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Open Source Summit Japan 2019開催。Linuxの外に拡がりを見せるLinux Foundationの今

2019年11月15日(金)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
Open Source Summit Japan 2019/Automotive Grade Linux Summitが都内で開催された。CI/CDから車載システムまでの、多様なカンファレンスとなった。

オープンソースソフトウェアを推進する非営利団体のLinux Foundationが、Open Source Summit Japan 2019を都内にて開催した。2019年はAutomotive Grade Linux Summitとの共催となり、Linux以外のオープンソースソフトウェア、リアルタイムOS、車載システムにおけるオープンソースソフトウェアの活用など、広範な分野のセッションが開催された。

Linux FoundationとCNCFの現況

初日のキーノートにはLinux FoundationのExecutive DirectorであるJim Zemlin氏が登壇し、カンファレンスをスタートさせた。

Linux FoundationのJim Zemlin氏

Linux FoundationのJim Zemlin氏

まずは今回のカンファレンスのスポンサーに感謝を述べたZemlin氏だったが、Renesas、Toyota、Panasonicというあまりソフトウェアのカンファレンスでは見ない日本企業がスポンサーとして支援していることを強調。他にもYahoo!ジャパンやCivil Infrastructure Platformもスポンサーとして名前が挙げられていた(Civil Infrastructure Platformは東芝や日立がリードする社会インフラストラクチャー向けの組込システムをオープンソースソフトウェアで実装するプロジェクト)。

IntelやGoogle Cloudに並んでYahoo!ジャパンやPanasonicがスポンサーに

IntelやGoogle Cloudに並んでYahoo!ジャパンやPanasonicがスポンサーに

またオープンソースソフトウェアがオープンであるという部分について、世界中どこでも発生し、どこにでも配布可能で、誰もが参加でき、すべての人がその恩恵を受けることができるというスライドを紹介。ここではちゃんと日本で誕生したRubyについても言及していることに注目したい。ちなみに上海で開催された別のカンファレンスでは、この部分でVMware Chinaが開発したコンテナレジストリHarborが挙げられていたことを考えると、細かい部分で開催される国を意識していることが見てとれる。

またLinux自体についても、過去には企業が使うようなオペレーティングシステムではないという評価を受けていたが、すでに多くの分野でLinuxが最も多く使われているプラットフォームになったことを強調した。

スーパーコンピュータからスマートフォンまでLinuxがメインのプラットフォームに

スーパーコンピュータからスマートフォンまでLinuxがメインのプラットフォームに

そしてコンテナオーケストレーションのツールとして、すでにデファクトスタンダートとなったKubernetesをホストするCNCF(Cloud Native Computing Foundation)についても簡単に触れ、2015年の創設からLinux Foundationの配下の組織として多くのソフトウェアプロジェクトをホストすることで、業界を推進していることを強調した。ここでは、Appleがユーザー企業として参加したというのが前回のKubeConでも話題になったことを記しておこう。

CNCFについても紹介

CNCFについても紹介

またLinux Foundation自体もLinuxだけではなく、近年は多くの別のプロジェクトを擁するようになったことを紹介。OpenDaylightやCloud Foundryなど、ある程度歴史のあるプロジェクト及び組織以外に、今回併催されたAutomotive Grade Linux、HyperLedgerなどのソフトウェア開発、オペレーティングシステム、クラウドコンピューティングとは直接は関係しないプロジェクトについても積極的に関わっていこうとするLinux Foundationの積極性を解説した。このスライドには、非営利の認証局サービスのLet's Encrypt、資金が不足しがちなオープンソースソフトウェアを支援するCore Infrastructure Initiativeなども紹介されており、技術開発、ソフトウェア開発以外にも多様な領域にも視野を拡げているのがわかる。

Linux以外のプロジェクトを紹介

Linux以外のプロジェクトを紹介

またオープンソースソフトウェアがエコシステムとして持続することが必要であるということを解説するスライドでは、プロジェクトが立ち上がり、そこからプロダクトが登場し、それをマネタイズすることで利益が発生し、さらに別のオープンソースソフトウェアが生まれるというループを解説した。

基本原理の説明としては理解できるものの、最近のオープンソースソフトウェアへのフリーライド問題に関しては特に言及することもなかったことが、個人的には物足らないものになった。

そして個々のプロジェクトについて、Linux Foundationはどのように関わってきたか? についてを紹介した。最初はKubernetesを擁するCNCFについて、GoogleがBorgをベースにしたコンテナオーケストレーションツールを開発してから、オープンなガバナンスを目指してLinux Foundationに相談した結果、CNCFが創設されたというエピソードを紹介。IBMのJeff Borek氏のインタビューでも言及されていたが、単にソフトウェアを公開すればオープンソースソフトウェアとして成功する時代ではないということは、覚えておくべきポイントだろう。

CNCFとLinux Foundationの関わり

CNCFとLinux Foundationの関わり

またHyperLedgerについてもクリプトカレンシーの将来、現在の置かれている状況、そしてビジネスでクリプトカレンシーが使えるようにするために、IBMがソフトウェアを提供してLinux Foundationのプロジェクトとしてスタートしたことを紹介。ここでも技術的に将来性があるものの、オープンソースソフトウェアとしてエコシステムを形成するまでの仕組みとして、Linux Foundationがいわば、揺り籠として使われていることを強調した形になった。

HyperLedgerとLinux Foundationの関わり

HyperLedgerとLinux Foundationの関わり

そして他にもさまざまなプロジェクトに関わっているとして、Facebookが開発したエンドポイントの状態をフェッチするためのosquery、RESTに代わるAPIコールのための仕組みであるGraphQL、CI/CDを推進するためのContinuous Delivery Foundation(CD Foundation)など、Linux Foundationが視野に入れているオープンソースプロジェクトを紹介。

検討中のプロジェクト。すでにホストされているCD Foundationも含まれている

検討中のプロジェクト。すでにホストされているCD Foundationも含まれている

Continuous Delivery Foundation

そして次の登壇者として紹介したのは、Jenkinsの開発者であるCloudBeesの川口耕介氏だ。川口氏は2019年3月に開催されたOpen Source Leadership Summitで発表されたContinuous Delivery Foundationについて解説を行った。

CD Foundationについて解説する川口氏

CD Foundationについて解説する川口氏

川口氏とは3月のOpen Source Leadership Summitでの取材の時にも「CI/CDツールがたくさん出てきて競争することは必須だが、顧客が抱える問題などについては共有することで、より良い競争になる」という会話を交わしたことを覚えている。今回のプレゼンテーションでもGoogleのエバンジェリスト、Kelsey Hightower氏のツイートを使って「すべてのニーズを満たすCI/CDツールはない」ことをベースに、現在はJenkins/Jenkins X、Tekton、Spinnakerなどのソフトウェアが参加していることを紹介。

CD Foundationに所属するプロジェクトを紹介する川口氏

CD Foundationに所属するプロジェクトを紹介する川口氏

初期のプロジェクトとして参加しているTektonはGoogleが開発をリードするCI/CDツールである。元はKubernetesのサーバーレス実装を行うKnativeの一部として開発が進んでいたソフトウェアを独立させたもので、パイプライン機能を備えたツールである。

その後、川口氏がオリジナルの開発を行ったJenkins、そしてJenkins Xについても言及し、CD Foundationによってホストされる意義などについても解説を行った。

Automotive Grade Linux(AGL)

次に登壇したのはこのカンファレンスで共催されているAutomotive Grade LinuxのExecutive Director、Dan Cauchy氏だ。

AGLのExecutive Director、Dan Cauchy氏

AGLのExecutive Director、Dan Cauchy氏

Cauchy氏はAGLの最近の活動を振り返り、CES 2019での露出、ヒュンダイとフォルクスワーゲングループの加入などを紹介した。

フォルクスワーゲンがAGLに加入

フォルクスワーゲンがAGLに加入

またAGLそのもののリリースについても紹介を行い、現行のGrumpy Guppy、次にリリースされるHappy Halibut、Itchy Icefishなどについても簡単に紹介を行った。

Happy Halibutの概要

Happy Halibutの概要

AGLがフォーカスするエリアとして紹介されたスライドでは機能を追加する方向ではなく、プロダクションをやりやすくする方向にシフトすることが表明された。これはAGLとしての機能追加よりも、自動車メーカーがAGLを実装する部分のサポートに注力して開発を行うという意味だ。またAPIを追加すること、長期間のサポートをベースとなるOS(この場合、Yocto)と合わせることなどが紹介された。

AGLの方針

AGLの方針

また2019年2月に発表されたELISAプロジェクトについても紹介を行った。これは人命に関わるような自動運転システムなどをLinuxベースで開発を行う際、ツールの開発や安全性の認定などを行うプロジェクトで、BMWの関連会社、BMW Car IT GmbH、Toyotaなどが中心となって結成されたものだ。

ELISAプロジェクトの初期メンバー

ELISAプロジェクトの初期メンバー

AGLはELISAにメンバーとして加わることが説明された。

そしてマーケティング的な活動として、2020年初頭に開催されるCES 2020にさらに大きなブースを設置して参加することが紹介された。2019年のCESへの参加が成功であったことをベースにして、コンピュータを組み込んだシステム機材の展示会としては世界最大のCESでアピールすることで、メンバー獲得などにつながるということに自信を見せたかたちになった。

CES 2020でのAGLブース案

CES 2020でのAGLブース案

その後はLinux Foundationに長年の貢献を行ってきた日立製作所の橋本氏、日本電気の柴田氏の表彰やCNCFのDirector of Ecosystem、Cheryl Hung氏によるCNCFのアップデート、富士通の田代智彦氏のプレゼンテーション、UberのTravis Gorkin氏によるKepler.glの紹介などが行われた。

Kubernetesの認定試験が日本語化されたことを紹介するHung氏

Kubernetesの認定試験が日本語化されたことを紹介するHung氏

顧客のニーズが変化したことを紹介する富士通の田代氏

顧客のニーズが変化したことを紹介する富士通の田代氏

Kepler.glを紹介するGorkin氏

Kepler.glを紹介するGorkin氏

Zemlin氏のイントロダクションからCD Foundationの紹介、AGLの最新状況、Kelper.glなどの新しいプロジェクトの紹介まで、多くのトピックが詰まったキーノートセッションとなった。すべてのセッションが英語で行われたのはこれまでのLinux Foundation主催の日本国内でのカンファレンスと同じだが、上海のKubeConなどのように日本人のプレゼンテーションは日本語で行い、英語が必要な参加者には同時通訳を行うという形式に移行するべきではないだろうか。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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