初期のBIアーキテクチャ
DWH用途の機能向上が進む
■Q&Rツール
Q&Rツールは、Windows OSのPCに導入され、GUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)を使用して、エンドユーザーでもSQLを生成し、クエリの結果をレポートとして出力することを可能にするもので、(1)データの検索・絞り込み、(2)グループ合計などの計算、(3)レポートの書式設定とファイルやプリンターへの出力、という3つの機能を持っていました。
このQ&Rツールの登場により、それまでの、「レポート(帳票)は、情報システム部門に依頼して出力してもらうもの」という常識が否定され、「エンド・ユーザーが自らのニーズに応じてデータを検索しレポートを作成する」という革命的な情報処理の業務プロセスの変化が発生しました。
■データ・ウエアハウス(DWH)
一方、Q&Rツールの普及は、同時にDWHの導入の促進を意味し、C/S型アーキテクチャの発達に伴ってマーケットを拡大していたRDBにとっても、DWH用途での機能向上が大きなポイントとなりました。
DWHの特徴は、第一にそのスキーマ(データベース構造)に見て取れます。
標準的なDWHは、スター・スキーマと呼ばれるデータベース構造を持ちます。このスキーマは、業務アプリケーションで発生するデータを時系列に格納し、高速な検索を行う目的に適しています。
スター・スキーマにおいては、中心のファクト・テーブルと呼ばれるインデックスと数値カラムで構成されるテーブルの周りを、ディメンション・テーブルと呼ばれる属性データで構成される複数のテーブルが星型に取り囲んだ形で表現されます(図3)。
スター・スキーマには、以下のような利点があります。
- 顧客名、部署名といった属性データによる検索は、ディメンション・テーブルのみの全件走査で処理できるため検索スピードが速い。
- ファクト・テーブルと複数のディメンション・テーブルとの間でのデータの重複を最小限にできるため、データ量が小さくなる。
- データ・ウエアハウス内固有のキーで結合しているため、業務システムで変更される属性データへの対応が容易である。
このようなスター・スキーマを使用したDWHの性能を向上させるために、RDBにおいては、C/S型アーキテクチャの時代を通じて、パーティションやサマリー・テーブルといった技術分野で機能強化が行われました。
一方、RDBとは別に、データを単純に集計するだけではなく、複数の視点から非定型に分析するための、OLAP、多次元データベースといった技術も発達しました。これらの技術の内容については、次回以降で詳しく解説します。
C/S型のBIアーキテクチャの限界
この時代のBIは、以上のようなアーキテクチャを持って発展しましたが、エンド・ユーザーへの普及という点では、一部のパワー・ユーザー、つまり自らデータを検索しレポートを作成する意欲と必要性を持つユーザーに限定される、という結果に終わりました。
このことは、BIの概念がエンド・ユーザーのデータ処理に対する積極性を前提としていることから考えると、必然だったのかもしれません。
しかし、パワー・ユーザー以外にも、BIに対する潜在的なニーズは存在しており、この時代にそれが掘り起こされなかったのは、C/S型アーキテクチャの持つ、大量ユーザーのサポートに対する限界が影響したことは間違いありません。
今回は、初期の、つまりC/S型までのBIアーキテクチャについて説明しました。次回は、2010年現在のBIアーキテクチャについて解説します。