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この連載が書籍になりました!『これからのSIerの話をしよう エンジニアの働き方改革

社内に閉じこもらず、積極的に外へ出よう

2017年4月20日(木)
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)

はじめに

みなさん、こんにちは。前回は「プロ意識を持って自らの成長プランを描く」というテーマで5年後、10年後のキャリアパスを描き、長期学習計画と日々の学習計画を立てることをお薦めしました。今回は、自分を成長させ続けるためのモチベーション維持の秘策を紹介します。SIerで働くことがますます楽しくなりますよ。

「個人の実力アップのためのその2」―1つ以上のコミュニティに参加する

MIJSの合同研修に見るコミュニティの効果

先ごろ、MIJS新人合同研修春の陣が終わりました。MIJSとはMade in Japan Software & Serviceの略で、ソフトウェア会社が集結して海外展開および国内ビジネス基盤の強化を行っている団体です。

2006年にMIJSコンソーシアムが創設されてから10年間非常に濃い活動を続けており、その取り組みの1つが新人合同研修です。これは、各社の新人教育を合同で行うもので、年々参加者が増えて今年は13社62人の新人が集まりました。4月入社の翌日から1週間社会人としての基礎教育を行ったのですが、夏と秋にもプレゼンやロジカルシンキングなどのフォローアップ研修があります。

もともとは、「各社で研修を行うより合同で行った方が効率も良い」ということでスタートしました。でも、実際にやってみるとそれ以上に効果面で成果が大きく、各社の新人が入り混じってグループワークする中で企業の枠を超えた同期意識と競争心が、新人を一回りも二回りも大きく成長させてくれています。

もう1つ、予想外の成果がありました。それは人事担当者もぐんぐん成長するということです。合同研修に向けて各社の人事担当が集まって議論する中で学ぶことが多く、さらにお互いの会社の人事制度や取り組みの情報交換が活発に行われています。その後も、なにか知りたいことがあれば気軽に聞き合える人事ネットワークができているのです。

さらに、私自身も企業の経営者としてMIJSにとても良い影響を受けています。MIJS各社の経営者と一緒にさまざまな取り組みを行う中で、個性豊かな各社のトップに多くの刺激や感銘を受け続けてきました。当社が東証マザーズ上場、一部上場を果たせたのも、MIJSに積極的に参加したからだと思っています。

コミュニティは刺激

実は、IT業界にはMIJSのようなコンソーシアムやコミュティが豊富にあります。世界的に見ても日本はITコミュニティや勉強会が盛んなので、ぜひSIerのみなさんにも自分が興味のあるコミュニティに参加して欲しいと思います。今の時代、会社の中に閉じこもっているよりも、一歩外に出て社外の人たちと交流する方がはるかに自身の成長につながります。

なぜ、外に出ることが大事なのでしょうか。もちろん「社内では知りえない知識や情報を得られる」という利点は大きいですが、知識や情報はインターネットからいくらでも得られる時代なので、それだけでは理由になりません。実際のところ、わざわざ出かけてコミュニティに参加することには、次のようなメリットがあるのです。

コミュニティ参加の意義
①刺激を受けてモチベーションが高まる
②会社で得られない最新技術やトレンドにインパクトを受ける
③社外の人脈ができる(財産にもなり、転職のチャンスも広がる)

前回で「自分の実力アップのために学習計画を立てよう」とお話ししました。でも、人間のやる気はなかなか持続しないものです。そこで個人学習だけでなく、外の世界と触れ合うのです。外部のコミュニティに参加して、いろいろな人たちががんばっている姿勢を目の当たりにすると、「よし、自分もがんばるぞ」という気持ちになります。また、自分でネット検索するのに比べて、最新の技術動向が次々と押し寄せてきます。そのたびに「うわぁ、もっと勉強しなきゃ!」となるのです。お互いがそんな良い刺激を与えあう、それがコミュニティの良いところです。

ここで大事なのが”積極性”と”貢献の気持ち”です。誰かがお膳立てした企画に参加して果実をいただくだけの立場ではなく、自らも準備や運営を手伝うように心がけてください。オープンソース系のコミュニティなら、自分も開発に加わるという気持ちで参加しましょう。積極的に関われば関わるほど得られる成果も大きいですし、そもそもコミュニティの良さはお互いが協力し合うところにあります。

最近のコミュニティはオンラインで共同作業ができますし、SNSでコミュニケーションを取っているので、地方にいても参加できます。開発系、運用系、プラットホーム系など、さまざまなコミュニティがたくさんあるので、ぜひ、あれこれ検索して自分が興味の持てそうなものに参加してみましょう。

セミナーや展示会に参加する

「コミュニティはちょっと重いなぁ」なんて腰が引けている人は、セミナーや展示会でも良いので外部のイベントに参加してみてください。とにかく外に出る機会を増やすことが肝心なのです。そして、どうせ参加するなら最大限の成果を持ち帰りたいですよね。そのためには次のような原則を心がけると良いでしょう。

セミナーや展示会の原則
①前列に座る(展示会はデモを見る)
②必ず質問をする
③家に帰ってから振り返る
④まとめた内容を共有する

①前列に座る
大学時代にある授業で教授が「座る席が遠いと授業内容がエクスポーネンシャルに減衰する」と言った言葉を今でも覚えています。そのときは、そう言われても後ろ側に座り続けたダメ学生だったのですが、社会人になってからふとこの言葉を思い出し、「出るからには前に座る」ことを俺流ルールに定めて変身しました。

学生から社会人になると、一番大切なものが金よりも時間に変わります。せっかく貴重な時間を使ってセミナーに参加したのですから、その時間を無駄にしたくはありません。後ろの方ではスライドが見にくいですし、講師の話が減衰して心に入って来にくいのです。

②必ず質問する
日本人の質問能力が低い理由は人目を気にするからです。人前で変な質問をして恥をかくのが怖いため、よほど気の利いた(自信のある)質問か、よほど訊きたい質問でない限り手を挙げられません。そのため、誰かが質問した後に質問する、終わった後で講師のところへ行って個別に質問する、といった光景がよく見られます。

でも最近、私は「恥ずかしいからだけでなく、そもそも質問が浮かばないのかな」とも思い始めました。それが証拠に、講師が当てても「別にありません」と応える人がたくさんいます。もしかすると、問題意識を持たずにただ漫然と聞いていたのかも知れません。

私が若い頃やっていたのは、参加するときに「今日は必ず質問する!」と決めて臨むことです。そうすると聴き方がまるで違います。講師の話す内容を理解しようと真剣になり、質問したいことが山ほど出てきます。そして、実際に質問することでよりくっきりと海馬に記憶され、有意義なセミナーにできるのです。

③家に帰ってから振り返る
「学習には予習・復習が大切」。そう教えられて学生時代は真面目に勉強したのに、社会人になってからおざなりになっていませんか。実際、セミナーや展示会でたくさん資料をもらっても、家に帰って振り返ることなく積読(つんどく)状態のままということが多いと思います。

アジャイル開発でもレトロスペクティブ(振り返り)がとても重要です。せっかくいいセミナーで刺激や感銘を受けたのに、それっきりにしてしまえばSNSのタイムラインのようにあっという間に流れ去ってしまいます。家に帰ったらすぐに資料を取り出し、要点をまとめてみましょう。

要点をまとめるのは、ノートでも、手帳でも、Evernoteやリマインダーでも良いでしょう。常に「これにまとめる」という一品(ネタ帳)を決めている人は強いです。できれば予習もしてセミナーに臨みたいところですが、難しいようなら復習だけでもやってみてください。

④まとめた内容を共有する
まとめた内容は会社で共有しましょう。自分に役立つものは会社の人たちにも必ず役立ちますし、共有することで周りからもコミュニティ参加への理解が得られます。「お、こいつは頑張っているな」って思われたら好都合です。そして「教えることは学ぶこと」という言葉があるように、ただ自分でまとめただけよりも、それを他人と共有することで理解が深まる効果もあります。

図:セミナーの原則

<<コラム>>異業種交流会より同業種のコミュニティ

世間では「異業種交流会」というものも活発に行われています。同業種の集まりと比べて、思いもよらない発想や技術に触れられるということで、同業種よりも異業種の方が良いという主旨なのでしょう。かくいう私も起業した際に地場の異業種交流会で見聞を広めようとしたことがあります。

でも、今の私はIT企業なら異業種より同業種のコミュニティの方が得られるものも大きいと思っています。IT業界は技術革新が激しいため同業種でも十分に新しい発想や技術と出会えますし、何よりも役に立つ”持ち帰り”が大きいです。人脈作りの面でも異業種が単なる飲み友達を作る感じになりやすいのに対し、同業種は有意義なビジネスネットワークを築くことができます。

友達作りという目的ならば異業種も良いでしょう。でも、自分の実力アップや役に立つ人脈作りという明確な目的を持って参加するなら、同業種のコミュニティをお勧めします。

「会社の無理解上等!」の精神で

当社は毎年の目標管理で全社共通の目標を1つ掲げています。どんな目標にするかは社長の私が決めているのですが、今年は下記のように「外に出ることの推奨」としました。

【全社目標】社外に目を向け、自身を研鑽する
会社の中だけで満足せず、積極的に社外と関わり幅広い視野と知識を持つ
■自分はどのように社外のコミュニティやイベントに積極的に参加するか
■社外との交流を深めることにより、自身をどのように成長させるか
■Takeだけでなく、社外(社会)に対して何か貢献できないか

会社によっては「副業の薦め」を掲げていることもありますが、それも同じような目的だと思います。また、前回で解説した「転職の薦め」も、とどのつまりは新しい刺激を受け、幅広い視野を持つためであり、同じ方向の手段の1つと言えます。

一方で、「コミュニティに参加したいけど、会社の理解がない」という声もよく聞きます。確かに「社員の定着率をアップするための具体策を講じる」でも解説した通り、常駐・派遣型の企業の本音は「社員の稼働率は高ければ高いほど良い」「できれば有給休暇もあまり取らないで欲しい」「残業もたくさんやって欲しい」というものです。そのため、コミュニティやセミナーへの参加に理解がないことも多く、そういう活動をすると[転職されてしまうのでは]と嫌な顔をする職場もあります(当たってはいますが)。

でも、これをコミュニティに参加しない(できない)理由にはしないでください。「そんな会社は辞めてしまえ」などと子供じみたことは言いません。会社だって社員の成長を願っていますし、本当に成長すれば喜んでくれます。

「会社の無理解上等!」とつぶやいて、情熱を持ってコミュニティ活動にやれば良いのです。実際、そういう人はたくさんいます。ロミオとジュリエットのように、恋愛だって障害が大きければ大きいほど燃え上がります(笑)。コミュニティの多くは休日や平日の夜に活動していますし、前述のようにリモートでも参加できる時代です。前回、「忙しくて時間がない」という言葉を封印しましたが、「会社の理解がなくてできない」という言葉もまた封印しましょう。

「自分への投資」という覚悟

有休を使って行きたいセミナーに参加する、自費で有料セミナーに参加する。すべて「自分への投資」という覚悟があれば苦になりません。むしろ、会社でお膳立てしてくれるより、身銭を切っている分だけ真剣に学べて、深い感銘を得られます。

SIerのみなさんが、セミナーで前のほうに座ったり、手を挙げて質問したりするのが苦手な人種だってことは知っています。そんなふうに目立たず、「縁の下の力持ち」のような仕事が好きな人もたくさんいます。急に「積極的な人間に変われ」と言われても、自分はひっそりとした生き方が性に合っていると変わらない人が多いことでしょう。

でも、日本のIT業界を作っていくのは、エンジニア一人ひとりです。コミュニティ活動を通じて、日本のIT業界で働く人たちがお互いに良い刺激を与えあって、業界全体を盛り上げて行ければと祈っています。

著者
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)
株式会社システムインテグレータ

東芝、SCSKを経て1995年に株式会社システムインテグレータを設立し、現在、代表取締役社長。2006年東証マザーズ、2014年東証第一部上場。

前職で日本最初のERP「ProActive」を作った後に独立し、日本初のECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」を開発・リリース。日本初のWebベースのERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発し、統合型プロジェクト管理システム「SI Object Browser PM」、アプリケーション設計のCADツール「SI Object Browser Designer」など、独創的なアイデアの製品を次々とリリース。

主な著書に「Oracle8入門」シリーズや「SQL Server7.0徹底入門」、「実践SQL」などのRDBMS系、「グラス片手にデータベース設計入門」シリーズや「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識」などの業務知識系、「実践!プロジェクト管理入門」シリーズ、「統合型プロジェクト管理のススメ」などのプロジェクト管理系、ほか多数。

「日本のITの近代化」と「日本のITを世界に」の2つのテーマをライフワークに掲げている。

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