まとめ
この連載の最初の第1回は大和屋さんによるWindows Server 2008 R2の全貌、第2回から前回までは私が機能やテーマごとにWindowsとLinuxを中心とした比較をさせていただきました。
私自身は少し前までは、サーバーOSといえばUNIXやLinux、WebサーバーならApache以外に考えることはできませんでした。
さらに、とても小さな会社や個人事業主として仕事をしてきた期間が長かったせいもあって、WindowsクライアントのファイルサーバーにはSambaで充分だろうと考えていました。
そして、操作は圧倒的にキーボードによるコマンド入力派です。
そのため、他の方との書類のやりとりのためにMicrosoft Officeを使う必要さえなければ、クライアントでもWindowsを使うのをやめることができるのにとまで思っていました。
しかし偶然にも一昨年ごろから、それまでほとんど関わることのなかったWindows Server 2008に取り組む機会がありました。約10年ぶりのWindows Server(当時はWindows NT)だったのですが、その進化に驚嘆しました。
10年も経てば進化しているのは当たり前ですが、当時はActive Directoryは存在しなかったし、Intel CPUでの仮想化といえばVMware以外に選択肢はなかったのです。Active Directoryの登場などは知ってはいたものの、Windowsに対する印象はそのころのままだったのです。
Internet Information Services(IIS)の構築も行ったのですが、Apacheにしなければいけない理由も特には感じませんでした。
もちろんLinuxについても10年前と比べるとかなりの進化をしています。当時はそうとは言い難かったですが、今ではミッションクリティカルなシステムにも"使える"ものになりましたし、サポートするITベンダーも増えました。
OpenOffice.orgなどのオフィススイートを採用することで、クライアントのデスクトップ環境として利用している方もいらっしゃるでしょう。
思い返してみると、確かに過去にインパクトのあるセキュリティ問題がWindowsで発生したことはあったにしても、「Linuxの方がWindowsよりも安定している」「Windowsは毎日のように再起動が必要だ」「Windowsはセキュリティが弱い」というようなことに対して、Webなどで軽く見聞きした情報を何の裏付けも取らずに信じ込んで来ましたし、確かにその時はそういった面もあったのかもしれません。
しかし今日でもそのような状況なのかというと、決してそうではありません。
Windows、Linux共に、OSもその上で稼働するアプリケーションも、日々進化しています。
読者の皆さんが取り組んでいる要件のために選択すべきより良いOSやアプリケーションについて、過去にとらわれず、今現在そしてこれからの状況をきちんと調査・検証していくことが必要です。
そしてコスト面についても、ライセンスなどの初期費用だけでなく、継続してかかる運用管理、サポート費用や、利用者の作業コストも含めて、将来の業務計画に沿って算出する必要があります。
文字数に制限がある中で書かせていただいたので、表面的なことばかりになってしまい深いところの比較にまでは辿りつくことはできませんでした。
またどの回においても、WindowsとLinuxのどちらの方が良いということは、利用者の要求や状況などによって変わることがありますので言い切ることは避けましたし、実際「どちらが良い」となかなか言い切れるものではありません。
今はまだ競争という構図に見えるかもしれませんが、近年、マイクロソフトはオープンソースに対する取り組みを加速させています。商用とオープンソースの融合によって、ユーザーへの最適解を提供しようというマイクロソフトの姿勢は、歓迎すべきことでしょう。「Windows / OSS徹底比較」と題して比較をしてきましたが、これからは「比較」ではなく「共に活用」の時代なのかもしれません。
最後に、この連載がOSやアプリケーションの選択をしなければいけないときに、検討すべき事柄としてお読みいただけたのであれば幸いです。