ディスプレイ「HoloLens 2」

最初にモデレーターの久保田氏が、現在のxR市場について説明した。現在のマーケット規模はやはり海外の方が大きく、その理由としては主要なデバイスがどれも海外製品であることが挙げられる。とはいえ市場そのものの先行きはかなり有望で、「ある調査によれば、AR、VR、MRの3つを合わせて2018年から2023年までの年平均成長率は78%に達すると見られています。もちろん現在もこの勢いは続いています」と久保田氏は語る。

これを受けて國光氏は、2019年はxRにとって大きな転機になったと指摘する。とりわけ注目は、同年5月の新型VRヘッドセット「Oculus quest」の発売だ。これまではVRに取り組もうにもハイエンドのPCやセンサーなどが不可欠で、技術・価格の両面でハードルが高かった。それがOculus questならば399ドルで一体型のユニットを買えば、すぐに使い始めることができる。これは開発者、ユーザー双方にとって画期的な進歩だ。

Oculusの新型VRヘッドセット「Oculus quest」

「この結果、BtoB領域でも導入しやすくなって、ベンダー各社の売上が上がっています。一方、エンターテインメント分野では、VRリズムゲームの『Beat Saber』がVRゲームで初めてミリオンセラーを記録。すでに530万本くらい出ていて、約40億円の売上といわれています。バーチャルYouTuberではVRを使ったライブなども行われ、エンターテインメント領域ではかなり市場規模が拡大してきています」(國光氏)。

VRリズムゲームのBeat Saber

こうした市場の拡大を受けて、山口氏はサービスを提供する側として、今後はコンテンツに対する考え方が改めて問われてくると示唆する。

「デバイスや機能がコモディティ化しつつある今、その先に何が起こるのかを想定して作っていくことが必要です。その中で僕らはやはり文化を創るとか、新しい人材を育成するということを考え、そこから自分たちのサービスの差別化を図っていかなくてはなりません。そこに気づき始めた一部の会社が、すでに新しい策を打ち出しつつあります」(山口氏)。

デバイスの普及・進化を原動力に
BtoB、コンシューマー双方で成長の兆し

久保田氏は世の中のVRの利用状況について、いわゆる「BtoB領域」と、「コンシューマー向けのコンテンツ配信」の2つで、2018年あたりから活発な動きが出てきたと語り、これらを核に今後は急速な伸びが見られるのではと予想する。

これを受けて國光氏は、コンシューマー向けはほぼ100%立ち上げが完了したと語り、その理由としてデバイスの好調な売れ行きを挙げる。たとえばOculus questの場合、2019年の予想は100万台だったのが、上方修正して200~300万台を達成すると見られている。またコンシューマー向けのハイエンドなVRヘッドセットディスプレイの市場規模は、2018年末時点で約500万台だったのが、2019年夏には少なくとも1500万台、2020年夏には3000~3500万台まで到達可能と同氏は見ている。

「一方、AR領域では、やはりHoloLens 2が性能的に抜きん出ている。まだ3500ドルと高価なので、最初はごく一部の製造業などを中心に導入が進む中で、従来のHoloLens以上に質の高いAR体験が生まれてくるだろうと期待しています」(國光氏)。

また福田氏は、今後のAR用デバイスの進化の動向に注目していると明かす。現在のデバイスは、大きくスマートフォンベースとグラス型の2種類の製品がある。

「スマートフォンベースの製品はどんどん機能が上がっており、当社でもどう使えるか注目しています。一方グラス型の代名詞といえばHoloLensですが、当社が提供しているe-スポーツのようなサービスだと、重量や視野角など使い方の部分の性能にまだまだ機能向上が欲しいところで、今後の一層の進化に期待しています」。

左よりモデレーターの久保田氏、パネリストの國光氏、山口氏、福田氏

言語を介さない強みによる海外展開から
ワークショップなどの地道なサポートまで

セッションの後半では、「現在日本のxRのスタートアップは、どのように海外に挑んでいるのか」をテーマにディスカッションが行われた。

冒頭から「正直なところ、“日本発”というのはまったく意識してない」と言うのは福田氏だ。その大きな理由は、福田氏の会社が提供するe-スポーツ サービス「HADO」が、ウェアラブルデバイスを装着して実際に身体を動かせばプレイできる “言葉いらず” だという点にある。こうした強みを生かして同社では、一般の日本のスタートアップのように、まず国内を攻略して次に海外へという手順を踏まず、世界同時にマーケットを開拓する方法を採っていると福田氏は明かす。

e-スポーツ サービス「HADO」

「まずSNSでプロモーション動画を流すと世界中の数十か国から問い合わせが来るので、それぞれと商談して良いパートナーに絞り込んでいきます。こういう国を選ばない展開方法が可能なのは、やはりコンシューマーの利用に言語を介さないサービスだからで、当社の非常に大きな強みだと思っています」(福田氏)。

一方、アーティストに空間表現の場を提供するVRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」を世界各国で提供している山口氏は、単にクラウド上でVRコンテンツを作成・配信するというだけでなく、そうした文化的土壌を醸成するために、「グローバルでの地道な取り組み」にも力を入れている。

VRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」

「VRを作るという経験自体、まだまだ少ない人がほとんどです。そこで世界各国でワークショップやスクールを開講したり、アワードを開催したりしています。またユーザーからネット経由で話を聞いて、独自のテクニックやTipsを記事にする取り組みも1年前から続けて、現在600本くらい、かなり気合いの入った記事を公開しています」(山口氏)。

とはいえ、日本のスタートアップが海外に出ていく場合、「やはり日米の2つがダントツで重要なマーケット」と断言するのは國光氏だ。

「とりわけコンシューマー向けVR=エンターテインメントでは、出たらすぐに高いお金を払ってでもやりたいというアーリーアダプターの存在が大切です。それが圧倒的に多いのは、やはりアメリカ。次いで日本も最先端ユーザーが多いので、まずは日本でコンシューマー向けの市場を取りにいって市場拡大させた上で、次にアメリカを狙って挑戦する。その2つの市場を取れれば、ヨーロッパや韓国などは後から皆ついてきます」(國光氏)。

10年後の未来を見すえた取り組みが
日本発のxRスタートアップに可能性を拓く

セッションの終盤では、久保田氏が「これからxRスタートアップとして世界にチャレンジする人たちにアドバイスを」と、全員に業界のリーダーとしての知見を求めた。

これに応じて、まず福田氏が「世界でビジネスを拡げるために大事にしている4つのこと」として、(1)国境、人種、性別関係なく、誰もが共感できるビジョンを語れること、(2)大きい波に乗っていくこと、(3)言語を使わない、(4)熱狂的なパートナーを海外にたくさん作ること を挙げた。

「大きい波とは、当社の場合はe-スポーツという世界的な動きです。またスタートアップの事業は、短期間の利益だけを見ていてはできません。今後5年、10年先を見据えて新しい何かを作っていくためにも、損得を超えて協力してくれる人たちが必要なのです。そして何よりそういう仲間を増やすために一番大事なのが、誰もが共感できるビジョンなのです」。

インフラの将来をしっかり見ることが大事と語るのは、山口氏だ。近い将来、世界中の何十億人もの人たちが日常生活の中でxRデバイスを装着するようになるのは確実であり、その中でどういう未来をつくるのかが大きく問われると同氏は言う。

「例えば日常的にMR デバイスをつけて、1日8~10時間暮らした時に何が起きるのか。今のように情報を提示するだけでなく、肉体的にも精神的にも大きな影響力があるデバイスを使って、人々が自分の世界や生活を拡張しながら生きていく時代がやってきます。おそらく10年くらいかかると思うが、そうなった時にどんなインフラが求められ、どう進化していくのか。日本が貢献できる領域はすごく大きいし、私たちもそこに加わっていきたいと思っています」(山口氏)。

國光氏は、日本のxRスタートアップが突き抜けるビジネスを作るために必要なのは、何よりもタイミングだと強調する。世の中や業界のパラダイムが大きく変わる瞬間に、きちんと居合わせることができるかが大事なのだ。

ここ十数年間の最も大きな例として、國光氏は2007年のiPhone登場によるスマートフォンの爆発的な拡がりを挙げる。同時期にTwitterやFacebook、そしてAWSなども登場した。以降の十数年間は、スマホ、ソーシャル、クラウドの3つが時代を牽引してきたのであり、勝ったのはこの3つを“ファースト”にした企業だったと同氏は指摘する。

「それが今、再び大きな変革の潮流がきています。デバイスではxR、データ分野ではIoTやブロックチェーン、データ活用のあり方ではクラウドAI。次の10年は間違いなくこの3つが時代をリードするし、この3つのテクノロジーを “ファースト” にした企業が生き残る。それができれば日本のスタートアップにも、世界で突き抜けるのは十分可能だと思います」(國光氏)。

これらの提言を受けて久保田氏は、「xRは短期の利益や成果だけに目を向けるのではなく、10年後どうなっているか。その結果、xRが人々の生活をどう変えるのかを常に考えていく必要があります。こうした取り組みが、やがて日本だけでなくユニバーサルなものになっていくのではないかと期待しています」と展望を語り、セッションの幕を閉じた。

フリーランス・ライター兼エディター。IT専門出版社を経て独立後は、主にソフトウェア関連のITビジネス記事を手がける。もともとバリバリの文系出身だったが、ビジネス記事のインタビュー取材を重ねるうち、気がついたらIT専門のような顔をして鋭意お仕事中。

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