Linux Foundationが語るハーモナイゼーション2.0とは?

2018年4月19日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
Open Networking Summitのキーノートで語られたLinux Foundationのハーモナイゼーション2.0とは?

The Linux Foundationが主催するOpen Networking Summit North America 2018のキーノートには、Executive DirectorであるJim Zemlin氏が登壇した。DiamondスポンサーであるArmやIntel、そしてPlatinumスポンサーであるAlibaba Cloud、DellEMC、Ericsson、Huaweiなどに感謝を述べた後、Linux Foundation Networking Fund(以下、LFN)配下のプロジェクトが核となってソリューションの展開、そして新たな価値を創造していると2018年1月に発表されたLFNの重要性を強調した。

Linux FoundationのJim Zemlin氏

Linux FoundationのJim Zemlin氏

LFNとは、Linux FoundationがホストしていたFD.io、OpenDaylight、ONAP、OPNFV、PNDA、SNASを共通のガバナンスモデルに置き、プロジェクト間の無駄な管理機構を省きつつ、開発は独立したままで進めることでプロジェクトの最適化を図る取り組みだ。

OSSプロジェクトがソリューションと価値を創造していると強調

OSSプロジェクトがソリューションと価値を創造していると強調

Zemlin氏は、新たに任命されたChief Marketing OfficerであるJamie E. Smith氏を紹介した後で、Linux FoundationのNetworking Groupを率いるGeneral ManagerのAprit Joshipura氏にバトンタッチ。ここからはJoshipura氏が「What a year for Networking, Where do we head Next? Harmonization 2.0」と題したプレゼンテーションを行なった。

Networking groupのGM、Arpit Joshipura氏

Networking groupのGM、Arpit Joshipura氏

Joshipura氏は昨年のOpen Networking Summit 2017を振り返り、ネットワーク関連の多くのプロジェクトがコラボレーションを実現してきたことを紹介した。まずはAT&Tが主導してきたECOMPと、China MobileやHuaweiなどが開発していたOPEN-O(Open Orchestrator Project)が統合され、NFVのプラットフォームONAP(Open Network Automation Platform)が誕生した。ONAPはその後MEFとも連携して、ネットワークキャリアのサービス標準化を推進するプロジェクトとして活動している。これらの活動に加えて、2018年1月のLFNの発表を持って「Harmonization 1.0」であるというのが、Joshipura氏のプレゼンテーションである。

ONAPとLFNの紹介

ONAPとLFNの紹介

他にもオープンソースでデータセンターのハードウェアを設計するOpen Compute Project、データセンターにおけるインフラを定義するCORD(Central Office Rearchitected as a Datacenter)などとも連携することで、Linux Foundationのホストするネットワーク関連のプロジェクトが、幅広く連携の輪を作ろうとしていることを強調した。

その上でキーノートでの要点は「Harmonization 2.0」ということで、今回のサミットに合わせて発表となったDANOS、Acumos AI、Akrainoなどのプロジェクトとの連携を解説した。

Harmonization 2.0を解説するJoshipura氏

Harmonization 2.0を解説するJoshipura氏

この中ではKubernetesが特例的に大きく取り上げられており、ここでもインフラの上で動くワークロードをコンテナと、それをオーケストレーションするKubernetesが大きく注目されていることが明らかになった形だ。

そしてネットワークファンクションを取り巻く周辺のプロジェクトとして、DANOS、Acumos AI、Akrainoの3つが新たにLinux Foundation配下のプロジェクトとしてスタートしたことを説明した。この3つのプロジェクトはそれぞれ、DANOSがAT&Tからのソースコードの寄贈、Acumos AIがAT&TとインドのTech Mahindraからのソースコード寄贈、そしてAkrainoはIntel配下のWind River及びIntel Network Edge Virtualization SDKのコンポーネントなどとAT&Tからのソースコードで構成されている。この並びで見ると、ソースコードやエンジニアリングの面でAT&TとIntelが大きく協力していることがわかる。特にIntelは、先のOpenIoT Summitで発表されたACRNというエッジで動く軽量のハイパーバイザーもオープンソースプロジェクトとして推進しており、エッジサイドのプラットフォームの主導権争いが本格化しつつあることを感じさせる発表となった。

参考:Intelが推進するEdgeの仮想化、ACRNとは?

エンドツーエンドでオートメーションを行うのが目的

エンドツーエンドでオートメーションを行うのが目的

Joshipura氏の後半のプレゼンテーションでは、CNCFのダッシュボードからKubernetesを使ってONAPをビルドするデモを実施してみせた。ここではマルチクラウドの例として、AWSの上でONAPをビルドしてDeployするまでを見せた。

各プロジェクトについてはLinux Foundationの正式なプレスリリースを参照されたい。

DANOS:The Linux Foundation、ユニファイド ネットワーク オペレーティング システム「DANOSプロジェクト」をホスト

Acumos AI:オープンソースのAcumos AIプロジェクトが始動

Akraino:Akraino Edge Stackへの業界によるコミットメントの拡大を発表

今回のサミットは、CNCFやOpenStack Foundationも展示ブースを出しているし、CNCFのDan Korn氏やOpenStack FoundationのJonathan Bryce氏を会場内で見かけた。このような状態を目の当たりにし、単にプレスリリースを出して「連携しています」的な宣伝をするのではなく、具体的に様々なコラボレーションが行われていることを実感できた。また日増しに存在感を増すChina TelecomやAlibaba Cloud、Huaweiなどの中国のベンダーが、クラウドネイティブなインフラとネットワークについても影響力を持っていることを感じさせるカンファレンスだった。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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