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クラウド・コンピューティングの可能性

2009年9月3日(木)
三崎 文敬(みさき ふみたか)

クラウドで運用費を削減し、改革能力を大幅に向上

 まずは自社の話になりますが、IBM社内のR&D(研究開発)分野で大きな成果を挙げたエンタープライズ・プライベート・クラウドの例です。世界中の基礎研究所に従事する3,000人の研究員を対象に、必要なITリソースをオンデマンドに提供する「IBM Research Computer Cloud(RC2)」をご紹介しましょう。

 RC2では、研究者が必要なサーバー数(CPU数)、OSの種類や数、ストレージ容量などのリソース要求を画面上で指定するだけで、自動的に10分足らずでシステムが準備され、研究者はすぐに利用できるようになります。従来、研究用のIT環境構築には最低でも2週間、大規模であれば数カ月を要することもありました。現在このRC2では、常時300種類ほどのプロジェクトが動いており、IBMのR&D部門の活動が大幅に促進されています。

 クラウド・コンピューティングは、この事例に見られるように以下の3つの観点でメリットをもたらします。
・ビジネス・イノベーション
・サービス・デリバリー
・IT最適化

 1番目のビジネス・イノベーションでは、これまでにないスケーラビリティー(拡張性)とキャパシティー(能力)を提供します。また、IT投資を軽減しながらイノベーションの加速を支援することができます。2番目のサービス・デリバリーでは、ITアプリケーションやインフラの動的な提供を可能とし、より短い時間での市場参入や市場拡大が可能となります。最後のIT最適化では、運用管理コスト(TCO)を劇的に削減し、戦略的取り組みへの投資を最大化することができます。

 そして将来的には、産業、研究・教育、国や社会にクラウド・コンピューティングがもたらすメリットは計りしれません。

社会のパラダイムシフトへ

 次に上海の西方、無錫(むしゃく)にある世界初の商用クラウド・コンピューティング・センターをご紹介します。アジアのシリコンバレーを目指す無錫は、クラウド・コンピューティングを適用することで、従来は大企業しか導入できなかった、高価な最先端のソフトウエア環境をベンチャー企業のプログラマーが共用インフラストラクチャーとして利用しています。このことにより、従来は「安い」という評価が先行していた中国のソフトウエア開発業界ですが、無錫のプログラマーは、あたかも10万人の先端的ソフトウエア開発企業であるかのごとく、質の高い開発を行うアウトソーサーとして活躍しています。

 このようにクラウド・コンピューティングにより、最先端技術の恩恵を受けられなかった中小企業やベンチャー企業でも、例えばコミュニティーを形成してクラウド・コンピューティングを活用すれば、高度なITインフラ、標準化された質の高いツール、プロセスを手に入れることができるようになり、コミュニティーのレベルも一気に押し上げることができるのです。さらに迅速かつ容易にコミュニティーを立ち上げることができるようになり、ビジネス・モデル、サービス・モデルのイノベーションが加速するでしょう。

 さらにクラウド・コンピューティングによりインフラが標準化、均一化されることで、次の段階としてどのようなサービスを提供しビジネスを創るかが重要になってきます。つまり新しい「サービス」という概念や定義が創出されて、そのための人材構造や産業構造の変革が求められます。この動きは世界中で急激に起きていますので、日本も後れをとってはいられません。

 人、ものに代表される物理インフラと、デジタル・インフラがダイナミックなネットワークで融合し、社会やビジネスの生態系に変革がもたらされる、インテリジェントでスマートな社会。クラウドはそれを実現するだけの可能性をもっているのです。

著者
三崎 文敬(みさき ふみたか)
日本IBM
日本アイ・ビー・エム大和研究所に入社後、製品開発担当や製品企画担当などを経て、IBMコーポレーションの技術戦略部門スタッフ。2001年以降はLinux、Grid、Virtulization、Autonomic ComputingといったEBO(Emerging Business Opportunity)のビジネス・インキュベーションに従事し、2009年1月より未来価値創造事業 クラウドコンピューティング事業推進部長として全社のクラウド戦略を担当。

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