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  インタビュー

NTT ComとEMCジャパン、Virtustreamをベースにした従来型アプリ向けクラウド基盤サービス提供開始を発表

2017年3月6日(月)
松下 康之
NTTコムと米国Virtustream, Inc.、EMCジャパン株式会社は、SAPなどのモノリシックな従来型アプリケーション向けの共有型クラウド基盤サービスの日本での展開を発表した。

NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTTコム)と米国Virtustream, Inc.、そしてストレージのリーディングベンダーであるEMCジャパン株式会社は、SAPなどのモノリシックな従来型アプリケーション向けの共有型クラウド基盤サービスの日本での展開を発表した。Virtustream, Inc.は、DELLとEMCが合併して生まれたデルテクノロジーズグループ配下のクラウドサービス企業だ。

左からEMCジャパンの大塚俊彦氏、NTTコムの森林正彰氏、VirtustreamのWalsh氏

左からEMCジャパンの大塚俊彦氏、NTTコムの森林正彰氏、VirtustreamのWalsh氏

今回の協業は、既に欧米では展開されているVirtustreamのクラウドサービスを日本でNTTコムのデータセンターを借りて展開するというよりも、両社がお互いの足らない部分を補完しながら、エンタープライズのクラウド移行を促進させるという意味合いが強い戦略的なものと言って良い。

具体的にはNTTコムのデータセンターのサーバー資産をVirtustream用に切り出し、Virtustreamが特許を持つμVM(マイクロVM)技術を活用して従来型のSAPなどのアプリケーションを効率的に稼働させるサービスをNTTコムが提供するというものだ。サポートについてはNTTコムが一時窓口となり、エスカレーションをEMCジャパンの中のVirtustreamチームが請け負うという形になる。特徴的なのは、マイクロサービスやコンテナ化されていないモノリシックなアプリケーションであっても、このμVM技術を使うことで従来型のパブリッククラウドサービス上で稼働させるよりも30~40%コストを下げられるという点だろう。

NTTコムは従来型アプリの部分にVirtustreamを使う

NTTコムは従来型アプリの部分にVirtustreamを使う

今回の協業の技術的なポイントが、前述のμVM技術だろう。VirtustreamのWebサイトに掲載されている技術情報によれば、これは従来型のアプリケーションを「200MHzのCPUリソース、メモリ768MB、40IOPS(毎秒40回の入出力)、2Mbpsのネットワーク帯域」を1単位として、そのアプリケーションが利用するリソース全体をモニタリングし、利用量に応じて課金するというものだ。

従来型のクラウドサービスは、アプリケーションが稼働する仮想マシンに対してCPUのコア数、速度、メモリ量などによってインスタンスを作成し、必要に応じてそれを増やしたり減らしたりすることでWebサイトなどのアクセス増減に対応してきた。一方、社内ユーザーなどが主なクライアントとなるERPであれば、第一に求められるのは急激なトラフィック増への対応よりも、安定した稼働を長期間に渡って実現することだろう。

その際、リソースの最小単位を仮想マシンとした場合、実際にアプリケーションが使っていないCPUのコアやメモリなどにも課金されてしまうという不満が生じるが、μVMはその不満に応えたサービスと言えよう。登壇した米国Virtustream, Inc.のCOOであるSimon Walsh氏は、システム利用の例えとして「使う予定だった20名用のミーティングルームに10名しか入らなくてもこれまでは20名分課金されていた。それをちゃんと使った分だけ課金できるようにした」のがμVMの特徴だという。

発表会に登壇したNTTコムの取締役、クラウドサービス部長の森林正彰氏によれば、これまでSAPのホスティングでは国内の競合に「正直、勝てていなかった」という。それをこのVirtustreamによる従来型アプリケーションのクラウドホスティングで巻き返したいという思いと、Virtustreamを使って日本の従来型アプリケーションのクラウド移行を進めたいEMCジャパンの思いとが噛み合ったということではないだろうか。NTTコムの日本法人に戻るまでは欧米での仕事が多かった森林氏からみれば、自社に足らないピースを持っている最適なパートナーが目の前に現れたということかもしれない。

ただしこの協業から発生する売り上げ目標などについては明言を避け、あくまでも「数年後に数億から10億程度を目指す」という回答であった。その部分では、NTTコムとしてはまだ顧客ニーズが読み切れていないという状態なのかもしれない。

EMCジャパンのVirtustreamの営業担当部長の大西八臣氏によれば、「Virtustreamの全体のシステムからみた稼働率は80%程度、これは10数%と言われるAWSを超えている。それぐらいVirtustreamのμVMは効率的にハードウェアリソースを利用できる。またSAPだけではなく、他の従来型エンタープライズアプリケーションもこのμVMで稼働させれば、メモリやCPUなど多くのリソースが(データセンター内で)最適化される」という。専有型ではなく、多数の顧客のワークロードが共存する共有型サービスである意義は、この辺りにあるのだろう。

またディザスターリカバリーなどのために、遠隔地に同じアプリケーションやデータベースなどをホスティングする場合にも、従来型クラウドサービスであれば単純に2倍のコストが掛かるが、そのような場合にも単純に2倍するのではなく、より低い係数で乗算されるという。ここでもコストを下げるための差別化が行われているという証だろう。

つまりこれまで細分化できていなかった従来型のSystem of Recordのモノリシックなアプリケーションをきめ細かくモニタリングすることで、使った分だけの課金を行うことでコストを抑え、余剰リソースを他の必要とするアプリケーションに割り当てることで、データセンターを最適稼働させられる点がVirtustreamの差別化ポイントということだろう。NTTコムのエンジニアがVirtustreamのトレーニングを受けた印象として「これは自分たちで作るよりも組んだほうが良い」と思ったそうである。大西氏によれば、欧米ではSAP自体がコスト削減の方法論として顧客にVirtustreamの利用を勧めることさえあると言う。またSAPなどの商用アプリケーションに限らず、自社製のソフトウェアであってもコスト削減効果があるという。クラウドに移行したくても、コスト試算の時点で踏み切れていなかったエンタープライズのレガシーなアプリケーションにも、コストを下げつつクラウドの利点を享受できる可能性がある。

既に日本国内でも、移行の商談がいくつか進行しているという。次の記者発表会では、事例の紹介があることを期待しよう。

フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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