成果が上がる人、上がらない人
成果を上げる人の特徴
ドラッカーは、成果を上げるための条件として図2を上げる。実際に現場でプロジェクトマネジメントや事業開発、営業などを担当している筆者自身、これらは非常に的を射ていると実感している。
これらの条件は、ドラッカーの経営哲学の中で何度も繰り返し述べられる点である。おこがましい言い方ではあるが、これらを基に考えると、「この人は成果を上げることができるかどうか」ということがある程度察知でき、マネジャーとしても支援がしやすくなる。また同様に、「自分はこの考え方をしているから成果を上げられない」あるいは「このままでは成果を上げることはできない」という自制ができることも大きい。
読者の皆さんの周りでも、「成果」を上げている人は、これらの条件を満たしている人が多いはずだ。多くのメンバーが問題や不満をあげつらい、非生産的な会議や議論を繰り返し、責任をなすりつけ合いながら時間を浪費している間に、少しずつでも迅速・的確に問題を解決し、前向きな「成果」を上げているような人が必ず組織には存在する。
社員全員の目が「製品仕様」にばかり向けられているときに、「市場から見たメリット」につき議論し検証することのできる製品開発マネジャーや、プロジェクト進行上の問題に直面してもパニックになることなく、解決できる糸口となる機会を見いだし、プロジェクトを前に進めることができるリーダーなどがその例である。
強み、機会、責任、貢献に「焦点」を合わせる
ドラッカーは人や組織の強みをとことん追及する。また、「問題よりも機会に焦点をあてよ」とアドバイスする。その根底には「物事をなすこと、すなわち成果を上げられるのは弱みによってではなく強みや機会によってである」という信念がある。ドラッカーの考える強いチームや会社の条件は、「人間の強みを結集し、弱みを意味のないものにする」ことにある。
そして、「権限よりも責任を、権利よりも貢献に意識を向けよ」と忠告する。いわく、「成果を上げるためには、貢献に焦点を合わせなければならない。手元の仕事から顔を上げ、目標に目を向けなければならない。『組織の成果に影響を与える貢献は何か』を自らに問わなければならない。すなわち、自らの責任を中心に据えなければならない。ところがほとんどの人が、下の方に焦点を合わせたがる。成果ではなく、権限に焦点を合わせる。組織や上司が自分にしてくれるべきことや、自らが持つべき権限を気にする。その結果、本当の成果を上げられない」
成果を上げられる人、上げられない人の違いは、自身が「何に焦点をあてているか」にある。プロジェクトメンバーや部下の中に、他人の弱みや問題点ばかりに目がいくような人間がいる場合は要注意だ。それが周りにも伝わり、ますますチームが成果を上げられなくなる。そのような際は、勇気を持って対話し、彼らの「焦点」を弱みや問題ではなく、果たすべき責任や貢献の方に向けさせるようリーダーシップを発揮しなければならない。
続いて、マネジャーにとって何よりも重要な資質について考えてみよう。