ヨーロッパ発のIoTプラットフォームFIWARE、日本での啓蒙活動を開始

2017年8月24日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
OpenStackを活用したIoTプラットフォームのFIWAREが講演を実施。OpenStackユーザーとデベロッパーに向けてFIWAREの概要や事例などを解説した。

プライベートクラウドのデファクトスタンダードであるOpenStackの公式イベントとして開催されたOpenStack Days Tokyo 2017に合わせて、ヨーロッパ発のIoTプラットフォームであるFIWARE(ファイウェア)を推進する非営利団体であるFIWARE FoundationのCEOとCOOが来日した。それぞれセッションに登壇し、IoTのバックエンドとしてのOpenStackが着実に拡がっていることを印象付けた。

FIWAREに関しては、2016年3月にNECが自民党のIT戦略特命委員会に向けて行ったプレゼンテーションが参考になるだろう。ヨーロッパの官民が連携して、スマートシティを実現するためのプラットフォームを作り上げているのが見てとれる。

参考:欧州スマートシティプラットフォーム(FIWARE)の概要・事例について(PDF)

OpenStack Days Tokyo 2017の初日(20日)のセッションには、COOのStefano De Panfilis氏が登壇した。「FIWARE Lab, a service platform based on large distributed OpenStack environment」と題されたセッションは、OpenStackをバックエンドにしたラボの事例を紹介するもので、FIWAREの概要、コンテキスト情報を付与することによる利点、FIWARE Labとして19箇所に展開されている検証センターの概要などが紹介された。このラボの中で動いているクラウドのベースが、OpenStackによって実現されているという。しかもヨーロッパだけではなく、メキシコ、ブラジルなどにおいても大学などを中心に検証が行われているというのだ。ここでの注目点は、DockerとRancherを使ったサービスのデプロイが可能になるという部分だろう。

FIWAREのCOO、Stefano De Panfilis氏

FIWAREのCOO、Stefano De Panfilis氏

OpenStack上のDockerでGeneric Enablerをデプロイできる

OpenStack上のDockerでGeneric Enablerをデプロイできる

また2日目に登壇したCEOのUlrich Ahle氏は「Open IoT platform for Smart Services」と題されたセッションで、FIWAREが様々な標準に準拠していることを紹介した。ここでも複数の国が集まるヨーロッパならではの発想で、業界や国境を超えた連携を可能にする工夫が具体化していたとも言えるだろう。

FIWAREのCEO、Ulrich Ahle氏

FIWAREのCEO、Ulrich Ahle氏

具体的に言えば、世界最大の移動体通信業者の団体GSMAからは、IoTビッグデータのシステムにおけるリファレンスモデルとしてFIWAREのNGSI(Next Generation Services Interface)が推奨されていること、OMA(Open Mobile Alliance)やNIST(National Institute of Standards and Technology)においても標準またはリファレンスの一つとして採用されているという部分を強調していた。

各種団体で採用されるFIWARE

各種団体で採用されるFIWARE

IoTが生み出すデータに関しても、経産省がオープンデータのリポジトリとして活用しているパブリックなデータ管理プラットフォームであるCKAN(Comprehensive Knowledge Archive Network)との連携を実装。これによって地方自治体などが公開しているデータを取り込むことが可能だという。

FIWAREとCKANとの連携を解説

FIWAREとCKANとの連携を解説

また紹介された事例も、市中の騒音モニタリングからテロや事故などを検知する事例、車両の故障予測に利用する事例、家畜やサイロのモニタリング、骨粗鬆症の予防のためのヘルスケアデバイス、配送サービス用のドローンの管理など、かなり具体的なユースケースが紹介された。

騒音を集めて分析を行うFI-Sonicのユースケース

騒音を集めて分析を行うFI-Sonicのユースケース

車両センサーのデータから予測を行うStratioのユースケース

車両センサーのデータから予測を行うStratioのユースケース

放牧する家畜を管理するdigitanimalのユースケース

放牧する家畜を管理するdigitanimalのユースケース

太陽光発電によって電源が不要なセンサーを使うINSYLOのユースケース

太陽光発電によって電源が不要なセンサーを使うINSYLOのユースケース

ヘルスモニターを使って骨粗鬆症を予防するmuvoneのユースケース

ヘルスモニターを使って骨粗鬆症を予防するmuvoneのユースケース

配送用ドローンを管理するConnected Roboticsのユースケース

配送用ドローンを管理するConnected Roboticsのユースケース

FIWAREの利用が日本国内で拡大するためには、プラットフォームを活用して、エコシステムを回すベンダーの存在が重要だろう。日本では、ヨーロッパのように地方自治体や大学などの教育研究機関が連携してプラットフォームを拡大するという流れを作るような状況は想像しづらい。現時点ではNECが孤軍奮闘というところだが、その他のシステムインテグレーターやデバイスなどとの接続部分を開発するISVが現れることを期待したい。そのために、FIWAREを検証するための日本国内でのラボの設置が望まれる。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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