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「IoT/ロボティクス×イノベーションがもたらすビジネス革新」OBCIプレミアムセミナーレポート(後編)

2017年5月31日(水)
工藤 淳

「IoT/ロボティクス」におけるビジネスの可能性を探る、OBCI(オープンソースビジネス推進協議会)プレミアムセミナーの模様をお伝えするレポート。後編は、農業や土木を始め、産業分野におけるドローンの利用やコンサルティング、教育に精力的に取り組むドローン・ジャパン株式会社 春原久徳 氏のセッションと、セミナー講演者全員によるパネルディスカッションをご紹介しよう(前編はこちら)。

「ドローン=空を飛ぶもの」ではなく、ロボットとしての多彩な可能性を追求しよう

一般社団法人セキュアドローン協議会 会長、ドローン・ジャパン株式会社 CEO 春原 久徳 氏

2013年ごろからドローンビジネスに取り組み、業界のリーダー的存在として知られる春原氏。同氏がCEOを務めるドローン・ジャパン株式会社は、「コンサル・農業・教育」の3本を柱に事業を展開している。2017年からは、「ドローンによる精密農業」のコンセプトのもとで、農地の画像や各種データを自動航行するドローンによって収集。AI解析から栽培レポートまでを一貫して提供する、「DJアグリサービスプラットフォーム」も開始予定だという。

ドローンの産業活用は急速に拡がっており、市場規模は今後5年間で約4倍に成長の予測

春原氏は、現在のビジネス分野におけるドローンの急速な拡がりを、「空の産業革命と呼べるのではないか」と語る。すでに実用化されている部分だけ見ても、風景や観光写真、映画やCMなどのエンタテインメント、そして報道などジャーナリズムへの活用といった「空撮」分野。また「物流」分野では、すでに米国アマゾン社がドローンを使った商品配送の試みを始めている。さらに今後は、ドローンとIoTを組み合わせることで、単なる画像撮影ではなく、地形やセンシングデータなどの収集=いわば空中におけるデジタルスキャニングの技術が進化していくのではないかと見られている。これが実現すれば、農業や建築・土木における応用範囲などが、飛躍的に拡がると期待されている。

「とりわけ地方では農業・土木は二大産業であり、この領域における活用が進めば、全国の地方産業の活性化や省力化に貢献できます。また観光空撮や災害地の調査などにも、大いに役立つことは間違いありません」。

事実、ドローンの市場規模は2015年度から2017年度までの3年間で、毎年倍近い成長を続けている。2015年度には175億円だったのが、翌2016年度には353億円、そして2017年度には533億円。この勢いはさらに続き、2020年度には1423億円、2022年度には2116億円に達すると予測されている(インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書2017』調べ)。

みずから考える「頭脳」を持ったドローンは、インテリジェントで自律的なデバイス

市場の成長の一方で、ドローンに対する世の中の理解はまだまだだ。新しい技術だけに、具体的にそれがどういうものなのかを説明できる人は、決して多くないだろう。たとえば、従来のラジコンとドローンの違いは、どこにあるのだろうか。

「機体の制御用のフライトコントローラー(マイコン)が搭載されているのが、ドローンです。このフライトコントローラーには、さまざまなセンサーが内蔵されており、機体の姿勢などの情報をリアルタイムで計算し、モーターの回転を制御する役割を担っています」。

ドローンは、モーターの回転数の制御ですべての動きをコントロールしている。方向転換も舵(フラップ)などがあるわけではなく、上部についている4つのプロペラ=モーターの回転数を変化させて、上昇・下降、前進・後退、左・右回転といったすべての動きを作り出す。またラジコンは操舵やエンジンの出力調整を、人間の手によって遠隔操作で行うが、ドローンは遠隔操作で受け取った指示をもとに、フライトコントローラーが“自分で考えて”機体を制御する。

フライトコントローラーは、CPUと複数のセンサーで構成されている。具体的にはCPUと、機体の角度と加速度を計るIMU(慣性計測装置)、気圧センサー、方位コンパス、そしてGPS(全地球測位システム)といったハードウェアと、これらを制御するソフトウェアが一つに組み合わされている。まさにドローンの「頭脳」といえるだろう。

こうした各種センサーによって、機体の回転や加速度、気圧、磁気などを計測。さらには対象物との距離を測る超音波センサーや、対象物の形や色などを認識して位置情報化するポジショニングカメラなどを駆使して集めたデータを、CPUがリアルタイムで解析して機体の動きをコントロールする。 このためドローンは、ソフトウェアさえ開発してやれば自動航行が可能な点も、ラジコンとは大きく異なっている。いうなれば、ドローンの方がよりインテリジェントで自律的なデバイスなのである。

ドローンのソフトウェア開発を担うDJI 社とDronecodeの「二大勢力」

次にソフトウェア開発という視点から、フライトコントローラーのプログラミングについて見ていこう。現在、フライトコントローラーには、ドローンの世界のシェア7~8割を占める中国のDJI社と、オープンソースの開発プラットフォームであるDronecodeの「二大勢力」がある。

DJI 社では、開発者向けに、DJI SDKと呼ばれるアプリケーション開発キットを提供している。DJI SDK は下の3つのツールで構成されている。

  • Onboard SDK:シリアル接続により直接DJIフライトコントローラーと通信。インテリジェント ナビゲーションモードを使用することで、自律的な飛行経路と操縦を作成して、オンボードAPI機能で、ドローンの飛行を監視および制御する
  • Mobile SDK:フライトコントローラーと通信可能なモバイルアプリを開発して、プラットフォームの可能性を最大限に引き出す
  • Guidance SDK:周囲の環境を検知するための、あらゆる種類のビジョンベースのアプリケーションを簡単に開発できる

もう一方のDronecodeは、Dronecode Foundation が提供する、ソフトウェア開発者向けオープンソースコード体系だ。 Ardupilot (自律航行制御プログラム)やDronekit(アプリケーション開発用プログラム)などで構成される開発プラットフォームを提供している。3D Robotics、インテル、クアルコムをはじめ、その他多くのドローンメーカーが、このDronecodeを使用している。

Dronecode Foundationは、Linux Foundationの支援のもとで、ソフトウェア開発の共通コードベースを提供することを目的として、2014年10月に設立された非営利団体であり、オープンソース系のドローンソフトウェア開発者にとって中心的な存在になっている。2016年3月からは、日本国内でのDronecodeによるソフトウェア開発の需要創出と開発者育成のため、「“ドローンコード ジャパン” プロジェクト」を立ち上げた。同年5月からは、開発者育成事業として「ドローンソフトウェア エンジニア 養成塾」も始まっている。

みずからも、こうした人材育成やコミュニティ運営に携わる春原氏は、セッションの締めくくりにあたり、「これから先は、“ドローン=空を飛ぶもの”といった観念にとらわれることなく、ロボットの1つのあり方として広く考えることで、技術面はもちろんビジネスの可能性もさらに広がっていくと確信しています」と力強く語った。

他分野に積極的に「入り込む」意気込みで、ビジネスへの新たな応用の可能性を探る

パネリストは写真左から、ドローン・ジャパン株式会社 春原 久徳 氏、株式会社メルティンMMI 關 達也 氏、TIS株式会社 佐伯 純 氏、株式会社電通国際情報サービス 松島 宏明 氏、株式会社日立ソリューションズ 吉田 行男 氏。モデレーターはThink IT編集長の鈴木が担当した

ドローンをビジネスに取り込むには「こんなのがあるといいな」の発想が効く

鈴木:IoT とロボティクスといえば、やはり今の注目はドローンだと思いますが、現在ほどまだ盛り上がっていない頃に、春原さんがドローンのビジネスを立ち上げたモチベーションは何だったのでしょうか。

春原:まったく新しい技術のように思われがちですが、ドローンって枯れたテクノロジーの応用なんです。それを世界中で競争で研究しているので、今から新しく何かを作るのは、よほど革新的な技術がないと抜きん出るのは難しいでしょう。むしろドローンをビジネスにする上で重要なのは、「こんなのがあるといいな」という発想です。今のハードやソフトの技術で、「何ができていて、何が足りないか?」。それも身近なところで考えると、意外に突破できるかもしれません。当社が農業・土木にドローンを応用しようと考えたのも、そういう姿勢が根底にありました。

吉田:これまでITとはまったく無縁だと思われていた業界が、いち早く採り入れていたという例はよくありますね。たとえば、野積みの金属材料の保管ヤードの上空にドローンを飛ばして、在庫管理などを行っている例があります。

春原:そういう業務を、画像解析技術を使ってできるんです。他にもたとえば入荷した鉄鉱石の荷重を見積もるとか。こういう大量の物量って今まで量りにくかったのが、ドローンの空撮で簡単に把握・解析できるようになりました。いま大手企業からも、多くの引き合いをいただいています。

吉田:空間情報システム部門などと連携して応用方法を探っていくことで、今まで困っていた分野への活用が出てくる可能性は高いですね。

春原:災害の時なども、ドローンは大きな力を発揮します。たとえば土砂崩れなどでも、その土砂を撤去するのにダンプカーが何台必要か、上空から画像を撮れば精度高く見積もれるし、撤去した土砂をどこに捨てるかといった検討も、実際の画像を見ながらできます。もちろん今までも、詳しい人の経験や知識を使えばできたけれど、ドローンがあると非常に効率的に、しかも実際の状況を正確に把握しながらできるんですね。ですからビジネスへの応用を考えるときも、あまり複雑な新しいことを考えるよりも、こうした初歩的な課題を改善するような発想の方がうまくいく気がします。

空間情報も生体信号も、詳細なデータ収集の要はソフトウェア

鈴木:空間情報というキーワードが出ましたが、ドローンで得た画像を単なるグラフィックデータではなくセンシングデータとして活用する研究も進んでいます。松島さんのところでは、バスに取り付けるセンサーを開発されたそうですね。

松島:2年くらい前のバス事故をきっかけに、研究者の方たちとバスの運行状況を把握するプロジェクトが発足して、当社で実証実験を行いました。最初は映像カメラで運転状況を撮影しようとしたんですが、やはり監視されているみたいで、運転手や乗務員は撮られるのをいやがるんですね。そこを画像で撮らずに、運転手が眠くなったのをどうやって感知するかを検討した結果、ドップラーセンサーを採用しました。ドップラーセンサーだと、非接触で脈拍など人間の細かい振動や動きがわかるんです。そのセンサーデータの解析ソフトウェア開発を通じて、さまざまな新しい知見を得ることができました。

鈴木:センサーを介して蓄積した生体データをどう解析するかという部分に、さまざまな可能性の伸びしろがある気がしますね。ロボティクスはまさに、その恩恵を大いに活用できる分野ではありませんか。

關:生体信号を収集するのも、ソフトウェアが重要なポイントになります。これまで計測はできても、その意味がわからなかった信号を解析するのはソフトウェア=アルゴリズムの役目です。私たちの作っているロボットアームの計算も非常に複雑だったのですが、ソフトウェアが改良されてきた結果、ようやく実際に生産できるレベルまで達することができました。

広い視野から見たビジネス展開の発想と研究者の横連携、そして人材育成が急務

鈴木:佐伯さんのところは、今産業連携に力を入れておられますね。

佐伯:NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の産業ロボットで始めたんですが、それだけやっていると社会に投入するまでの距離が長すぎます。そこで研究全体は大学で進めて、使えそうになった部分だけ先に切り出して製品開発にかけるという棲み分けをしています。ただ、ベンチャーだと大企業が相手にしてくれないので、当社がフロントに立ってビジネスを保証して進めるモデルを、現在構築中です。ロボティクスに注目しているお客様は多いので、そこにフィットさせられるように仕上げていきたいと思っています。

鈴木:ビジネスとして成長させていくためには、人材育成も避けて通ることのできない問題です。春原さんのところでは、ドローン エンジニアを育成しておられますね。

春原:ドローンというのは、CPUやセンサー、モーターなどのハードウェアから、それらを制御するソフトウェアまで、実にさまざまなテクノロジーが合体して作られているものなんです。ところが実はこれ、日本がとても苦手なんですね。たとえばフライトコントローラーはドローンの頭脳となる重要部品ですが、航空工学の人がこれについて学ぶ機会は少ないんです。ドローンを作るには、電子、航空、情報の各工学の専門家が力を合わせる必要があるんですが、日本の大学は学科が縦割りなので難しい。

鈴木:そうした壁が妨げになって、技術や組織の流動性が低いということですね。

春原:アメリカなんかだと、無名の大学でも人材を集めてすぐに作ってしまう。そういう環境が、全体の活気を生み出しているんです。中国もそうです。今当社では農業用のドローンを開発していますが、農地や作物の生育状況などを把握するためには画像認識技術が不可欠なんです。そして、農業へのドローン導入は大きな市場です。それを見据えて、画像と農業を合わせた学問研究が世界中で立ち上がっているのに、日本だけまだ遅れています。そういう多分野や未知の分野に「入り込む」技術が日本は苦手です。ここをどう変えていくかが、今後の重要な課題になるでしょう。

鈴木:これから先、世界に負けずにIoT やロボティクスをビジネスに展開していくためにも、技術や産業領域を越えた横の連携や未知の分野への応用研究、そのための幅広いスキルを持った人材の育成が急務になりますね。OBCI の皆さんの活躍に大いに期待しています。本日はどうもありがとうございました。

当日の講演資料はイベントページからダウンロードできる。
プレミアムセミナー「IoT/ロボティクス×イノベーションがもたらすビジネス革新」

フリーランス・ライター兼エディター。IT専門出版社を経て独立後は、主にソフトウェア関連のITビジネス記事を手がける。もともとバリバリの文系出身だったが、ビジネス記事のインタビュー取材を重ねるうち、気がついたらIT専門のような顔をして鋭意お仕事中。

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