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日本での本格普及なるか? 大規模サイト向けCMS「Drupal」創始者が初来日

2014年10月6日(月)
高橋 正和

オープンソースのCMS「Drupal」の創始者であり、企業向けにDrupalのサービスを提供するAcquia社の創業者兼CTOでもあるDries Buytaert氏(以下、Dries氏)が、9月に来日。それにあわせて、9月16日にイベント「DRUPAL NIGHT TOKYO 2014」が開催された。

DRUPAL NIGHT TOKYO 2014では、キーノートセッションとしてDries氏がDrupalとその先にあるWebの未来について講演した。また、Drupal Associationの公式プレミアムサポーティングパートナーであるCI&T社のFelipe Rubim氏は、イベントの主催者でもあるシーアイアンドティー・パシフィック株式会社の上田善行氏とともに、Drupalの特徴や採用事例などについて解説した。そのほか、ANNAI社CTOの紀野惠氏が、企業内の業務システムを開発するためのDrupalの機能について紹介した。

Drupalは大規模サイトに柔軟に対応する

Dries氏は「Future of the Web(Webの未来)」と題してキーノートセッションに登場した。

まず、Drupalについて紹介した。Drupalは14年前にDries氏の寮の部屋で誕生し、最初の7年間は趣味で開発していたという。

Dries氏はDrupalの特徴として「オープンソースである」ことを挙げる。そして、オープンソースであることにより、誰でも無料でダウンロードして使える「freedom to run the program」、コードを学んで修正もできる「freedom to study the program」、改変したものを再配布できる「freedom to re-distribute the program」の3つがあるとDries氏は説明した。

Drupalは最初からオープンソースにすることにしていたため、現在では世界で約50サイトに1つがDrupalで動き、2000人以上がDrupal 8のコア開発に参加、その上に15,000以上のモジュールが開発されるまでに発展しているという。公式サイトdrupal.orgには100万人以上が登録し、月に200万人以上のユニークビジター数あるということで、「Drupalはみんなの熱意でできている」と語った。

ここでDrupalの事例が紹介された。有名な事例としては米国のホワイトハウスが採用しており、「市民との関わり方を変えた」とDries氏は紹介した。また米国政府のほかの部門や、ほかの国でも採用されているという。

そのほか、ハーバード大学やMITなどの大学、IntelやTwitterなどのIT企業ジョンソン&ジョンソンやファイザーなどの生命科学系企業といった事例をDries氏は紹介した。また、メディア企業の50%以上がDrupalを採用しているという。さらに、ソチ五輪のサイトでもDrupalが採用され、1時間に4,000万のユニークビジターがあったという。

こうした事例を背景に、Dries氏はほかのCMSとDrupalを比較し、「WordPressはより小さいサイトに向いているし、これだけの大規模のサイトをJoomla!などで構築すると複雑になってしまう、またAdobeやSitecoreなどの商用CMSではカスタマイズが難しい。Drupalはこのような大規模なサイトに柔軟に対応できる」と語った。

これからのWebではContextがエクスペリエンスを決める

続いて本題である「Future of the Web(Webの未来)」に話題が移った。

Dries氏はまず、写真機の誕生からの進化を例に出した。マニュアルを見ながら複数の人間が多数のステップで撮影するものを、コダックが「You press the button, We do the rest!(ボタンを押せば、あとは全部やります)」という製品にシンプル化。さらに35mmフィルムなどの標準化によりエコシステムができた。

さらに操作ステップが、「フィルムを入れて、撮って、巻き上げて、最後にフィルムを外して、現像」というものから、自動化、インスタントカメラ、デジカメへと、操作ステップ数が減った。そして、スマートフォンにより、撮影するだけで自動的にシェアするまでにシンプル化された。

この例をもとに、「未来はもっと感覚的にWebサイトを作れるようになるだろう」として、エクスペリエンスの重要さをDries氏は説いた。氏はエクスペリエンスを構成するブロックとして「Context」「Platform」「Open Source」の3つを挙げ、その前段として「Content(コンテンツ)」から話し始めた。

氏のいうコンテンツとは、静的なコンテンツだけではない。コンテンツを公開することで、政府は市民の参加を求め、NPOは行動や資金を求め、企業は売上を上げる。「すべてのビジネスの中心にデジタルがある」(Dries氏)。

その例として、Dries氏は、Drupalのユーザーである米国ホワイトハウスを挙げた。ホワイトハウスでは合衆国憲法で保証している嘆願を受け付けるWebサイト「We the People」を立てて、採用されるとオバマ大統領にも届くようにした。このサイトには多くの声が集まり、中にはデス・スター建設の嘆願もあったことも2014年初頭にメディアを賑わせた。

「ホワイトハウスは、Drupalのスケール、パフォーマンス、セキュリティを実証するよい事例です。世界で最も狙われているだろうサイトでDrupalが動いています」(Dries氏)。

ここで「Context」の話に進んだ。Googleでロンドン行きのチケットを検索してアクセスしたチケット販売サイトでは、Googleからジャンプした時点でチケットの検索ボックスに「ロンドン行き」が入り、ロンドンの写真などの情報がリッチなページで表示される。「非常に使いやすく、高いエクスペリエンスを提供している。残念ながら、いまのほとんどのWebはこのようにできていない」とDries氏。

このように、「過去の行動」「地域」「デバイス」「時間帯」といった「Context」(前後関係)から関与をうながすのが、エクスペリエンスには重要だとDries氏は論じる。「アイススケートに興味はあるがカーリングには興味がない人であると学習してサイトを見せたり、アクセスしてきたIPアドレスと天気予報から雨が降っていることを知って傘を紹介したりといったことができます。これによって、訪問客をお客様に変えます」(Dries氏)。

フリーランスのライター&編集者。IT系の書籍編集、雑誌編集、Web媒体記者などを経てフリーに。現在、「クラウドWatch」などのWeb媒体や雑誌などに幅広く執筆している。なお、同姓同名の方も多いのでご注意。

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