日本初の「OpenShift Commons Gathering」がオンライン開催、キーパーソンが国内外におけるOpenShiftの新事例と推進戦略を語る
本稿で紹介する3つのセッションを含め、本イベントで行われたセッション動画は「OpenShift Commons Gathering Japan 2020」の公式サイトから参照できる。各セッションの詳細については、各動画を参照いただきたい。
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https://www.redhat.com/en/explore/openshift/commons-gathering-ja
国内でのOpenShift支持の広がりを紹介した金古 毅氏
レッドハット株式会社が主催するOpenShift Commons Gatheringに、レッドハット株式会社の金古毅氏が登壇。金古氏は常務執行役員、パートナーアライアンス営業統括本部長という肩書でレッドハットのパートナービジネスを統括する役割だ(2020年12月10日現在)。今回はアマゾンウェブサービスジャパン株式会社(以下、AWS)と日本電気株式会社(以下、NEC)という日本のエンタープライズ企業を支援する大手ベンダーの両社が、レッドハットが推進するOpenShiftに関わるビジネスや新型コロナウィルス以降の新しいノーマルを語ったセッションに続いて、OpenShiftを日本で推進するためのパートナー戦略を語った。
金古氏はAshesh Badani氏が示したフォレスターリサーチのリサーチ結果を用いて、マルチクラウドにおけるコンテナ開発プラットフォームとしてのRed Hatが持つ優位点を再度、日本語で確認する形で紹介した。
そして、OpenShiftを導入した顧客が世界中で増え続けていることを紹介した。金融、政府官公庁、テレコムなど幅広い業種、業界で使われており、BMWやドイチェバンクなどの名前もスライドで確認することができる。
その中から日本のユーザーの事例として、伊藤忠テクノソリューションズが手掛けたコープ共済が紹介された。
ここでのポイントは、新しいサービスやアプリケーションを素早く柔軟に開発、実行できる環境としてOpenShiftを選択したという部分だろう。その裏付けとして、OpenShiftの信頼性、レッドハットのサポートサービスの優秀さなどが選択の大きな要因となったことを解説した。
これまでのプラットフォームに比べて、運用の自動化が進んだことでより多くの時間をアプリケーション開発に使うことができたことを解説するスライドで、前述のコープ共済の導入事例の背後にあるポイントを解説した。これは単にコンテナプラットフォームのソフトウェアとしてのOpenShift以上に、Red Hatが強力に推進する運用を自動化するOperator Frameworkへの橋渡しとも言えるものである。金古氏のプレゼンテーションでは、少し後に出てくるインストールやバックアップ、モニタリングなどを自動化する各種のオペレーターの存在が、プラットフォームの価値を押し上げていることを示している。
金古氏はレッドハットが推進する「オープンハイブリッドクラウド」についても、Badani氏と同様のスライドで解説した。ここでは多種多様なワークロードをベアメタル、パブリッククラウド、プライベートクラウド、エッジでも実行可能であるというポイントをさらに強調した形になった。
また単に顧客のデータセンターでの実装だけではなく、AWS、Azure、GCPという3大パブリッククラウドにおいてもネイティブに実装されていること、そしてレッドハットの親会社であるIBMのクラウドにおいてもサービスが開始されていることを紹介した。
そしてマネージドOpenShiftの価格が改定されたことを紹介し、OpenShift Dedicatedにおいて平均で75%の値下げが実現したことを説明。SLAにおいては99.95%を実現していることを付け加え、価格を下げたと同時に信頼性を向上させていることを解説した。
今回のセッションにはAWSとNECが登壇したが、ここで金古氏はそれ以外のパートナーとのビジネスの例として、富士通によるPostgresデータベースのOperatorを紹介した。これは「Fujitsu Enterprise Postgres 11 Operator」と命名されたもので、OpenShift上で富士通が提供するFujitsu Enterprise Postgres 11を運用管理するためのオペレーターとなる。
またBadani氏のセッションでも紹介されたRed Hat Marketplaceを紹介し、環境に依存しない品質を保証できること、ソフトウェアだけではなくサポートが付随していることを解説した。
最後に日本国内でのパートナー支援のプログラムとして、OpenShift Managed Practice Program、Red Hat Kubernetes Operator Project、そしてインテグレーション向け技術支援の3つを紹介した。最後のインテグレーション向け技術支援は仮称として説明され、名前を含めた実体は今後に明らかになるものと思われる。
ここで、AWS、NECの2社のプレゼンテーションの要点も紹介しよう。
AWSからはテクニカルパートナー本部長の阿部泰久氏が登壇し、AWSが提供する「Red Hat OpenShift Service for AWS」について、AWSのコンソールから利用可能であること、AWSの他のサービスとの統合、課金と請求がAWSに統合されていることなどを紹介し、AWSユーザーにとっての使いやすさを追及しているサービスであることを訴求した。
日本電気からはOSS推進センターのセンター長、菅沼公夫氏が登壇し、新型コロナウィルス以降の新しい社会の在り方、ITの関わりなどについて解説を行った。
金古氏のプレゼンテーションはAshesh Badani氏が行った内容を日本語で補完し、日本でのレッドハットのパートナー戦略を再確認する内容で、日本でのパートナー戦略が順調に推移していることを感じさせるものとなった。
Diane Mueller氏、Ashesh Badani氏、そして金古毅氏のセッションから感じたのは、OpenShiftに対するRed Hatの揺るがない自信とコミュニティに対して約束を守る姿勢の変わらなさと言える。2番手のPaaSからKubernetesに100%入れ替えた決断は間違っていなかった。これからもOpenShiftに注目していきたい。
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本稿で紹介した3つのセッションを含め、本イベントで行われたセッション動画は「OpenShift Commons Gathering Japan 2020」の公式サイトから参照できる。各セッションの詳細については、各動画を参照いただきたい。
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