日本の帳票文化とツール
印刷イメージを生成後に配信
帳票ツールが備えるべき機能の1つに、PDFファイルの生成機能があり、多くの帳票ツールがその機能を備えています。
PDFの生成にかかる時間は、サーバー側でのPDF生成エンジンの性能に依存します。PSC-SEは高速に動作する独自の生成エンジンを開発しましたが、市販の外部エンジンを利用している製品もあるでしょう。
なお、PDFを生成する場合、サーバー側で全ページを作成してからクライアント側に送ることになるため、ページ数の多い帳票には向きません。
それでもPDFが必要な場合は、アプリケーション側で利用者に対するメッセージを工夫することが肝心です。「帳票処理中です」とか「帳票作成中です」といったメッセージが必要になるでしょう。利用者は、待たされるのが嫌いで、今何が起こっているのかを把握したいのです。
ストリーム配信でレスポンスを向上
PSC-SEでは、PDFに加えて、PSS(PrintStream Spool)と呼ぶ独自フォーマットの印刷イメージを利用できます。PSSは、印刷イメージを分割/圧縮してクライアント側にストリーム配信する方式を採用しています(3-1)。
印刷イメージは、ブロックと呼ぶ単位で分割されます(図3-2)。ブロックのサイズは、あらかじめ指定できます。分割されたPSSブロックは、クライアント側にあるPSC-SEのプラグイン・モジュールやリッチ・クライアント製品のBiz/Browserを介して印刷されます。
分割された個々のPSSブロックが生成されるごとに、サーバーからクライアントに即座に送られます。個々のPSSブロックがクライアントに届いた段階で、その都度印刷処理に回せるため、印刷開始までのレスポンスが高速になります。
全ページを一度に受け取る必要があるPDFは大量印刷に向きませんが、PSSのような仕組みであれば大量印刷であっても問題ありません。PSSにおいて性能面でボトルネックになる箇所があるとすれば、それは物理的なプリンタになるはずです。
なお、最終回(第5回)で解説するモバイル関連の記事で詳細を紹介する予定ですが、図3-1にあるように、Windows Mobileベースのスマートフォンやハンディ・ターミナルでもPSSデータの印刷が可能です。
以上で、今回の記事は終わりです。帳票ツールは安い製品で数万円から、高い製品では200万円以上にもなります。このため、業務上必要な機能を備えているかどうかを考えつつ、保守費用や費用対効果を考慮に入れて製品を選択するとよいでしょう。帳票ツールは、ほかのツールとは異なり、外資系製品は存在せず、なおかつ乱立しています。開発ベンダーに要望を言いやすい分野であるとも思います。
次回は、「クラウド時代の画面と帳票」と題し、リッチ・クライアントと帳票ツールの方向性を解説します。