LinuxCon Chinaの展示ブースでは地元企業が存在感を示す
北京で開催されたLinuxCon+ContainerCon+CloudOpen China(略称、LC3)はセッションだけではなく展示ブースも北米のカンファレンスとはだいぶ違う様相となったカンファレンスであった。この記事では展示ブースの様子、個別のミニカンファレンスを行っていたテンセントなどについてお届けする。
特別待遇のファーウェイ
このスポンサーのリストを見れば、ファーウェイが特別な扱いを受けているのはわかるだろう。通常、スポンサーの最高レベルはプラチナ(Platinum)だが、LC3ではその上に「ダイアモンド」というレベルを設けて、ファーウェイだけがダイアモンドとなっていた。展示会場でもセッションでも、ファーウェイは別格の扱いを受けていたし、展示ブースでは様々なファーウェイのソリューションが展示されていた。
この写真にあるDMMとは、FD.ioのサブプロジェクトであるDMM(Dual Mode, Multi-protocol, Multi-instance)を指し、「容器OS」はファーウェイが開発を推進するコンテナ向けのOSであるEulerOS iSulaだ。どちらも、日本でのちメイドはまだゼロに近いプロジェクトと言っていいだろう。コンテナを中国語では「容器」と記述するのが日本人にとってはとっつきやすい。EulerOS iSulaと機能的に競合するのは、インテルが推進するKata Containersや、Red Hatが推進するCoreOSなどだろう。しかし中国国内でのユースケースが先行することで、ガラパゴス的にこのOSが利用されることはありえるだろう。
ファーウェイは中国各地でミートアップを開催し、自社で開発するソリューションの啓蒙を行っている。
エンタープライズ向けではOpenSDSのデモブースも用意され、ストレージにおいてもファーウェイのソリューションをアピールしていた。
クラウドと連携したロックシステムも展示されていた。このシステムは、バイクシェアリングなどに利用されている。
カメレオンがお出迎えのSUSE
ファーウェイ以外の中国ベンダーはそれほど大きなブースを構えているわけではなく、インテルやOracle、Pivotal、ARM、Microsoft、IBM、Lenovoなどと同様の小規模なブースを展示していた。その中でも大きめのブースを出していたのがSUSEだ。
しかしSUSEにしてもデモを展示するというより、おなじみの緑色のカメレオンのぬいぐるみ人気を利用して、人集めをしていたという程度だ。
インテルはエッジ向けのハイパーバイザーであるACRNのデモを実施。オープンソースのカンファレンスでは大きな存在感を出すインテルも、ここLC3では、それほど存在感がない。
会場で広く利用されるWeChat Pay
Pivotalは、書籍を配布することが目的と言っても良いようなブースを展示していた。ちなみにこのQRコードはWeChat Payのコードで、読み取るとWeChat Payが起動し、参加者の個人情報を提供する仕掛けのようだ。同様の仕組みは各ブースで用意されていたようで、カンファレンス用に用意されたバーコードなどではなく、ほぼ全ての中国人が利用しているアプリケーションを使っている辺りが、いかにも中国っぽいと感じられた瞬間だった。
VMwareも配っていたのはステッカー。オープンソース界隈ではそれほど存在感が大きくないVMwareだが、仮想化基盤ではまだエンタープライズからのニーズはあるということだろうか。展示されていたのは、コンテナレジストリーのHarborだった。
VS Code推しのマイクロソフト
マイクロソフトは基本、Azureの説明ブースだ。ブース裏には、Azureの機能がしっかりと中国語で解説されていた。オープンソースソフトウェアとして、昨今人気が高まっているVisual Studio Codeもアピールしていた。
ミニカンファレンスを開いたテンセント
テンセントは今回、ミニカンファレンスを開いてTARSを大きくアピールしており、ブースももっぱらVIPルームで開催されているミニカンファレンスへの誘導が目的だったようだ。
TARSはテンセントが「自社で利用しているRPCフレームワーク」と説明されていたが、自社のエンジニアだけではなく社外のエンジニアにも参加を呼びかけることで、開発をスピードアップしたいという思いがあるように見える。実際ミニカンファレンスでは、冒頭でApache Software Foundationの担当者から、オープンソースプロジェクトに参加するためのガイドとなるプレゼンテーションがあったが、それ以降は全て中国語で行われていた。事実上、中国のエンジニアの参加を促すためのセッションであったことがわかる。
VIPルームで行われていたミニカンファレンスでは、満員の参加者がテンセントの担当者からの説明を聞き入っていた。
中国ベンダーが存在感を示したイベント
一般にこのようなIT系のカンファレンスでは、キーノートへの注目度が高く、会場はほぼ毎日満員というのが常だ。しかしLC3においては初日から2日目、3日目の最終日と進むにつれて、キーノートへの参加者が減り、会場も徐々にキャパシティを減らしていくという状況であったのが驚きだった。
以下の写真は2日目のキーノート直前のものだが、後方の席はほとんど空席となっていた。
キーノートが終わって展示会場のほうに出てみると、多くの参加者が展示を見ていたことに気付いた。中国の参加者にとっては、海外から来たプレゼンターよりも中国本土のアリババやファーウェイ、テンセントなどのプレゼンターが中国語で行うプレゼンテーションのほうが、より重要に感じるのだろうということを感じた。この辺りは、日本でのカンファレンスとは少しようすが異なるようだ。
筆者は、今回初めて中国本土でのカンファレンスに参加したのだが、英語によるコミュニケーションの難しさよりも、中国語によるセッションの盛り上がりと中国ベンダーの元気さが際立つものとなった。次に上海で行われるKubeConが、今から非常に楽しみである。
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- LinuxCon Chinaで中国人エンジニアに聞いた中国のオープンソース事情
- KubeCon Chinaでは展示ブースも中国ベンダーが猛プッシュ
- 写真で見るKubeCon Europe 2019ショーケース
- LinuxCon+ContainerCon+CloudOpen China開催。中国企業の存在感が大きかった初日
- Open Infrastructure Summit上海、展示ブースで感じた宴の終わり
- 写真で見るCloudNativeSecurityCon 新興ベンダー山盛りのショーケース
- 中国人のためのイベント、Open Infrastructure Summit上海開催
- 2日目キーノートではコンテナ、Kubernetesといったキーワードに注目、Kubernetesのセキュリティ技術も解説
- 写真で見るOSSummit North America 2022
- ONSのトリはVinton Cerf氏登場 そしてCloud FoundryとKubernetesはどうなる?