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「IoT/ロボティクス×イノベーションがもたらすビジネス革新」OBCIプレミアムセミナーレポート(前編)

2017年5月29日(月)
工藤 淳

クラウドと並んで、今、ITの世界でもっとも注目を集めているテーマが「IoT/ロボティクス」だ。今回のOBCI(オープンソースビジネス推進協議会)プレミアムセミナーは、この分野におけるイノベーションに積極的に取り組んでいる方々をお招きし、OSS活用の現状と今後の可能性について語っていただいた。IoT/ロボティクスとOSSの最前線を伝えて大好評を呼んだセミナーの概要を、前後編のレポートでご紹介したい。

「人生に新たな時間を創造する」を合言葉に生み出された、世界初の全自動衣類折りたたみ機

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 代表取締役 阪根信一氏

セミナーの冒頭、基調講演に立った阪根氏が紹介するのは、同社がこの5月30日から予約発売を開始した、世界初の全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」だ。これは、洗濯して乾かした衣類をそのまま中に入れておくだけで、指定した通りに選別・分類し、たたんでおいてくれるという画期的な製品だ。

毎日、洗濯物の整理に追われる主婦や独身者ならずとも、世界初と聞いてはその実力を自分の目で確かめたいと思うに違いない。事実、2015年にCEATEC で初めて製品発表した際には、当初5,000名を想定していたローンチ・デモに約1万4,000名の観客が押し寄せ、同イベントでの来客数記録を樹立したという。

洗濯物をたたむ作業を自動化して生まれた時間を、より有意義な生活のために使ってもらう

発表早々から国際舞台で大きな反響を呼んだランドロイドだが、その道程は決して楽ではなかったと阪根氏は振り返る。そもそも、この製品の開発が始まったのは2005年。2017年の発売まで、12年かかっている。アイディアを思いついたのはよいが、周囲から「本当にそんなことができるのか」、「できたとしても、製品として売れるのか」と言われ続け、難問が解けずに何年も開発が滞ったり、メンバーが抜けていったり、資金難に見舞われたという。だが、そんな苦労をしてまで同社がランドロイドにこだわり続けた理由は何なのだろう。

「もともと当社はみずからを『世の中にないモノを創り出す技術集団』と位置付け、『世の中にないモノ/人々の生活を豊かにするモノ/技術的ハードルが高いモノ』をテーマに開発を続けてきました。ランドロイドもそうした中で、『人生に新たな時間を創造する』をコンセプトに生まれてきたのです」。

電気洗濯機の登場以来、洗濯は大きく省力化されてきた。今では洗濯物を入れてボタンを押せば、洗いから脱水、乾燥まですべて自動的にやってくれる。だが、そうした技術革新の中で、最後まで省力化できなかったのが「たたむ」という最後の作業だ。

「ここにイノベーションを起こすことで、これまで毎日洗濯に費やしてきた時間を、もっと豊かな生活に振り向けてもらえないかというのが発想の原点でした」と阪根氏は語る。

単純にたたむのではなく「アイテム別、家族別」などインテリジェントな仕分けが可能な点も「世界初」

ちなみにランドロイドの機能そのものは、非常にわかりやすくシンプルだ。本体下の引き出しに乾いた衣類を入れると、中のメカニズムがきれいにたたんでおいてくれる。しかもカメラの画像認識を使って衣類のアイテム別に仕分けたり、最初にスマホで誰の服かを登録しておいて家族別に分けるといった、インテリジェントな設定も可能だ。

「目下の課題は、作業スピードです。1枚たたむのに5~12分かかり、1回の洗濯物全部だと2.5~6時間必要です。しかし調査したところ、それくらいの待ち時間で手間が省けるなら欲しいという方が多く、自信をもってリリースすることができました」。

もちろん、機械の前でずっと待っている必要などない。「朝起きて洗濯して、夕方帰宅してランドロイドに入れて、寝る前にしまう」とか、その反対に「夜洗って、翌朝ランドロイドに入れて、帰宅してから収納」など、ライフスタイルに合わせた使い方が可能だ。

カメラの画像解析やロボットアームの制御にOSSを活用、限られた資金の中での製品開発に貢献

「Create Time.375days~人生に、新たな時間を創造する」をスローガンに立ち上げられたランドロイド開発。この中心となったコンセプトは、「画像解析」、「人工知能 AI」、「ロボティクス」の3つの要素技術の融合だ。つまり、洗濯物の状態や形状をカメラで認識・解析し、人工知能 AIで仕分けやたたみ方を考え、ロボティクスによって動作を実行する。一連のタスク処理をスムーズかつシームレスに実行する上で最適なプロセスを、この3つの連携によって実現しようというわけだ。

さらにもう1つ不可欠の技術として、ネットワークがある。ネットにつながることで、必要な時いつでもソフトウェアのアップデートが可能になるからだ。常に進化し続けるAIとソフトウェアの組み合わせは、まさに「IoT/ロボティクス」を家電製品として実現する上で必須の、そして必然の選択だったといえよう。

開発当初、阪根氏は既存の産業ロボット用アームを応用しようと考えたが、それだけで数百万円もするため、量産できる安いロボットアームを自作して、これにカメラを組み合わせて「画像解析→ロボットアームの稼働」を実現したと振り返る。

「この画像センシングやロボットアームを動かすといった部分に、OSSのコードを活用させてもらいました。限られた資金の中で新しい製品を開発していくという点で、12年間の開発期間を通じてOSSは大いに役立ったし、また感謝しています」。

日本はイノベーションのための人材の宝庫、彼らの技術力を生かせば日本はまだまだ成長していける!

今後のランドロイドの展開について、阪根氏は4つのフェイズを考えている。現在の折りたたみ専用機をフェイズ1として、フェイズ2では、介護福祉施設・病院向けの折りたたみ・分配収納機。フェイズ3では洗濯乾燥機と折りたたみ機を一体化した「ランドロイド・オールインワン」の実現。そしてフェイズ4では、住宅や建物と一体になった「ランドロイド・ホーム・ビルトイン」へと発展させてゆく予定だ。現在は、2015年のCEATECで共同記者会見を行って以来のパートナーであるパナソニック、大和ハウスと連携して、急ピッチで開発を進めている。

阪根氏は、単なる衣類たたみ機開発ではなく、ランドロイド開発を通じて家電の概念そのものを変えていきたいと意気込む。その言葉を裏付けるように、2015年時点ではわずか12名だった開発陣が、現在はすでに60名にまで増えた。この新しいメンバーは、大手一流家電メーカーを早期退職してきた人たちだ。50代が中心のベテラン開発者が、なぜ同社のようなベンチャーを志望するのか阪根氏が尋ねたところ、かつて1990年代の好景気下でさまざまな新規開発を経験してきた人が、その後日本の製造業がシュリンクする中で、もう一度ものづくりの面白さを自分たちで創り出してみたいと考えたのだという。

「そうした意味で、日本はまさに人材の宝庫です。こうした人たちの実力を引き出しながら、今後はスタートアップを始めさまざまな企業とコラボレーションを進めていけば、日本はまだまだイノベーションを起こせると信じています」と阪根氏は力強く語り、セッションを締めくくった。

生体信号の解析技術とロボットハンドで、人類の活動領域を拡げるイノベーションを!

株式会社メルティンMMI 取締役CTO 關 達也 氏

一昔前はロボットといえば、SF映画に登場する機械じかけの人形のイメージに過ぎなかった。だが現在のロボティクスが目指しているのは、人間を超えて人間の仕事をしてくれる機械。宇宙探査や地底、海底など人が踏み込めない世界で、人間に代わって作業や調査などを行う、いわば人間の能力を無限に拡張する高機能なデバイスとしての可能性だ。

關氏がCTOを務める株式会社メルティンMMIは、そうしたロボティクスの応用分野として、生体信号の計測・解析技術を用いたアプリケーションや、ワイヤー駆動によるロボットハンドの開発と事業化を目的としている。2013年に電気通信大学で大学発ベンチャーとして設立されて以来、ロボティクスと人体の動きをいかに結びつけるかという視点で積み重ねてきた技術とノウハウが大きな特長だ。

独自の生体信号解析テクノロジーから生まれた、パワフルで自然な動きのロボットハンド

「人類を超える可能性を」をビジョンに掲げる同社では、サイボーグ技術の実用化による人間の身体の限界克服を重要なテーマとしている。ほとんどの生物は自分たちが置かれた環境に適応しようとするが、逆に人間は周囲の環境を自分たちに適応させるように作り変えてきた。これこそが人類が他の生物と比べて、きわめて急速かつ高度に進化してきた理由だと關氏は語る。

「人間は、精神的なストレスや思考、意思伝達。また肉体面では病気や極限環境、身体能力といったさまざまな壁=限界に囲まれています。これらを機械が代替し、人の限界を乗り越えることで、人類の活動の可能性を拡張できるようになります。そのための技術がサイボーグ技術であり、当社が持っている生体信号の解析技術とロボットハンドという2つのテクノロジーは、その大きな成果です」。

従来のロボットハンドは動きにも制限が多く、しかも非力だった。だが同社の開発したロボットハンドは、独自の「ワイヤー干渉駆動」技術によって、本当の人間の手のような滑らかで力強い動きを可能にしている。

「従来のロボットハンドは、複数ある駆動系を個別にしか制御できませんでした。このため、1つの駆動系あたり1つのアクチュエーターしか使えず、パワーも出せなかったのです。私たちの技術では、駆動系をネットワーク化することで、必要に応じて複数のアクチュエーターを自由に利用できるため、パワフルで滑らかな動きが可能になりました」。

ビッグデータ&遠隔制御という「ロボティクスの壁」をIoTとの組み合わせによって打ち破る

今回のメインテーマでもある「ロボティクスとIoT」の関係について、關氏は今話題のドローンを例に挙げる。人が行けない場所へ飛んでいくことができ、さらに行った先で人の代わりに撮影などの作業が可能な「遠隔操作デバイスとしてのロボティクス」が、これからどんどん拡張され、新しい分野を開拓していくという。

「ビジネスとしても、すでにNASAを始め世界中の機関や企業が積極的に実用化、製品化を進めています。そこに私たちはどう参入してゆくかが、これからの重要なテーマになっていくのは間違いありません」。

具体的には、宇宙や深海など、生身の人間が行けない環境に行ける「機械の身体」。すなわち人が操作する遠隔操作デバイスとしての、ヒューマノイド(人間型)ロボティクスの開発が急務となってくるというのだ。そうした点では、ロボットハンドとしての優れた機能に加え、その他の必要な機能を遠隔操作で行える、より多機能なソリューションとしての進化が、今後の最重要テーマだといえよう。

だが、それを実現しようとした場合、必要になるのは単なる遠隔化の技術だけではない。というのも、リアルな人の手の動きを忠実に再現するには、身体の内外で発生する感情の変化なども含めた膨大な情報をリアルタイムで収集・解析し、ロボットアームの制御情報としてインプットできなくてはならないからだ。そうした情報収集・解析・入力の遠隔制御システムを、どう実現すればよいのだろうか。

「私たちは、この困難な課題=ロボティクスの壁を、IoTとの組み合わせによって打破できるのではないかと考えています。身体に発生する膨大な情報をリアルタイムで収集し、それらをAIが蓄積・解析した結果を必要な情報だけに絞り込んで、制御情報としてフィードバックすることで、効率的かつ的確にロボットアームの操作をサポートできるようになります。こうしたインテリジェントな制御システムの実現が、ロボティクスの世界に新たなイノベーションをもたらすと確信しています」。

ロボティクスの制御にOSSを取り込み、ユーザー自身による改良や開発による進化を目指す

こうしたIoTとロボティクスの進化をさらに加速させる上で、關氏はOSSの果たす役割は大きいと示唆する。具体的には、前章で紹介したIoTやAIを組み合わせた遠隔制御ソリューションの中にOSSを加えることで、ユーザーがカスタマイズできる要素を盛り込んでいきたいと考えている。

メルティンMMIが提供するのは、ロボットハンドというハードウェアと、それを稼動させるためのインターフェース、そしてビッグデータ解析のためのAIプラットフォームといったソリューションだ。これらのプログラムの部分にOSSを用いて、ロボットハンドのユーザーが、自分たちが使いやすいようにカスタマイズしていける余地を作るのだとう。

「そのカスタマイズ結果を公開して、みんなで改良していけば、より複雑で高度なロボットハンドの活用ができるようになる。そうしたOSSならではのコミュニティ的な形での発展を目指していきたいと思っています」。

従来からのロボットアーム研究以外にも、最近ではXプライズ財団による機械の身体「アバター」作りのプロジェクトである「Avatar XPRIZE」への参画も決定したと明かす關氏。「今後もこうした技術を次々にビジネスとして実用化していき、最終目標である『人類の活動領域の拡張』の実現に貢献していきたいと願っています」と、将来に向けた技術開発への意欲を示してセッションを終えた。

当日の講演資料はイベントページからダウンロードできる。
プレミアムセミナー「IoT/ロボティクス×イノベーションがもたらすビジネス革新」

フリーランス・ライター兼エディター。IT専門出版社を経て独立後は、主にソフトウェア関連のITビジネス記事を手がける。もともとバリバリの文系出身だったが、ビジネス記事のインタビュー取材を重ねるうち、気がついたらIT専門のような顔をして鋭意お仕事中。

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