ジュニパーネットワークス、初のAPACメディア向けイベントを開催
ネットワークソリューションの大手、米国Juniper Networksがアジアで初となるメディア&アナリスト向けのイベントを2014年12月3日にシンガポールで開催した。ここでは現地で発表された2つのプレスリリースとセッション及び製品担当などとの会話からイベントを概観してみたい。
OCP対応スイッチとVMwareとの協業を発表
今回のイベントでのプレス向け発表は2つ。一つ目はFacebookが提唱する安価なx86サーバーでデータセンターを実現するOpen Compute Project(OCP)に準拠したOCX1100というハードウェアの発表だ。これは従来のJuniper製のL3スイッチを構成するハードウェアとソフトウェアを分離して、ハードウェアに関してはOCPが提唱する規格に合わせたもの、いわゆるホワイトボックスを使い、ソフトウェアをJuniper純正のJunosを使う、つまりL3スイッチのハードをOCPに合わせることで安価なハードと信頼性の高いJunosを組み合わせてFacebookレベルの巨大なデータセンターにおけるネットワーク環境を構築するという方法論を実現化したものだ。同時にJunosへのアクセスのためにPythonなどのプログラミング言語から利用できるAPIの提供、オートメーションを実現するPuppet、Chefなどを利用できる環境を用意したこと、ONIE(Open Network Install Environment)と呼ばれるインストールツールへの準拠などが主なトピックとして発表された。より詳しくは以下のジュニパーネットワークスのプレスリリースを参照されたい。
http://www.juniper.net/jp/jp/company/press-center/press-releases/2014/pr_2014_12_04-00_00.html
今回の発表についてSDN製品のDirector of Product MarketingのSteve Shaw氏に話を聞いたところ、「JuniperはOpenContrailを発表した時にも説明した通り、オープンソースソフトウェアを推進しようと常に努力している。現に商用のContrailもOpenContrailも全く同じソースコードから出来ているし、両方のソフトウェアに違いは無い」と語った。それでもサポートが欲しいという顧客のためにContraiはSDN製品として残るだろうし、よりオープンな環境が必要で自身でソースを理解できる企業はOSSに行くだろう、その流れを止めるつもりは無いということだ。
2つ目の発表は仮想化に対するAPAC地域におけるVMwareとの協業の発表だ。これは日本ではまだ詳細が発表されていないが、プライベートクラウド環境での構築をVMwareのNSXとJuniperのMetaFabricの統合を推進させる協業体制を構築するという発表で、具体的に両社のどの部門がどのように協業するのか、はこれからというところだろう。VMwareとの協業に関するプレスリリースは以下を参照されたい。
http://www.juniper.net/jp/jp/company/press-center/press-releases/2014/pr_2014_12_09-00_00.html
他にも、インドに設置された北米以外では最大の開発拠点となるIndia Excellence CenterのVP of OperationsのM.Muthukumar氏によるセッションでは、Juniperにおけるエンジニアリングの経緯と仮想化のコンセプトなどを中心に解説が行われた。Juniperのハードウェア、ソフトウェアともかなりの部分がインドで開発されていることを紹介し、インドから来たメディアにも強くアピールする姿が印象的であった。
セキュリティ担当のSenior Director, Alex Waterman氏のセッションではキャリアグレードのファイヤーウォールの解説や最近のインターネットにおけるリスクなどを解説した。なおキャリアグレードのファイヤーウォール製品では2番目のシェアを持つということを説明していたスライドで最大同時接続数が60,000,0000となっているのは「6千万」の誤表記だろう。なかなか愛敬のあるタイポである。ちなみにシェア1位はシスコシステムズだそうだ。
また、2拠点のWAN接続を集中化されたSDNコントローラーで経路計算をリアルタイムに行うNorthStarと呼ばれる製品のデモが披露された。LANの知識はあってもWANの制御や設計などの知識が無い記者が見てもなんとなくGUIが変わっていることが見られる程度で、これが意味するところを理解させるのはなかなか大変だと感じるばかりだった。またQFX5100という大規模向けのスイッチとVMware NSXのインテグレーションのデモにおいて複数のコンソールを開いて「ほら、ここでネットワークコマンドを叩くよ、今ここにPingが通ってるでしょ?すごいと思わない?」と言われても文字通りピンと来ないメディア関係者が多かったように思われる。ネットワーク関連製品のデモの難しさが見え隠れしたセッションとなった。
全般的にJuniperが推し進めようとしているオープン化、仮想化そしてSoftware-Defined Data Centerの実現に向けた動きが感じられたイベントであった。今後も注目したい。
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