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農業IoTはどのように食料廃棄物問題を解決するのか

2017年2月3日(金)
ReadWrite Japan

農学者や昆虫学者を抱える技術系スタートアップ企業に出会うことはそれほど多くはないだろう。

IoTが素晴らしいことの1つに、技術を使ってこれまで何百年も業界が苦しんできた問題を解決できることが挙げられる。たとえば、農業における「食糧廃棄物」の問題だ。

国連食糧農業機関(FAO)のデータによると、農場から店舗、そして食卓に登るまでのプロセスで、年間およそ1兆ドルの作物が収穫後に無駄になっているという。ヨーロッパなど技術的に進んでいる地域でさえ、こういった無駄は10%以上にのぼり、アフリカや工業化が進んでいるアジアなどの途上国ではこの割合は高くなる。これら廃棄が起こるのは、原材料として保存している時や、加工時、輸送時などで起こる。

この課題にIoT技術で立ち向かうのが、Centaur Analytics社だ。農作物の保存状態をリアルタイムで監視、保護をおこなうIoT技術を一式そろえた会社である。かれらは貯蔵品の品質と安全性を保つためのIoTソリューションの開発と営業をおこなっている。その目標は収穫後のロスを減らし、農場から食卓へ上がるまでの無駄をなくすことだ。

Centaur Analyticsの共同設立社・最高経営責任者(CEO)のソティリス・バンタス博士と話をする機会があった。彼は自分たちの役割について次のように説明する。

「世界中で生産量の約1/3が無駄になっており、アフリカなどの途上国では虫害などでより多くの被害を出している。開発国では17%が捨てられるか、家畜の餌やバイオ燃料になっている。我々は農学者や昆虫学者など各分野の専門家とともに、監視センサーやソフトウェア分析などによるソリューションを考えている。」

作物貯蔵にどんな問題があるのか

作物貯蔵のプロセスはトリッキーだ。ほとんどの作物はサイロのような金属製のコンテナに大量に貯蔵される。その状態は湿度や温度、虫害に左右されやすい。

こういった課題に対し、これまでは農家が直接出向いて確認をおこなっていた。科学的と言えるものではなく、虫害は特に大きな問題であった。

虫に作物を食い荒らされるだけでなく、貯蔵庫の湿度が上がることでさらに被害は広がる。典型的な処置としては、ホスフィンなどの燻蒸剤の使用で、数日から1週間使用されることになるとバンタスは説明する。

「燻蒸剤はタバコから花、穀物から果物などあらゆる類の作物に使われますがその使用はモニタリングされていない。」

燻蒸剤の使用により問題は解決できるが、もしコンテナの温度が低すぎたり投与量を誤ったり、適用時間が短すぎたりした場合、虫は耐性を得て薬が効かなくなる可能性があるとバンタスは言う。彼らは多くの農家で投与量が足りていなかったり投与期間を記録せずに燻蒸剤を使用していることを明らかにした。

Centaur社は、コンテナ内の作物の状況をモニターする商用ワイヤレスセンサーを開発した。既出のセンサーの多くが、農作物を保管するのによく使われる金属のコンテナ内からデータを送れないことを考えると、これは画期的なことである。

ストリームされるデータに昆虫学に基づいたモデルが適用され、予測的分析がエンドユーザにもたらされる。重要なのは、センサーがあることにより、作物は船積みから陸運までの数週間から数ヶ月に渡る、さまざまな段階でモニタリングされることだ。

「このシステムによりユーザーは燻蒸剤の使用や害虫コントロールにプロアクティブに対応することができるようになり、製品が安全に、きちんと消毒されることを確実なものにできる」と、バンタス博士は説明する。

また、このセンサー技術による温度のモニタリングでも解決される問題がある。「ホットスポットの監視も可能になる。ホットスポットの発生はたいていの場合、虫の侵入や腐食が発生したことを意味し、それを初期段階で検知し対策することができる。」

コネクテッドになる農家

そして、農家たちも次第に技術を活用するようになってきている。バンタス博士はこのことについて、スマートフォンやタブレットの登場により、今の農家は一般的に昔の世代と比べてIT教育が行き届いているためだとコメントする。

「テクノロジーは非常に簡単に使えるようになり、農家がタブレットを使って数日後の天候パターンの情報を集め、収穫の日を決めるというのは当たり前になった。また、我々のユーザにとっても小麦が水をかぶっていないか、何かおかしなことが起こっていないかの確認をするために、わざわざサイロまで出向かなくてもいいことも当たり前だ。出向く代わりに貯蔵庫で問題が起こりそうな時にアラームが通知される。」

Centaur社は、最近130万ドルの投資を取り付けたと発表した。どのようなスタートアップ企業にとっても大きな達成だが、経済的に厳しい状況下に置かれているギリシャのスタートアップ企業にとってはなおさらだろう。同社はこの分野に先鞭(せんべん)をつけたことから強い立場におり、オーストラリアからアルジェリアまでの世界の農家が抱える問題のために適切なソリューションを作り出してきた。食糧問題の解決は現在だけでなく将来の世代にも影響することであり、Centaur社が作りだしたような技術はこれら課題に対する重要なソリューションとなるだろう。

関連記事:「農業IoT」は農業だけのためにあらず

CATE LAWRENCE
[原文4]

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