リモートワークの魅力から福岡への地元愛まで、社員それぞれの思惑が支社の成長の原動力に【後編】
エンジニアの間で「地方で働く」ワークスタイルが注目を集め、一方ではコロナ禍によるリモートワークが広がる中で2022年5月、九州の新拠点として福岡支社を立ち上げた株式会社システムインテグレータ。前編では支社長の岩崎 健太郎氏に、設立の狙いや社内における位置付け、展望について語っていただいた。後編では、フルリモートワーカーや支社初の新卒社員、そしてこよなく福岡を愛するマネージャーなど、ユニークな5人のメンバーに、「地方で働く」ことを選んだ動機や支社への想いを語っていただく。
※前編はコチラを参照。
「自分の生活を大切にできる働き方を」と
リモートワークを選択
システムインテグレータの3番目の地方拠点として誕生した福岡支社のユニークな性格として、「単に九州エリアをカバーするためのローカル拠点ではない」ということがある。むしろ埼玉の本社や東京営業所、大阪支社と連携して、同社の業務ネットワークを強化するサテライトとして機能している側面を強く持っている。そう考えると支社のメンバーの中に、フルリモートワーク限定で働く2人の社員がいることも、きわめて自然なことだと思えてくる。
福岡支社でプロジェクトリーダーを務める佐々木 乾智氏は、同支社の開設準備室が立ち上げられて半年の2020年10月に入社した、スターティングメンバーの1人だ。下関に生まれ、博多で就職、その後東京で6年ほど働いて博多に戻ってきたUターン組だという。現在は、北九州市門司区在住。フルリモートで在宅勤務を行い、顧客との打ち合わせや社内のイベント時にのみ出社するワークスタイルだ。
「東京にいたときは、やはりお客様と近い、市場が大きいといった魅力を感じていましたが、将来子どもが生まれて実家に子育てを助けてもらうとか、妻も地元がこちらなので介護の問題とかを考えると、やはり実家の近くに住んだ方が良いという結論になりました。それで戻ってからも、門司から博多まではドアツードアで2時間くらいかかるんですね。それを毎日通勤するのはしんどいなと思っていたときに、以前ERPの仕事をしていたこともあって、フルリモートでも良いと声をかけてもらって入社したのです」(佐々木氏)
もうひとりの在宅リモートワーカーは、鹿児島出身の福吉 尚太氏。大学卒業後も地元が本社の企業でシステムエンジニアとして15年ほどキャリアを重ね、初めての転職で2021年9月、システムインテグレータに入社した。同氏も現在はリーダーとして様々なプロジェクトを率いているが、もちろん基本は鹿児島の自宅からのリモートワークだ。
ずっと地元で仕事をしてきた福吉氏がリモートワークに関心を持ったきっかけは、佐々木氏と同様に将来の介護などもあったが、新卒から15年ほど勤めた会社は転勤が多く、結婚後も単身赴任が続いていた。そういう働き方ではない働き方を探したい、自分の生活を大事にする働き方に挑戦してみたい気持ちがあったと振り返る。
「システムインテグレータに転職してフルリモートワークになって、ちょうど1年ですが、まず自分の住んでいる場所にしっかり腰を据えて仕事に臨めるというのがとても助かるし、自分のモチベーションを高めています。またそういう環境を約束してくれている会社に、もっと貢献しようという意欲も自分の中に感じるようになってきた。あと何よりも、子どもの成長やいろいろなイベントに、家族で一緒にいられる。そう考えるとリモートワークというのは、すごく生活しやすい環境なのだなと実感していますね」(福吉氏)。
これからリモートワークに挑戦する人たちの
モデルケースを目指す
わが国でもようやく定着してきたリモートワークだが、2人はこれからそれぞれどのような働き方を目指していくのか。佐々木氏は「今はまだこの環境の変化に慣れていくのに精一杯ですね。加えて、今年の4月に子どもが生まれたこともあり、まだ先のことをはっきりと的を絞って考えられないというのが正直なところです」と明かす。
「なので、今は目の前の仕事を確実に積み重ねていけば、その先に未来が開けてくるという感覚で頑張っているという状況です。とはいえ、自分にはこれまでの仕事を通じて積み重ねてきた経験やノウハウがあるので、それをいかに現在の仕事に応用していくかを考えていけば、必ず新しい答えは出てくると信じています」(佐々木氏)。
かたや福吉氏は、自分たち2人がこれから先、リモートワークを選択しようという人たちの参考になれると嬉しいと語る。
「私たちのように、出身が福岡から遠く離れた場所でも、地元に住みながらシステムインテグレータで仕事してみたいという人が出てきたときに、具体的なイメージや働き方のモデルを知ってもらうのに役立つ事例を作れたら良いなと思っています。今いる持ち場で良い仕事をするのはもちろんですが、そういう将来のために何か役に立てたらというのを、ひそかに自分にとってのモチベーションにしています」(福吉氏)。
フルリモート勤務など
多様性のある働き方に魅力を感じて新卒入社
後半では、福岡支社に基本出社で勤務している3人のメンバーにご登場を願おう。この中で最も若手は、2022年4月に同支社初の新卒社員として入社した髙島 海斗氏だ。もともと佐賀出身で鹿児島の大学に進み、出身地に近いということで福岡での就職を決めた。この9月まで支社のメイン商品であるERP「GRANDIT」の研修をみっちりとこなし、10月からいよいよ実務の現場に加わり始めたところだ。
大学の専攻が数理情報学科だったため、就職もIT系を志望。システムインテグレータを選んだ理由の1つが、オンラインでアクセスできる点だったという。
「ちょうど就活の時期に、コロナの感染拡大で移動制限もある中、システムインテグレータの面接がオンラインで完結していること。また社員もフルリモートで在宅勤務の方がいるなど、多様性のある働き方が自分にも合っているし、働きやすそうだなと思ったのが入社を決めた理由です。最終面接だけは対面でしたが、そこまでは全部オンラインというのは本当に珍しかったですね」(髙島氏)。
現在のワークスタイルは「基本的に出社、ときどき在宅」の言うなればハイブリッド勤務だという。一応、新卒向けの研修は修了したとはいっても、実務ではまだまだ「研修中」とあって、すぐ側に上司や先輩がいてくれる方が何かと助かる。このためリモートワークは2週間に1回程度のペースで行なっている。
新人社員から見て、福岡支社の先輩たちの印象はどうだろう。
「こちらから聞かなくても気にかけて、色々わからないことを横で教えてもらったりしますが、皆さん気軽に接してくださるのが助かります。支社長の岩崎にしても、私からは大先輩でありトップの上司なのですが、それを感じさせないくらいフランクに接してくださいます。またこの10月にプロジェクトに加わってからも『こうして入っていけば良い』みたいなことをちゃんと考えていただけるのが、とてもありがたいです」(髙島氏)。
当面の目標としては、仕事の中心になるC#をさらに極めていきたいと語る髙島氏。もちろん将来的には、自分でプロジェクトを受け持って回していけるようになりたいと言う。そのためにも「今は先輩方がミーティングでプロジェクトの進捗発表をするときなど、しっかり話を聞いて理解して、とにかく自分の経験値を上げていくことに専念していきたいと思っています」と意気込みを語る。
将来に向け、支社と社員の「伸びしろ」を
さらに伸ばすチャレンジを
最後に登場いただくのは、福岡市内在住で出社勤務のベテラン2名だ。1人は福岡支社の設立準備室の立ち上げから関わってきた、同支社スペシャリストの八木 宣聡氏。もう1人は、シニアエンジニアの鍬光 浩太氏だ。
八木氏は山口県出身だが、学生時代から福岡に住み、もちろん現在も市内居住の「地元民」だ。大学卒業後も福岡のIT企業でキャリアを重ね、約20年の間、一貫してERPのエンジニアとして活躍してきた。3社目となったシステムインテグレータには2020年4月に入社。福岡支社に勤めるようになったのも、学生時代に福岡に住んでこの街が好きになり、転職の際にも福岡にこだわって探してきたからだと語る。
「システムインテグレータに入ったきっかけは、もともと前職で岩崎と付き合いがあったんです。それで福岡支社を立ち上げる時に誘っていただいて、最初のメンバーになればいろいろ貢献できるかなという期待で入社を決めました」(八木氏)。
もう一方の鍬光氏は、大学卒業後は化粧品などの広告を手がけていたが、5年前にITエンジニアに転身したという、少々変わった経歴を持つ。現在はエンジニアとして手を動かしながら、同時に複数のERPのプロジェクトで、プロジェクトリーダーとして采配を振っている。
2022年1月に入社したばかりの鍬光氏だが、福岡への愛着は支社の中でも人一倍だ。同氏から見た福岡の「いいところ&気になるところ」を伺ってみた。
「穏やかな人が多いですね。都会でも変にピリピリしたところがなくて、話していても楽しいし、安心して意見交換できる空気があります。もう1つは、食べ物がおいしいところ。好きな店で好きなものをリーズナブルな値段で食べられて、そういう場を通じた人との交流も良いですね。反面、仕事でも関東に比べると、概してこちらはゆっくりめな人が多い印象です。自分はどんどん攻めて仕事したい方なので、もう少し貪欲さが欲しいかなと思うときもあります」
新拠点としても、またメンバーのほとんども、これからがいよいよ本番という福岡支社だが、リーダー格2人の今後の展望はどうだろうか。エンジニア5年目の鍬光氏は、自分自身を精一杯成長させていきたいと抱負を語る。
「現在プロジェクトリーダーを務めていますが、それをさらにマネジメントしているプロジェクトマネージャーに、まずはステップアップできるように頑張っていきたい。プロジェクトの部分ごとだけではなく、全体を俯瞰して方向性を決め、最初から最後までしっかり自分でやり遂げていけるようなエンジニアを目指したいと思っています」(鍬光氏)
創立メンバーでもある八木氏は、これから福岡支社がスケールしていく中で、その成長の時々に最適なマネジメントができる体制を整えていきたいと明かす。
「去年までの中途採用に加えて、今年からは新卒採用も増やしていく予定です。私自身も、組織がどんどん大きくなっていくのを適切な形でまとめていける管理職を目指さなくてはならないと考えています。今後プロジェクトが増えていく中で、マネジメントが社員の活動をしばるのではなく、適切な助言でみんながより良く働ける環境を創り、プロジェクトの件数も売上も、もちろん利益も伸ばしていけるように努力していきたいと考えています」(八木氏)
最近はコロナも落ち着いてきて、定期的に飲み会を開くなど、「ますます仲良くやっています」(八木氏)という福岡支社のこれからに、大いに期待したい。
* * * * *
●取材を終えて
後編では福岡支社の所属メンバーのインタビューを紹介したが、どのメンバーも明るく、楽しく仕事をしているな、と感じられた。リモートワーク、新卒、マネジメントと、さまざまな立場のメンバーが、それぞれ自分の役割をしっかりと把握し、今やるべきこと、今後やっていくべきことの明確なビジョンを持っている。この体制ならば、新卒や中途で入ってきても何も不安なく、業務に集中し成長していけるだろう。
前編で登場いただいた、出身地の埼玉から遠く離れた福岡で、新拠点の支社長として、また開発部門の長として、正に「重役」を務める岩崎氏。取材の最後に「縁もゆかりもない福岡に来て、いろいろな役割や責任も担うことになって大変ではないですか」と水を向けてみると、岩崎氏からは「楽しい」「やりがいがある」など、前向きの言葉しか返ってこなかったことが印象的だった。にこやかな中にも強い想いや軸があって、ぶれない、動じない。そんな頼りがいのあるリーダー像だからこそ、本社からも立ち上げメンバーからも信頼され、支社長に抜擢されたことがよくわかった。
とは言え、福岡支社の設立からまだ5ヶ月。営業エリアの拡大、新卒・中途採用メンバーの教育、知名度アップなどなど、これから取り組んでいくべきことは多岐にわたる。今後、福岡支社がどのように発展をしていくのか。また岩崎氏とメンバーに再会して、お話しを伺いたいと思う。(Think IT編集部:伊藤 隆司)
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