PR
この連載が書籍になりました!『これからのSIerの話をしよう エンジニアの働き方改革

情報システム化を一気に進める

2017年2月2日(木)
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)

はじめに

みなさん、こんにちは。前回は「生産性向上」というテーマで、価値を高めコストを下げる取り組みについて取り上げました。今回は”紺屋の白袴”からの脱却という観点で、自社の情報システム化について真剣に考えてみることにします。

「会社の改革のためのその8」―自ら情報システム化の先端モデルとなる

SIerの”紺屋の白袴”

SIerの仕事は、プロとしてお客様の情報システム化を支援することです。しかし、そんなプロなのに自社の情報システムは後回しにされ、お粗末な状態というケースが非常に多いのが実態です。

なぜ、このような”紺屋の白袴”になっているのでしょうか。その理由の1つは「合理化・効率化のために先行投資をする覚悟」で述べたように、SIerが”働いた分だけお金をもらう”という仕組みに慣れきって先行投資をする意識が低いことにあります。

そしてもう1つは、なまじっかプロ(と思っている)なので、いつでも自分たちで作れると考えており、その割には優秀な人を外の仕事に割り振っているからです。かくして必要な情報システム化が先送りされ、合間合間に内作したシステムがつぎはぎしたようになっているのです。

お客様には「企業の競争力を高めるために情報化しましょう」などと言っているくせに、自社の情報化はさっぱり。まずは、そんな状態であるということを自己認識することがスタートとなります。

IT投資率

数値で確認してみましょう。一般社団法人 日本情報システム・ユーザー会(JUAS)のプレスリリース「企業IT動向調査2016(IT予算の速報値)を発表」の図4のグラフによると、2015年度の売上高に占めるIT予算の割合は全業種平均(トリム平均)で0.75%、SIerが属するサービス業で0.84%となっています。つまり、売上高が100億円とするとIT投資予算は年間8400万円ということになります。

さて、上記を踏まえた上で自社の「売上高に対するIT投資の割合」を比較してみましょう。実は、こう言うとちょっと困った顔をする人がいます。以前に「多重請負構造とKPI管理の導入」で述べたように、SIerの多くはKPI管理がおろそかなため、IT投資にいくらかけているかをすぐに答えられないのです。

もし、きちんと数字が取れていないようでしたら、これを機会に自社のIT投資金額と投資率を調べてみてください。もしその数値が平均値より低いようであれば、もっとITに投資しても良いはずです。今の情報システム化の状況がイマイチであればあるほど、投資額を大きくして追いつく必要があります。

IT化に対する取り組み状況

次は、IT化の取り組み状況を簡単なチェックで確認してみましょう。次の7つのチェック項目のうちいくつ当てはまるでしょうか。3つしかチェックが付かないなら”問題あり”、4つなら”もう少し頑張ろう”、5つなら”まずまず”、というところでしょうか。

□ 情報システム部門がある
□ 最高情報責任者(CIO:Chief Information Officer)に相当する人がいる
□ 今期の情報化計画書を作成している
□ 情報化計画に基づいてIT投資予算を確保している
□ 情報化計画の実施状況をトラッキングしている
□ 情報化投資に対する効果測定を行っている
□ 中長期の情報化計画書を作成している

自社の情報システム化を推し進めるためには、

①情報システム部門を置き、責任者を定める
②計画を立て、予算を取る
③計画通り実施されているかフォローし、効果も測定する
④単年度だけでなく、長期的な情報システム化戦略を立てる

という取り組みが必要です。チェックの付かない項目が情報システム化の課題になるので、取り組みを強化することを検討してみてください。

<<コラム>>CIOは育てるもの

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)が従業員数300人以上の日米企業を対象に調査した「ITを活用した経営に対する日米企業の相違分析」によると、米国では99%もの会社にCIOがいるのに対し、日本では半数に満たないという調査結果になっています(P12)。

さらに経済産業省の調査報告書「平成26年度我が国情報経済社会における基盤整備」では、対象企業を総従業者50人以上に広げていることもありCIO設置率は29.5%と3割を切っており、CIO専任者に限るとわずか3.3%しか設置していません(P16)。

「企業の成長には情報システムが最も重要である」。米国の経営者はこう考えてCIOを設置して「デジタル革命」に対応している一方で、日本企業は昔ながらのバックオフィス業務中心の考え方から脱却できていません。

前向きな情報システム化を推進するために、まずはCIOを設置しなければなりません。「適任者がいない」、そんな声が聞こえてきそうですね。確かにITに詳しく経営センスも併せ持つような人材は滅多にいないかも知れません。でも、そんな人物が都合よく目の前に現れてくれるのを待っていても「百年河清を待つ」です。CIOは育てるもの、そう考えてください。

育てるものと割り切って、もう一度頭の中をサーチすると結構、適任者の顔が浮かぶものです。え、「彼らは仕事から外せない」ですって? 確かに思い浮かぶような人たちはデキる人なので、重要な仕事を任されていることでしょう。でも、だからこそそういう人物をCIO候補に引っこ抜くのです。もし、ここまで言ってもその覚悟と決断が持てないとしたら、きっとまだCIOが企業の成長に重要なファクターであると心の底から信じていないからです。

何にIT投資するか

さて、ITに積極投資する覚悟ができ、そのための体制も整えたなら、いよいよ“何に投資すべきか”を考えなければなりません。最適な情報化計画を立てるには、よそはどうしているのかを知るのも1つの方法です。

先ほど紹介したJUASのプレスリリースから1年後に発表された「企業IT動向調査2017(IT予算の速報値)を発表」の図4に企業がIT投資で何をしたいかのアンケート結果があります。これによると、1位は「業務プロセスの効率化(省力化、業務コスト削減)」で、以下「迅速な業績把握、情報把握(リアルタイム経営)」「営業力の強化」と続きます。

グラフ:IT投資で解決したい中期的な経営課題(図4)
出典:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー会(JUAS)のプレスリリース「企業IT動向調査2017(IT予算の速報値)を発表」(2017年1月12日)

ここで掲げられた経営課題1つひとつを自社に当てはめてみてください。上記の課題であればERP導入、BI強化、SFA導入といったものが対策となっていくわけです。そうやって抽出した課題と対策のうち、優先順位の高いものを今年度の取り組みとします。積み残したものも次年度以降に実施時期を決めておきます。どれをいつ頃実施するかをスケジュール化した中長期的な情報システム化戦略を作成するのです。

また、コラムで紹介したJEITAの資料にも「ITがこれまでもたらした効果」「今後ITに期待する効果」の日米比較があります(P8、P9)。日本企業が「業務効率化」という従来型投資から発想を切り替えられないのに対し、米国企業が「製品/サービス提供迅速化」や「社外情報提供効率化」など攻めのIT投資に重きを置いている様子がうかがえて参考になります。

SI社の情報システム化戦略における投資対象

参考として、SI社の「情報システム化戦略」にあるIT投資対象の例を下表に示します。実物は製品名なども入ったもっと具体的な内容ですが、ここでは一般的なソリューション名で表しています。3年間の中期計画になっていて、テーマごとに実施スケジュールが設定されています。

表:IT投資対象と具体的ソリューション(SI社の例)

情報システム化の計画を立てる際には、各部署へのアンケートやヒアリングでテーマやニーズを洗い出すのが効果的です。ただし、そのようなボトムアップ型で拾い上げたニーズは業務改善や効率アップなど従来型のバックオフィス業務系が中心になるので、CIOがデジタル革命時代を見据えた攻めのIT戦略をプランニングして、総合的に優先順位を決めていくことになります。

今回は、SIer自身の情報システム化について解説しました。“デジタル革命”という新しい時代を迎え、これを脅威ではなく絶好の機会にしなければなりません。自らが最先端モデル企業となり、そのノウハウと経験でユーザー企業のデジタル改革をリードする。紺屋の白袴から脱却した勢いで、一気にそこまで情報システム化を進めてみましょう。

著者
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)
株式会社システムインテグレータ

東芝、SCSKを経て1995年に株式会社システムインテグレータを設立し、現在、代表取締役社長。2006年東証マザーズ、2014年東証第一部上場。

前職で日本最初のERP「ProActive」を作った後に独立し、日本初のECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」を開発・リリース。日本初のWebベースのERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発し、統合型プロジェクト管理システム「SI Object Browser PM」、アプリケーション設計のCADツール「SI Object Browser Designer」など、独創的なアイデアの製品を次々とリリース。最近は、AIを利用したサービスに取り組んでいる。

主な著書に「Oracle8入門」シリーズや「SQL Server7.0徹底入門」、「実践SQL」などのRDBMS系、「グラス片手にデータベース設計入門」シリーズや「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識」などの業務知識系、「実践!プロジェクト管理入門」シリーズ、「統合型プロジェクト管理のススメ」などのプロジェクト管理系、最近ではThink ITの連載をまとめた「これからのSIerの話をしよう」を刊行。

「日本のITの近代化」と「日本のITを世界に」の2つのテーマをライフワークに掲げている。

連載バックナンバー

Think IT会員サービス無料登録受付中

Think ITでは、より付加価値の高いコンテンツを会員サービスとして提供しています。会員登録を済ませてThink ITのWebサイトにログインすることでさまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think IT会員サービスの概要とメリットをチェック

他にもこの記事が読まれています