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DevRelを実践する「4C」の考え方とは

2022年6月28日(火)
中津川 篤司

はじめに

前回まで、DevRelについて基本的なことを紹介してきました。これでDevRelについては何となく分かっていただけたのではと思いますが、では「実際にDevRelではどのようなことをすれば良いのか分からない」という方は多いでしょう。

DevRelで行うべき施策は多岐に渡ります。自社や自社サービス、開発者にとって良いことであれば、何でも積極的に取り組んでいくからです。「これとこれをやればDevRelだ」というわけではありません。とは言え、本記事をお読みいただいている方に丸投げしてしまうのはあまりに乱暴です。そこで今回は、その基礎的な考え方とも言えるDevRelの「4C」について紹介します。

DevRelの「4C」とは

DevRelの4Cとは、以下の4つの用語の頭文字「C」をまとめたものです。

  • Code
  • Content
  • Conductor
  • Communication

この基礎となる考え方として、DevRelの「3C」というものがあります。これはSendGridのDevRelチーム(主に当時SendGridエバンジェリストだったBrandon West氏)が2014年に提唱したものです。

この3Cでは、以下の3点にフォーカスしています。

  • Code
  • Content
  • Community

この3Cを発展させた形で、エバンジェリストやコミュニティマネージャーといった人的要素(Conductor)を加えたものがDevRelの4Cという考え方になります。

以降では、各Cについて詳細を説明していきます。

Code(コード)

DevRel(開発者向けのマーケティング)と他の一般製品とのマーケティングで大きく違うのはコード、つまりプログラミングコードの存在でしょう。昨今ではノーコードも注目を集めていますが、開発者向けにサービスを提供する中ではプログラミングコードの存在は大きいでしょう。

SDK

APIを提供しているのであれば、SDKの存在は欠かせません。同じようなAPIを提供するサービスがあった場合、SDKがあるかないかで選定結果が変わってくるはずです。HTTPをコールする部分を自作するのは面倒ですし、そこに一定の手順があればなおさらです。SDKがあって、それを使うだけでAPIを呼び出せるなら、積極的に使っていくはずです。

さらにSDKは1つの言語に最低1つは必要です。すべての言語に提供するのは難しいですが、サービスを利用する開発者層に合わせて、主だった言語にはSDK提供が求められるでしょう。

他にも、SDKとは言わないまでもライブラリの存在が役立つことは多いです。関数を呼び出すだけで一定の操作が完了したり、必要なデータが取り出せるならば、使ってみたいと思う開発者もいるでしょう。

デモアプリ

APIやSDKを利用したデモアプリも開発者を助けてくれる存在です。単にSDKだけあるのではなく、それを使ってどのようにサービスへ組み込めば良いかデモアプリを通じて理解できます。ときには「Kitchen Sink」と呼ばれるAPI操作を網羅したデモアプリも提供されることがあります。これもまた、開発者がAPIの呼び出し方や使い方を学ぶのに役立つでしょう。

デモアプリは機能を網羅したものではなく、特定の用途に合ったものが良いでしょう。例えばTodoアプリやチャットアプリなどです。あまり多くの機能を使っていると、アプリが複雑になってしまいます。開発者の視点に立って考えれば、単機能アプリの方が実装はシンプルになり、コードも読みやすくなります。あれもこれもと機能を盛り込むくらいなら、別なアプリに分けた方が良いでしょう。

ハンズオンのベース

ハンズオンは開発者向けのイベントとしてお勧めです。実際に手を動かして使い方を学べたり、問題が発生してもその場でサポートが得られるからです。そんなハンズオンのベースになるコードをGitHubなどに登録しているケースはよくあります。

ハンズオンのベースなので、完成版ではありません。かといって1から作るのに比べると大幅な時間短縮になります。特にライブラリのインストールやUI周りをあらかじめコーディングしてあることで、余計なトラブルを避けられたり、整ったUIで気持ち良くコーディングできます。

教育コンテンツ

昨今、企業がオンボーディングやインターン向けの教育コンテンツをGitHubで公開するケースが見受けられます。自社向けのコンテンツですが、外部に公開することで開発者に貢献したり、ブランディングへの寄与が期待できます。最近ではスマートフォンアプリ周りや機械学習などのコンテンツが多いです。

企業が公開する教育コンテンツなので、先進的テクノロジーと言うよりも地に足が着いた技術を学べるのが特徴です。該当企業はもちろん、その分野へ就職するのであれば学んでおくことをお勧めします。それにより、あらかじめ専門用語を把握できたり、利用している技術を学べるからです。

以下は、その一例です。

Content(コンテンツ)

コンテンツはコード以外のアウトプット全般と言えます。アウトプットはオンライン上に蓄積されてWeb検索で見つけてもらうきっかけになったり、信頼性構築につながります。少なくともWeb検索で100件しか出ないサービスと10万件のサービスであれば、後者を採用したいと思うのではないでしょうか。

コンテンツはとても多岐に渡るので、その一部を紹介します。

ブログ記事

最近テックブログ記事を開始する企業やサービスが増えています。ブログ記事はとても手軽にはじめられるコンテンツです。開発者であれば、個人でもブログを立ち上げている人はとても多いでしょう。

ブログは自社ドメインで行う方法と、QiitaZennといった外部サービスを使う方法の2種類に大別されます。双方のメリット・デメリットは次のとおりです。

メリット デメリット
自社ドメイン コンテンツの権利・公開コントロールが容易 集客が弱い
外部サービス 利用規約に沿ったコンテンツのみ投稿可能 集客が強い

私見ですが、外部サービスへの投稿が問題ない内容であれば、外部サービスを積極的に使った方が閲覧数は増えるでしょう。開発者がいる場所にコンテンツを投稿する方がより大きな反応が得られるはずです。自分たちのブログに来て欲しい、という待ちの姿勢ではなく、開発者のいる場所に積極的に赴くべきです。

ただし、サービスの新着アップデートやまとめ記事のようなもの、イベント報告など外部サービスの規約上投稿できないコンテンツも多々あります。そうしたコンテンツを投稿できるように自社ドメインのブログも用意しておくべきです。

自社ドメインのブログの場合、WordPressのようなものを使う方法と、はてなブログやWordPress.comなどのホスティングを使う方法に分かれます。これは企業によってポリシーが分かれるので、どちらが良いとは言えません。ただ、運用コストは自社サーバーを用意する方が大きくなるのは間違いありません。

動画

YouTuberとは言いませんが、動画コンテンツはここ数年一気に盛り上がりを見せています。プログラミングや技術系YouTuberは多数登場していますし、企業でも動画コンテンツを数多く配信しています。

テキスト情報は既にあるのに、なぜ動画でも出すのかといった質問を受けることがあります。これは認知特性によるものです。人によって認知しやすい情報の種類は異なります。テキストが良いという人もいれば、動画の方が良い人もいます。プレゼンテーションのような形式が好みだという人もいます。そうした認知特性に合わせてコンテンツを作成することで、より多くの人たちに情報を届けられるようになります。

なお、動画コンテンツはテレビやYouTuberなどのプロの手によって編集された高品質なものとの争いになります。半端な品質では面白みがなく、誰も見てくれません。しかし、編集はとても時間を要する作業で、また技量が問われます。一朝一夕に習得できるものではないことも覚悟しなければならないでしょう。予算があるならば専門業者に任せるのがお勧めですが、それが難しい場合にはトライアンドエラーを繰り返して、じっくり学んでいく必要があります。

あらかじめ編集した動画ではなく、ライブ配信の場合はYouTube Live、Twitch、Discordなどが利用されます。特にゲーム界隈ではTwitch、Discordが使われているケースが多いようです。ライブ配信は編集しないで良いのがメリットですが、中だるみしやすいので注意が必要です。

ポッドキャスティング

仕事中や運動をしつつ、ながら聞きできるのがポッドキャスティングをはじめとする音声コンテンツの魅力です。DevRel Meetupでも「DevRel/Radio」というポッドキャスティングを約1年前(2021年3月)より開始しています。界隈のニュースを紹介したり、毎回特定のテーマでリスナーからのコメントを募ったりしています。

開発者界隈のポッドキャスティングとしては「Rebuild.fm」や「UIT INSIDE」が有名です。特にUIT INSIDEはLINE UIT室が提供しており、LINE社のブランディングにも大きく貢献しているでしょう。

スライド

イベントなどで登壇する際に作成されるスライドも魅力的なコンテンツになります。スライドは知見を分かりやすく再構成した結果であり、技術的に役立つ内容が要約されています。スライドだけで完全に理解するのが難しい場合は、登壇している内容を動画として提供することで補完できるでしょう。

多くのスライドはSlideshareやSpeakerDeckなどにアップロードされます。これらのサービスはWebページへの埋め込みに対応しているので、ブログ記事中に埋め込んで再活用もできます。

書籍/電子書籍

ブログ記事と比べると敷居は高くなりますが、書籍や電子書籍もコンテンツとしてお勧めです。新しい技術用語やトレンドが出てきた際に書籍を求める人は一定数存在します。まず全般的な基礎知識を書籍で学び、最新情報についてはインターネットで探すという学び方です。そうした時にAmazonなどで電子書籍として配布されていると、飛びついてくれる開発者は多いです。

敷居を下げるには、電子書籍から取り組むのが良いでしょう。手軽な方法としては、まずZennではじめてみることです。ZennではMarkdown記法で電子書籍を作成でき、そのまま販売もできます。コンテンツができあがったら、MarkdownとしてダウンロードしてePub化すれば良いでしょう。そうすればAmazon KDP(セルフ出版)で電子書籍として販売できます。

他にも最近では「技術書典」があり、同人誌としての技術書を手軽に出版・販売できるようになっています。こうした機会を利用することで、書籍をより多くの開発者に触れてもらえるでしょう。

eBook

電子書籍と明確な違いがある訳ではありませんが、企業におけるeBookは白書やレポート、ブログ記事には載せていない役立ちコンテンツである場合が多いです。そして、フォームで企業や担当者情報を入力するとダウンロードできます。より絞られた課題に対するeBookであれば、そのコンテンツを欲しがる人たちに、自分たちのサービスを役立ててもらえる可能性が高くなります。

eBookは多くの場合、開発者よりもディレクターやマネージャー層へのアプローチとして使われます。そうした方たちの名前やメールアドレスを収集し、セミナーへの案内やニュースレターを送付します。

マンガ

マンガは日本発の大きな文化です。テキスト情報よりも圧倒的に少ない文字数で、分かりやすく情報を伝達することが求められます。そのため、技術をしっかりと把握した上で、要約して伝える技術が求められます。もちろんマンガとしての体裁も大事です。

そうした苦労があるからこそ、できあがったマンガコンテンツの持つ力はとても強いものになります。例えば、DevRelについてマンガで知りたいと思ったら、以下の電子書籍を読んでみることをお勧めします。どちらも無料で公開されています。

なお、技術マンガは幅広く存在しています。湊川 あいさんの各種シリーズマンガでわかるシリーズではその一端を知れるでしょう。各国語版も登場しており、マンガの強さを感じさせます。

メールマガジン/ニュースレター

両者に大きな違いはありませんが、メールマガジンは一般的にメールだけで内容が完結するようです。対してニュースレターはイベントやブログ記事、ニュースのリンクがメインコンテンツであり、外部サイトに飛ぶ前提になっています。

Flutter Developer Weekly(Flutterのnewsletter)

Flutter Developer Weekly」(Flutterのnewsletter)

最近では開発者向けのニュースレターが盛んで、各技術ごとに存在します。ニュースレターを購読することで、定期的にその技術に関する最新情報を入手できるでしょう。

DevRelに関するニュースレターとして「DevRelニュースレター」もあるので、気になる方は購読してみてください。

オープンソース・ソフトウェアを毎日紹介するブログMOONGIFT、およびスマートフォン/タブレット開発者およびデザイナー向けメディアMobile Touch運営。B2B向けECシステム開発、ネット専業広告代理店のシステム担当を経た後、独立。多数のWebサービスの企画、開発およびコンサルティングを行う。2013年より法人化。

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