自動車にも利用が広がるLinuxとオープンソース、ほか

2017年1月13日(金)
吉田 行男
OSS界隈に造詣が深い吉田行男氏が、この一週間に起きたOSS業界の注目すべきトピックをセレクトして、お届けします。

こんにちは、日立ソリューションズの吉田です。

1月5日から8日まで、米国ラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)は、まるでモーターショーかと思わせるほど自動車関連の展示が多かったようです。その中からいくつかOSSに関するトピックを取り上げましたので、ゆっくりとご覧下さい。

自動車にも利用が広がるLinuxとオープンソース

大手自動車メーカーらが参加するプロジェクトAutomotive Grade Linux(AGL)は、米国で開催されたCESで1月5日、独Mercedes-Benz社の親会社である独Daimler社が同プロジェクトに参加したと発表しました。これまでAGLにはトヨタ自動車(株)、マツダ(株)、スズキ(株)、本田技研工業(株)、日産自動車(株)、米国Ford社などが参加しており、Daimlerも新たにメンバーとして加わりました。

インフォテインメントシステムや自動運転機能を持つスマートカーが進展するに従って、自動車メーカーはソフトウェア企業としての性格も持つようになってきています。AGLのメンバーは、オープンソース化したソフトウェアスタックを共有すれば、コードの再利用性が高まり、開発プロセスを効率化できると考えています。同時に、独立系ソフトウェア企業は、自動車のモデルごとに異なるバージョンのシステムを構築する必要がなくなります。

(参照記事:http://japan.zdnet.com/svc/nls/?id=35094631

トヨタやフォードなどが標準化組織、自動車とスマホをオープンソース技術で連携

トヨタ自動車(株)と米国Ford社は1月4日、車載端末からスマートフォンのアプリを安全に操作する技術の標準化組織「スマートデバイスリンクコンソーシアム」を設立しました。オープンソースで開発を進めて自動車業界共通の仕様とすることで、車載ソフトの開発を容易にすることを狙っています。「スマートデバイスリンク(SDL)」は、車載器とスマートフォンを連携させる技術で、スマホ内にある地図や音楽、メールといったアプリを、自動車の音声認識機能やカーナビ画面、ハンドルボタンから操作できるようにします。運転中に直接スマホを操作しなくても、アプリを利用できるので、安全性を保ったまま手軽にコネクテッドサービスを実現できます。トヨタは2018年にもSDLを用いた車載システムを商用化する予定です。SDLは、2013年にFordがスマホ連携システムである「アップリンク(AppLink)」システムに採用して以来、現在では世界で500万台以上の車両で利用できます。

(参照記事:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/010500010/

Tesla、AppleのSwift責任者を引き抜き、自動運転ソフト担当幹部に指名

米国Tesla社は1月10日、米国Apple社を退社するプログラミング言語「Swift」の責任者であるクリス・ラトナー氏を、自動運転ソフト担当の副社長に迎えると発表しました。ラトナー氏は同日、「Swiftのプロジェクトリードを退く」とSwiftコミュニティーのメーリングリストで発表しました。その際同氏は「新たな分野を開拓する目的」で退社するとしていました。

ラトナー氏はTeslaで、ジンナー・ホセイン氏の後継として、自動運転エンジニアリングチームを率いる予定です。また、ホセイン氏はこれまで、イーロン・マスクCEOが経営する宇宙開発企業SpaceX社のソフトウェア担当副社長と兼任でしたが、今後はSpaceXに専念することになります。

(参照記事:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1701/11/news058.html

グーグル、PythonのコードをGo言語に変換する「Grumpy」を公開

米国Google社は1月4日、標準的なPythonインタープリタの代替となるアプローチとして、PythonコードをGo言語にトランスパイル(変換)する「Grumpy」というプロジェクトを発表しました。「Grumpy」は、コンカレント(並行)ワークロードにおいて同社が抱えているパフォーマンス上の不満を解消するために生み出されたものです。「Grumpy」はApacheライセンスの下で公開されており、PythonのソースコードをGoのソースコードに変換し、ネイティブコードとして実行できるようにコンパイルします。「Grumpy」は、純粋なPythonコードが使用するランタイムとの互換性に軸足を置いて設計されています。

(参照記事:http://japan.zdnet.com/svc/nls/?id=35094636

スタッフ解雇を理由にFSFと対立していた「Libreboot」、GNU Projectから正式に離脱

フリーソフトウェアを推進する非営利団体Free Software Foundation(FSF)のRichard Stallman氏は1月5日、フリーのBIOSファームウェアをめざすプロジェクト「GNU Libreboot」がGNUプロジェクトを去ることを正式に認めました。2016年秋にLibreboot開発チームが離脱を発表して以来、4ヶ月での正式発表となりました。FSFは2014年にLibrebootの支援を明らかにしましたが、Libreboot開発チームはFSFがトランスジェンダーのスタッフを解雇したことを理由に2016年9月中旬、GNU Projectというタイトルを放棄し、離脱する意思を表明しました。FSFもその翌日「差別が理由で従業員を解雇したのではない」という声明文を発表しましたが、これに対しLibreboot側は別の元従業員の言葉などを引用して、否定していました。

(参照記事:https://mag.osdn.jp/17/01/06/160000

編集後記

今年はインフルエンザが例年より早く流行しているようです。流行するための条件は、「絶対湿度11g/m3以下」ということだそうで、予防するには、加湿をすることが一番大事だそうです。みなさんもインフルエンザにご注意ください。

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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