コミュニケーションスキルを磨こう
上手なおひとりさまの時間も大切に
突然ですが、「おひとりさま」という言葉が数年前にはやったのですが、覚えているでしょうか?「おひとりさま」の著者で故岩下久美子さんによると、「おひとりさま」とは時間も空間も自分の思いのまま、自分の意に反して周囲の人に合わせて気兼ねするといったストレスがない状態を指し、そうであるからこそ自分を好きでいられるし、仕事も恋愛もうまくいくのだそうです。
首都圏で40代前半の男性非婚率は3割を超え、いまや「男おひとりさま」も珍しくない時代です。未婚であれば意識せずとも週末などは、自分の時間を好きなように使い、ゆっくりと過ごすことができますが、既婚の場合は1人になれる時間を確保することすら難しいものです。出張先で思いのほか仕事が速く片付きホテルでゆっくりできてよかった、とささやかな日常からのエスケープを楽しむ方も少なくないのではないでしょうか?
日ごろ私たちは会社でも家庭でも常に人に囲まれて過ごしています。週末にホテルに泊まって1人の時間を優雅に味わうのもよいですが、お昼休みに会社から少し離れたお気に入りのお店でランチをしたり、会社帰りにバーに寄ってちょっと1杯飲んだり、1人を楽しめるちょっとした工夫もストレスケアや仕事とプライベートとの切り替えに大切なことなのです。
充実したワークライフのための社外ネットワーキング
1人の時間を持つことで上手にストレスケアを行うことは大切ですが、仕事やプライベートのさまざまな課題に対処していくのに、自分の経験や知恵だけでは難しいことも多いものです。こんな時はソーシャルサポートを得るというのが非常に有効な手段です。
ソーシャルサポートとは心理学用語で「他者から提供される有形、または無形の援助のこと」を指し、「道具的サポート」と「情緒的サポート」があります。
「道具的サポート」は、さまざまな問題を解決するための資源(物や情報)を与える支援を指し、「情緒的サポート」は、励ましたり共感したり、心の交流がある支援を指します。
社内の先輩や同僚からアドバイスが得られればよいのですが、IT業界ではそのような状況があまりないのが現状です。「相談したくても上司に会えるのは月1回」などという方も珍しくありません。また、どうも職場の人間は苦手で、社外の人と交流を持ちたいと考えている方もいるでしょう。
こんな時は思い切って専門の勉強会や異業種交流会に参加してみるのはいかがでしょうか?突然そのような会に参加するのは苦手だという方であれば、同窓会や趣味のサークルに出掛けるというのもよいでしょう。同じ業界や立場の人以外の交流がストレス発散になったり、ひょんなことから違う視点でのアドバイスやヒントがもらえたりと、仕事の悩みが解決することがあるかもしれません。
単なる知り合いのような自然発生的な関係から一歩進んだ、同じ目的や意図を持った人間関係、すなわちネットワークを持つことが必要だと感じている方は少なくありません。しかし、実際にどうやってネットワークを構築していけばよいのでしょうか?図3に実践的なポイントをまとめました。
ネットワークには、ソーシャルサポートとしての人脈ができる、意欲や刺激といったエネルギーを交換し合う機会が得られる、といったメリットがあります。しかし、そのような場に参加しても、誰とも話をしなかったり、話しかけられても相手の顔も見なかったり、自分の意見を適切に主張することができなければ、得られるものは多くはないでしょう。
やはりここでも基本となるのはコミュニケーションなのです。心理学ではコミュニケーションはスキルであり、訓練によってスキルを磨くことができるとされています。苦手と思わず、充実した仕事やワークライフのために、ぜひ身近な人とのあいさつといった身近なところからコミュニケーションの楽しさを実感していってください。
本連載では、6回にわたりIT業界におけるストレスの特徴や病気にならないための予防法、部下への対応方法、よりよいワークライフを送るためのコツなど、幅広く紹介してきました。連載中、「上司に読ませたい」「参考にしたい」といった意見もいただきました。本連載が、ストレスの多いIT業界でより健やかに元気に働いていくためのヒントになることを期待しています。