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OSS:2016年の振り返りと2017年への展望

2017年1月6日(金)
吉田 行男
OSS界隈に造詣が深い吉田行男氏が、2016年に起きたOSS業界のトピックの振り返りと、2017年への展望をお届けします。

新年明けましておめでとうございます。日立ソリューションズの吉田です。

今年もよろしくお願いします。

今週は、OSSに関する昨年の振り返りと今年の展望をまとめましたので、ゆっくりとご覧下さい。

人工知能関連ツール、ぞくぞくオープンソース化

Baiduの人工知能研究所、オープンソースの人工知能ソフトウェア「Warp-CTC」をリリース
http://opensource.srad.jp/story/16/01/19/044252/

米Microsoft、ディープラーニングツールキット「CNTK」をオープンソースとして公開
https://osdn.jp/magazine/16/01/26/143000

米Microsoft、オープンソースの機械学習ツールキット「Cognitive Toolkit」(CNTK)バージョン2を発表
https://mag.osdn.jp/16/10/27/160000

2015年の後半から、急激に人工知能関連のツールがOSS化され始めました。2016年もこの流れは止まらず、1月に中国のBaiduが機械学習ソフトウェア「Warp-CTC」をオープンソースとして公開しました。また、同じ1月に米国Microsoft社がディープラーニングツールキットである「CNTK」をオープンソース化しました。その後、このCNTKは「Cognitive Toolkit」と名前を変え、10月に機能追加版が発表されました。このリリースでは、C++ライブラリとしての利用が可能になったほか、Python向けのAPIも提供されました。

アマゾン、ディープラーニングソフト「DSSTNE(デスティニー)」をオープンソースで公開
http://www.sbbit.jp/article/cont1/32118

Facebookの人工知能研究チーム、チャットボット構築用ライブラリをオープンソース化
http://japan.zdnet.com/article/35087704/

Elon Musk氏参画のOpenAI、ゲーム学習する「Universe」をオープンソースで公開
http://news.mynavi.jp/news/2016/12/06/247/

また、これに負けじと5月に米国Amazon社が「DSSTNE」を、8月に米国Facebook社が「DeepMask」を、そして12月には米国OpenAI社が「Universe」をオープンソースとして公開しました。OpenAI社は、Elon Musk氏が共同会長を務める非営利の米国AI研究企業として知られています。この流れは2017年も続くと思いますので、今年も人工知能関連のOSSからは、目を離せない状況になると思います。

OpenStack

OpenStackのPTLに聞いたOpenStackコミュニティの面白さ、難しさ
https://thinkit.co.jp/article/9705

まずコミュニティ関連では、昨年NECアメリカの大道憲一氏と富士通(株)の加藤智之氏の2人が「PTL(Project Team Leader)」に選ばれたほか、NTT(株)ソフトウェアイノベーションセンタの市原裕史氏が「Neutron」のコアデベロッパーに就任しました。このようにコミュニティ活動の中でも日本人が多く活躍するようになってきました。

OpenStack専業ベンダーのミランティスが日本法人を設立
http://ascii.jp/elem/000/001/189/1189126/

NTT Comとミランティス、OpenStackベースのマネージドプライベートクラウド提供で協業
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1026052.html

また、OpenStackを提供するディストリビュータにも少し動きがありました。7月に米国Mirantis社が、(株)エーピーコミュニケーションズとのジョイントベンチャーとして、ミランティス・ジャパン(株)を設立しました。その後、10月にミランティス・ジャパンは、NTTコミュニケーションズ(株)との協業により、OpenStack環境のマネージドプライベートクラウドをサービスとして提供する「Managed Private OpenStack as a Service」などのグローバル展開をめざすと発表しました。

ヤフー、米国データセンターのOpenStack基盤に「Kubernetes」を導入
http://news.mynavi.jp/news/2016/11/11/127/

一方、2012年からすでにOpenStackを導入していたヤフー(株)は、11月に米国Solinea社と共同で、ヤフーの米国法人YJ Americaの米国データセンターにおけるOpenStack基盤に、「kubernetes」を導入したと発表しました。このように以前から導入していた企業もその適用を拡大させる施策を採るなど、いよいよ利用が本格化してきたといえると思います。

Cloud Foundry

SAP HANA SPS11は、Cloud Foundry採用でアプリケーション環境を一新
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1512/11/news055.html

同じように、クラウド領域でPaaS基盤を構築するツールである「Cloud Foundry」は、あまり目立っていませんでしたが、2015年の暮れ、ドイツのSAP社が「SAP HANA SPS11」のアプリケーション環境を「Cloud Foundry」で再構築したと発表しました。従来からCloud Foundryの採用を公表していた米国IBM社、NTTコミュニケーションズ(株)、富士通(株)、米国General Electric社、スイスSwisscom社、中国Huawei社などにSAPが加わり、利用の広がりを感じました。

Pivotalにフォードとマイクロソフトが出資
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1605/09/news050.html

5月には、Cloud Foundryの開発元である米国Pivotal社に、米国Ford社と米国Microsoft社が出資することが明らかになりました。Fordは、同社のEcoBoostエンジンや車載情報システムなどの開発で、Pivotalの開発メソドロジやClound Foundryを活用しているようです。またMicrosoftの出資の目的は、Microsoft Azure上で、Pivotal Cloud Foundryを使ってJavaアプリケーションを動かすための最良のプラットフォームにすることにあるようです。また10月にはGoogleが「Google Cloud」でCloud Foundryをサポートすることを明らかにしました。

SUSE、HPEの「OpenStack」「Cloud Foundry」関連資産を買収へ
http://japan.zdnet.com/article/35093015/

Cloud Foundry Welcomes SUSE as Platinum Member
https://www.linuxfoundation.org/announcements/cloud-foundry-welcomes-suse-as-platinum-member

11月30日には、米国HPE社がOpenStackとCloud Foundry関連の人材を含む資産を独SUSE社に売却するというニュースに続いて、そのSUSEがCloud Foundry Foundationのプラチナメンバーになるというニュースが流れました。これまで、PaaS基盤を製品ポートフォリオに持っていなかったSUSEとしては、大きな意味のある買収となりました。今後、この領域での動きに大いに注目する必要があります。

Spark

NECがSpark上で使える分散型の機械学習技術を開発、約110倍に高速化
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/052601514/

IBM、「Apach Spark」向け開発環境を発表
http://japan.zdnet.com/article/35083914/

一昨年に続いて、昨年2016年もSparkが輝いた年になりました。5月にはNECが、データに混在する複数の規則性を約110倍高速に発見する技術を開発したと発表しました。またIBMは、Spark開発環境「Data Science Experience」を発表しました。「Data Science Experience」は、クラウドをベースにしたSpark向け開発環境で、これにより開発者は「R」を使ってコードを記述できるようになりました。

Apache Spark 2.0正式版がリリース
http://www.publickey1.jp/blog/16/apache_spark_20ansi_sql10.html

しかしながら、昨年の本命は「Spark 2.0」の正式版の登場でしょう。Spark 2.0の最注目の新機能は、新しいSQLパーサを採用したことによるANSI SQL(SQL 2003)への対応です。ビッグデータのベンチマークのひとつであるTPC-DSの99種類のクエリが、そのまま実行可能になります。また、パフォーマンスも大きく改善されています。

ブロックチェーン

昨年の初めから少しずつですが、盛り上がっている話題に「ブロックチェーン」があります。

Linux Foundationが、ブロックチェーン技術推進コミュニティ「Hyperledger Project」のメンバーを発表
http://it.impressbm.co.jp/articles/-/13270

The Linux Foundationは2月に、ブロックチェーン技術の標準化を行う「Hyperledger Project」を設立しました。このプロジェクトは、既存のブロックチェーン技術の問題点(エンタープライズでの利用を想定していないため、スループットに制限があり、トランザクション処理速度が遅い、プライバシー保護に弱いなど)の解決を目的として活動しています。

アララ、実証実験の成果を受け、ブロックチェーン技術mijinの電子マネー分野への適用を表明
http://jp.techcrunch.com/2016/10/11/arara_adopts_blockchain/

日本では、10月に電子マネーサービスの運営などを手がけるアララが、アララの出資先であるテックビューロが開発するブロックチェーンソフト「mijin」を使って独自のトークン「アララコイン」を発行。電子マネーに多い「多対1」の取り引きを中心に、耐障害試験や負荷試験を実施しました。その結果、「1分間に3,000以上の取り引きが可能で、データの改ざんが困難かつデータ消失を防止する仕組みに実用性、容易性が高いことが証明された」と発表しました。

フィンテック企業の米国R3 CEV社、ブロックチェーン技術「Corda」をオープンソース化
https://mag.osdn.jp/16/12/02/160000

また11月30日には、金融機関が参加するコンソーシアムが開発したブロックチェーン技術「Corda」がオープンソース化され、Hyperledger Projectにコードが寄贈されました。

2017年にはさらにこの動きが加速され、目を離せない展開になっていくことが予想されます。

マイクロソフト、引き続き『オープンソース化』を推進。

「Xamarin SDK」をオープンソース化
https://mag.osdn.jp/16/04/28/163000

C言語を拡張した「Checked C」をオープンソース化
http://developers.srad.jp/story/16/06/18/2156202/

「PowerShell」をオープンソース化
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1015723.html

オープンソースの全文検索システム「BitFunnel」
https://osdn.jp/magazine/16/09/08/161500-2

機械学習ツールキット「Cognitive Toolkit」(CNTK)バージョン2
https://mag.osdn.jp/16/10/27/160000

「Azure Container Service(ACS)」のエンジン
https://mag.osdn.jp/16/11/08/160000

Microsoftは、引き続きオープンソースに対してコミットしています。昨年オープンソースで公開されたものだけでも、上記のように多岐にわたります。

プラチナメンバーとしてThe Linux Foundationへ加盟
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1030437.html

Microsoftは、単にAzure上でLinuxやOSSを活用したプラットフォームを提供するだけではなく、それ以外のOSSのコミュニティにも積極的に参画し、貢献しています。Microsoft関連の最大のトピックは、11月にThe Linux Foundationにプラチナメンバーとして加盟したことかもしれません。

編集後記

今年の箱根駅伝は青山学院大学が3連覇を達成し、出雲全日本大学選抜駅伝、全日本大学駅伝と合わせて「大学駅伝3冠」も同時に達成しました。途中体調不良の選手もいましたが、総合力で勝利を勝ち取った形になりました。それは、原監督のチーム作りの勝利といえるかもしれません。

株式会社日立ソリューションズ
2000年頃より、Linuxビジネスの企画を始め、その後、オープンソース全体の盛り上がりにより、Linuxだけではなく、オープンソース全般の活用を目指したビジネスを推進している。
現在の関心領域は、OpenStackを始めとするクラウド基盤、ビッグデータの処理基盤であるHadoop周辺及びエンタープライズでのオープンソースの活用方法など。
 
株式会社日立ソリューションズ 技術開発本部
オープンソース技術開発センタ 主管技師

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