元Juniperの技術者が創業したVolterraはエッジを統合するファブリックサービス構築を目指す
Juniper NetworksのSoftware-Defined Network(SDN)として知られているContrailは、元々JuniperがContrail Systemsを買収した2012年以降、Juniperのソフトウェアベースのコントローラーとしてブランディングされていた。そこからOpenContrailとしてオープンソースソフトウェア化され、最終的にTungsten Fabricと名称を変え、Linux Foundationにホストされることとなった。
そのContrailの元々の開発を行っていたContrail Systemsの創業者&CEOであったAnkur Singla氏が、Juniperの後に創業したのがVolterraだ。すでにKhosla VentureやMicrosoftが出資を行い、ラウンドAで$25Mの投資を集めた実績からわかるように、シリコンバレーでは注目のベンチャー企業だ。
今回、来日したVolterraのCOOであるDaniel Hua氏と、VP of ProductsであるMarco Rodrigues氏にインタビューを行った。まだ製品がベータにもなっておらず、ホームページにも主要な創業メンバーの紹介しかないというステルスな企業だが、Volterraが提案する「IoTの主要な構成要素となるエッジコンピューティングを含むファブリックサービス」とはなにか? を垣間見てみよう。
自己紹介をお願いします。
Hua:私はCOOのDavid Huaです。Juniperではアジアパシフィック地域の責任者でした。日本の横浜国立大学で学んだあと、トータルで9年間ほど日本にいましたので、日本語は少しできます。
いやいや、大変お上手な日本語でビックリしました。
Rodrigues:私は製品担当のVPということで製品全般の開発を指揮しています。Juniperでもエンジニアとして働いていました。OpenContrailの開発にも関わっていました。
まずVolterraの製品の概要を教えてください。
Rodrigues:Volterraが目指しているものを簡単に表現すると「分散された環境でアプリケーションを実行するためのファブリック」サービスというものです。これは、オンプレミス、パブリッククラウド、そしてエッジにおけるアプリケーションの実行を実現するものです。
Volterra Stackと呼んでいるものがありますが、これはコモディティハードウェアで実行されるLinuxの上に、SDNとしてTungsten Fabricが実行され、その上で軽量なProxyであるEnvoyが動きます。Tungsten Fabricは、OpenContrailが名前を変えたものですね、これがオンプレミス、パブリッククラウド、エッジの上で協調しながらアプリケーションを実行します。管理は、Volterraが提供するSaaSベースの管理ツール、Volterra Management Cloudで行うというものです。
Hua:IoTのデバイスが多く存在し、そこからのデータが大量に発生するということを考えると、これまでのサーバーベースの発想から転換をする必要があると思います。これまではスマートフォンで動画を再生するように、主に下りのトラフィックをどうやって届けるのか? これがアプリケーションの要点でした。
しかし今後は、例えば自動車のように末端のデバイスから大量のデータが発生するようになります。このデータをどうやってクラウドもしくはサーバーに届けるのか、そしてそれをどのように利用するのかという部分を考える必要があるということがわかってきたのです。つまりこれは、CDNやSD-WANでデータをエッジにデリバリーするものを逆にして実行するということですね。
Rodrigues:その時に、自社のインフラストラクチャーやパブリッククラウドをそれぞれ選択して利用するという方法ではなく、オンプレミスからエッジまで分散された環境の中でアプリケーションを実行できることが必要だと私たちは考えたのです。
その際、アプリケーションデベロッパーはアプリケーションだけに集中してもらい、アプリケーションがどこで実行されるかは、Volterraのスタックが管理を行うということを目指しています。同時にセキュリティやIDの管理なども、この中で行えるので、個別のシステムを用意する必要はありません。全てが提供されることになります。
Volterraから提供されたスライドでは、同じスタックがオンプレミス、パブリッククラウド、エッジの上で稼働し、それらがPeer-to-Peerの通信を行うことで、全体の管理とスケールアウトを実現するようである。
上記の図では省略されているが、Stackの中ではTungsten FabricとEnvoy、そして通信のレイヤーにはDPDK(Data Plane Development Kit)を利用するという。またCNCFにも加入しているからもわかるように、オープンソースソフトウェアへの貢献、特にTungsten FabricとEnvoyに対して積極的に関わっているということを強調していた。
ネットワークの構造を見てもらえばわかるように、Inference Engineと呼ばれる機械学習による機能も予定されているようで、単なる分散協調のためのプラットフォームだけではなく、アプリケーションレベルでの機能提供も予定しているようである。まだあまり明らかになっていないVolterraのソリューションだが、2018年12月にシアトルで開催されるKubeConに併催されるEnvoyConでは、VolterraのエンジニアがDPDKに関するライトニングトークを行うことも発表されており、これから徐々に明らかになっていくと思われる。
EnvoyConでのライトニングトーク:Integrating Envoy with DPDK-based virtual networks - Raja Sivaramakrishnan, Volterra Edge Services
実際にどのような企業がVolterraのソリューションを採用するのかについては、まだ明かせないということで説明は行われなかった。Juniperでの経験を活かし、オープンソースソフトウェアを最大限活用して、エッジを含んだファブリックソリューションをゼロから開発していることを考えると、Microsoftが投資を行った意図が見えてくる。今後、注目するべき企業が増えたと言えるだろう。
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