クラウドのストレージ要件を満たすには
ストレージインフラの業界標準は?
ストレージ仮想化技術そのものについての効果的な利用や環境構築手法は、さほど新しいものではなく、成熟した技術もあります。しかし、これをクラウドコンピューティング環境に視点を置いた、効率的で効果的なストレージインフラの構築という観点でみると、その方法などについて解説した資料はまだそれほど多くありません。
クラウドを前提としたストレージインフラに関する業界標準という点でみても、Storage Networking Industry Association(SNIA:http://www.snia-j.org/)が「クラウドストレージ向けのシステム標準とインターフェースの特定、開発、調整」を目的として、クラウドストレージに取り組む初めてのテクニカルワークグループ(以降TWG)の発足を発表したのが2009年4月と、ごく最近のことです。
すでに、このTWGからは、クラウドストレージのユースケースに関するドラフト、クラウドストレージのための標準インターフェースにも言及した参照アーキテクチャに関するドラフトも公開されていますが、いずれにしても取り組みは始まったばかりです。
したがって、現時点ではクラウドストレージには承認された業界標準や事実上の標準がないため、新規または既存のストレージソリューションがクラウドのニーズを満たし、提供するサービスレベルの向上に適したものであるかどうかを評価する場合の検討事項は限られてきます。
ストレージソリューション評価の検討事項
ここではストレージソリューション評価の際、必要と思われる検討事項について、Q&Aの形で解説していきます。
■ストレージの効率性を向上させることができるか?
ストレージインフラは、ストレージ利用率を向上させ、全体的な効率を大幅に引き上げて、コスト削減が可能であるものが必要になります。
シンプロビジョニング、効率的なクローニング、プライマリデータセットとセカンダリデータセットの重複排除といった機能は、いずれもストレージの必要量を大幅に削減します。本質的にデータの重複が多い仮想環境では、重複排除や効率的なクローニングは特に重要な機能です。
■ストレージにデータ保護機能が統合されているか?
ストレージ環境の共有が進むと、ストレージとデータ保護機能の緊密な統合が不可欠です。
■管理プロセスを自動化し、サービスと整合性のあるプロセスを実現できるか?
プロビジョニング、バックアップ、レプリケーションなど、より多くの業務をユースケース化・自動化し、クラウドサービスに統合できれば、それだけ環境のスケーラビリティが向上します。また、リソース使用状況のレポート作成機能やリソースの使用に応じた課金機能も必要です。
■マルチテナント環境を確立し、データのセキュリティーを保証できるか?
効率的なクラウドストレージには、複数のビジネス部門や異なる企業が同一のストレージハードウエアをセキュアに共有できることが不可欠です。
■データを自由に移動して常時稼働インフラを作成できるか?
提供するすべてのサービスに対して一貫性のあるビジネス継続性とディザスタリカバリープロセスを維持することが不可欠です。従来では許容された「計画停止」という運用も、マルチテナント環境においては難しくなります。メンテナンスはすべて、アプリケーションの処理を中断せずに行う必要があります。
以上の基本的な検討事項に加え、次の点について考慮することも重要です。
■ストレージリソースを柔軟に拡張できるか?
ストレージリソースの割り当て、拡張、縮小、割り当て解除を即時に実行完了し、適切な容量とパフォーマンスを両方提供する必要があります。
■自社のストレージ環境はサーバーの仮想化に対応しているか?
クラウドインフラにとってサーバー仮想化は重要な要素となるため、現在使用している、または将来導入する可能性のある仮想化ソリューションに対して、緊密に統合できるストレージかどうかの検討が必要となります。
■単一のネットワークファブリックですべてを実行できるか?
単一のイーサネットファブリックにSANとLANを統合すると、コストを削減して柔軟性を向上させることができます。つまり、現在の環境からFibre Channel over Ehternet(FCoE)接続環境への移行をふくめた対応が可能かどうかという点についての検討になります。
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