ITサービス管理とコスト最適化

2009年12月16日(水)
星野 敏彦

HPのIT資産管理

(2)以下では、IT財務管理について、詳しく説明します。

財務を適切に管理するためには、購入して配備した資産を正確に特定、追跡、調整することが不可欠です。同様に、ハードウエアやソフトウエアの相互の関係性を含んだ構成項目を特定して記録報告することで、ITインフラストラクチャとアプリケーションを同時に管理する方法も重要です。これが、IT資産管理です。

IT資産管理がなされない場合、ITのコストが過度に高額になるなど、健全な経営が損なわれるおそれがあります。

IT資産管理ソフトであるHP Asset Manager softwareでは、インポートされたERPのデータや検出されたIT資産のインベントリ情報などのIT資産情報をリポジトリである構成管理システム(HP Universal CMDB)に記録します。これにより、棚卸し作業のコストと時間を削減することができるほか、どの部分の購買コストを削減するべきかが分かり、IT資産の理解が深まります。

HP Asset Manager softwareのユーザー事例を紹介します。

あるメーカー(製造業者)では、サーバー1000台、1万台以上のクライアントPC、30万本ものソフトウエアという多くのIT資産を保有していました。このような大規模な環境では、誰が何を使っているのかをリアルタイムで把握することは困難です。そこで、HPソフトウエア製品を導入しました。

同社では、IT資産を一元管理することによって、属性、財務、設置場所、所有者といったIT資産情報、各部門でのハードウエア導入状況やOSのバージョン、PCのスペックなどが分かるようになりました。さらに、“見える化”によって、「ソフトウエアのライセンス違反がないかどうか」、「ポリシーにしたがって使用されているかどうか」を管理できるようになりました。

管理ツールのコンソリデーション(集約化)

以下では、管理ツールのコンソリデーション(集約化)について詳しく説明します。

管理ツールを集約すると、ハードウエア/ソフトウエアや運用管理スタッフの効率を劇的に向上させることができます。統合すべき運用管理ソフトには、(1)「サービス・デスク」、(2)「イベント/性能管理ソフト」、(3)「品質管理ソフト」の3種類があります。それぞれについて、統合するメリットを以下に示します。

(1)サービス・デスクの統合

ITILを実践する手段の一部として、サービス・デスクの統合は、ソフトウエア/ハードウエアのコスト削減に役立ちます。各部門で使用しているサービス・デスクを統合することで、IT部門が共通のサービス管理情報を共有することになり、顧客サービスも改善することができます。

米King ResearchによるHP顧客への調査によると、サービス・デスクの統合によってソフトウエア・ライセンス費用と保守費用を30~50%節約できたとのことです。

(2)イベントの統合

運用管理者がネットワークやサーバー、システムなどを、それぞれ専用のツールを使って管理している形態は、回転イス式管理(swivel-chair management)と呼ばれるように、決して効率的ではありません。

これらのIT資源の管理を1つの統合コンソールに集約し、重複したイベントを処理することで、運用コストが削減できます。また、イベントの相関機能を組み合わせることで、インシデント/問題管理のコストをさらに減らすことができます。

(3)品質管理の統合

テスト・ツールの標準化や品質保証の手順改善を通じ、品質管理を統合します。これにより、高品質のアプリケーションを本番環境で利用できるようになり、運用コストを削減することができます。

以上で、連載は終わりです。全3回にわたり、運用負荷を低減する最新ソフトウエア技術について紹介しました。これらのすべてを導入することが理想的ですが、現実的には、限られた予算と現実の運用を踏まえたうえで、優先順位が高いものから検討してみてはいかがでしょうか。

日本ヒューレット・パッカード ビジネス・テクノロジ・ソリューションズ事業本部
国内システムインテグレータおよび外資系通信会社でエンジニア、マーケティングを経て、2001年日本ヒューレット・パッカード株式会社入社。2007年、米HPによるOpsware買収に伴い、データセンター自動化製品のマーケティング活動を担当。CISSP。
http://twitter.com/momotoshi/

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