新米PMのためのリモートコミュニケーションテクニック9選

2021年5月27日(木)
金子 拓哉

はじめに

私は普段、社会課題の解決に向けた様々なITソリューション開発や技術検証等を行なっていますが、新型コロナウイルス感染拡大を境に、働き方は大きく変わりました。私が所属しているチームではコロナ禍以前からスクラム開発を取り入れており、毎日のデイリースクラムやバックログの確認、ユーザーレビュー、振り返りなどを対面で行なっていましたが、新型コロナ感染症の影響により状況が一変し、全てのコミュニケーションがオンラインへと移行しました。

状況が変わったのは我々の開発チームだけでなく、社内の他部署やお客様側も同様です。オンライン会議を始めたは良いものの、中にはずっとカメラオフ、ミュート状態の参加者もいます。そのようなときは「本当に認識が合っているのか?」「同意してるのだろうか?」「何か意見はあるのだろうか?」と不安を抱えたまま会議が終わってしまうこともよくありました。

あれから1年。紆余曲折、七転八倒、一喜一憂の末、やっとこの悩みに対する「自分なりの最適解」が見つかりました。今回は、私がPMとして普段どのようなことを意識してコミュニケーションを行なっているかを紹介したいと思います。少しでも多くのPMの方々、またそれに類する立場の方々の参考になれば幸いです。

コミュニケーションの基本は「信頼関係」

対面/非対面は関係なく、信頼関係こそがコミュニケーションの悩みを解決する最も重要な要素だと考えています。信頼の薄い相手からの提案は、なかなか聞いてもらえませんし、言葉がそのままの意味で、伝わりづらくなります。

またコロナ禍において、オンラインでのコミュニケーションは定着しつつあります。対面を前提とした信頼関係構築のベストプラクティスを探せばいくつも書籍やネット記事などに上がっていますが、ここではオンラインコミュニケーションを前提として、実際に効果があったなと思うテクニックを紹介します。

①クライアントとの信頼関係

①-1 誠実である

シンプルに言うと「丁寧に対応する」「自分の言葉で語る」「嘘をつかない」ことです。オンラインだと表情やリアクションなど視覚での情報が伝わりにくいので、言葉が中心になります。視覚から伝わりにくい分、一言一句がよりダイレクトに伝わります。そのため、丁寧な説明はより丁寧に伝わり、セリフのような起伏のない説明には相手の反応も薄くなりがちです。

また「できること」だけでなく「できないこと」も正直に話すようにしています。クライアントの期待値に届かない結果になったときに、信頼関係が崩れていくことを痛感します。相手の期待値を上げすぎないためにも、誠実に語ることが大事だと思います。

①-2 状況に合わせて、笑顔で相手に接する

笑いや喜びが薄い会話は事務的に進み、記憶にも残りにくく、相手に頼みたいことがあっても渋られてしまうことが多いです。言うまでもなく、笑いや喜びは会話の潤滑剤になり、多少難しい相談や想定外の連絡も反発少なく受け入れてくれるようになります。しかし、真剣な会議でウケを狙っても、場が凍るのは目に見えていますよね。

私がオンライン会議などで普段実践しているのは、少し笑顔で話をする/聞く、および相手が笑ったら自分も笑います。ミラーリング効果ですね。 ローリスクハイリターンなのでおすすめです!

①-3 レスポンスを短く、早くする

対面で会う機会が少なくなった分、オンラインでのコミュニケーションの機会は以前より明らかに多くなりました。特に最近ではメールよりチャットの文化が広まり、短いセンテンスかつ多発的なやりとりが基本になっています。

そんな環境下では、正確な情報を書いた長文より要点を抑えた短い文章の方が相手に内容が伝わる傾向があることに気づきました。またスピードも重要で、時間が経つと相手の興味の鮮度は損なわれていきます。一番関心が高いときに簡潔で即時的な対応を意識することで、相談ごとや合意形成の質が大きく改善しました。

②メンバーとの信頼関係

②-1 メンバーのアクションには必ず反応する

チームで最高のパフォーマンスを出し続けるためには、発信しやすい環境作りが最も大事だと思っています。発信を受け取った側は相手の状況を把握できますが、何のリアクションも返ってこなかった場合、発言した側は相手が何を感じどう思ったのかが見えず、不安になるものです。

オンラインだとチャットやメールの会話は簡単に埋もれてしまうので、「見てくれていないようだから他の報告や相談も今度にしよう」という心理が働くのも仕方がないように思います。ちょっとしたことかもしれませんが「反応すること」「興味を示すこと」を習慣にすると、相手が発信しやすい環境作りに寄与できるでしょう。

②-2.自分もとにかく手を動かす

周りの人を動きやすくすることがPMの仕事だとすれば、そのための準備はとても重要だと思っています。例えば、メンバー全員に活用してもらうためのプロジェクト管理ツール(Backlog、Teams上のWiki、カンバン(一種の生産管理方式)、VCS(バーション管理システム)等)をメンテナンスしたり、関係者に説明するための様々なドキュメントを作成したり、方針や行動計画を立てたりとPMのタスクは山積みです。

一方で、メンバーに仕事を振るためだけに存在しているようなPM相当のリーダーをこれまで何度か目にしてきました。しかし、リーダーによる行動が少ない、あるいはリーダーの行動が周囲に認識されていないチームは共通して報連相が少なく、開発スピードも遅かったりします。納期直前で問題が頻発する様子もいくつか目にしました。

口先だけのリーダーは信用されません。私は率先して、自分の行動を通して活発なアイデアが出やすい環境を作れるように心がけています。

②-3 雑談の時間を確保する

リモートで仕事を進めるようになって最も変化したのが、雑談の機会が少なくなったことです。業務連絡や報告だけでは分からないその人の感性や価値観が、プロジェクトに大きな影響を与えることがあります。業務だけの会話が淡々と進むとプロジェクト自体の雰囲気も硬くなり、お互いに牽制し合って自由に発信しにくくなります。

実際に週末の会議でいつもより1時間ほど時間を長くとり、自由参加で雑談会議を取り入れたことがあります。実はプライベートが忙しくてあまり集中できていないとか、もっと違う技術分野に挑戦してみたいなど、普段の業務連絡の中では決してやりとりされることがなかったプロジェクトにとって重要な会話が交わされていました。心理障壁を下げる意味でも、雑談は非常に有効なコミュニケーション手段だと改めて感じました。

③所属組織との信頼関係

③-1 透明性を確保する

どこかの組織に所属し、その組織内でPMを担当する場合は所属組織との信頼関係も重要です。タスクをスムーズにこなすためには、直属の上司だけでなく、営業、PMO、広報、人事、経理など複数の関係部署とのハブになる必要があります。立場や視点が違う人たちと交流する場合、自分たちの役割や目的を理解してもらえないと、論点が合わず会話が思うように進みません。

具体的に、私は普段からドキュメントやコードの保存場所を決めて公開したり、目的や目標を何度も口にして自分の言葉でチームを語れるようにしています。

③-2 いつでも説明できる準備をしておく

チームの行動や実績は常に組織から注目され、評価される状況に置かれています。PMはチームの状況をあまり詳しく知らない関係者から何度も状況説明を求められます。しかも、事実確認だけでなく今後の見通しや継続性の判断なども求められるので、常にチームを最もよく理解している人物である必要があります。

そのため、上述したように目的や目標、判断基準やプロセスをメンバーのいる前で普段から口にするように意識しています。何度も話していると説明がより洗練され、少ない言葉で大局的な情報を伝えられるようになるので、ふとした瞬間に質問されてもスピーディーに説明できます。

③-3 主語を変える

PMはあらゆる側面での成果を求められるので、その都度適切な主語を選択する必要があります。「本当にこのプロジェクトはうまく進んでいるの?」という問いには、自分たちの作業進捗だけでなく、顧客視点であったり、自社の事業性の視点、またメンバーの業務的な成長の視点で語ることも必要です。

在宅勤務が主流になる前は、立ち話やお昼休み等の隙間時間で細かく話せていたものが、リモートが中心になった途端に、あらかじめ決められた時間枠の会議の中でしかこのような会話ができなくなったと感じます。それぞれの主語に合わせて、プロジェクトの価値や成果を自分の中に持っておくことで、決められた短い時間枠の中で簡潔に適切な答えを話せるようになりました。

おわりに

いかがでしたか。プロジェクトのステークホルダーは他にもたくさんいますが、ここではより接触機会が多い関係者との信頼関係構築のテクニックの一部を紹介しました。

プロジェクトに関連するあらゆる外部関係者と円滑にコミュニーションを進めるには信頼関係の構築が不可欠です。オンライン時代によってコミュニケーションのニューノーマルもどんどん更新されていくと思いますが、手段が変わっても、今回で説明したテクニックは活かせるので、ぜひ皆さんも試してみてください。

株式会社パソナテック DX戦略本部 デジタルテクノロジーグループ
高専卒業後、ネットワークエンジニアとして従事。担当領域を増やしたい思いから、独学でプログラミングを学び、プログラミングスクールでカリキュラム開発に従事。その後、ヨガ/ピラティススタジオを運営する企業にて情報システム部門での業務を担当。2018年、AIの可能性に魅力を感じ、パソナテックにAIエンジニアとして入社。現在は、AI/RPA/IoT等のデジタルテクノロジーを活用したお客様の課題解決ソリューションの提案からPoC、開発、運用などを行う。
パソナテック
https://www.pasonatech.co.jp/biz/

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