DevRelの施策(コンテンツ)
はじめに
前回まではDevRelの全体像を解説したり、事例として先駆者たる企業やサービスを紹介してきました。
今回からもう少し具体的に、各施策について紹介していきます。初回となる今回では、一番低コストにDevRelを始められるであろう「コンテンツ」について取り上げます。
DevRelにおけるコンテンツの役割
もしあなたが、2つあるサービスのどちらかを導入検討しているとします。1つのサービスは検索結果が100万件を超え、もう1つは100件だったとします。どちらを選ぶかと言われて、あえて後者を選ぶ方はいないでしょう。中には使っている人が少ないからこそ、人柱的にトライするアグレッシブな人もいますが、例えば業務で使うとなったら安心できる方を選択するのではないでしょうか。
この検索結果を生み出すのに繋がるのがコンテンツです。コンテンツ施策のほとんどはインターネットで公開され、ウェブ検索で見つかる情報になります。つまり、コンテンツを拡充させることは認知度向上に大いに役立ちます。
さらに、コンテンツは既存ユーザーにも役立ちます。例えばチュートリアルは新規ユーザーのファーストステップに役立ちますし、自社サービスと新しいテクノロジーを組み合わせたブログ記事や事例インタビュー記事は、既存ユーザーの再活性化につながるでしょう。コンテンツ施策は幅広い層のユーザーにアプローチできます。
なお、ことDevRelにおいてはプログラミングコードはコンテンツと分けて考えます。コードに関係するコンテンツについては、次回以降で取り上げていきます。
安価に始められる
コンテンツ施策は、他の施策と比べて相対的に安価に始められます。中でもブログやチュートリアル記事、ドキュメント整備などは今すぐにでも始められるでしょう(もちろん「デザインなどにこだわらなければ」という条件付きですが)。
そのため、個人的にDevRelとして最初に取り組む施策としてコンテンツから始めてみることをお勧めしています。ブログを書くだけならば社内の体制で実現できますし、インターネットで公開されていることで、日々多くの方々に見てもらえる可能性があります。
コンテンツの種類
コンテンツはとても種類が多いのですが、なるべく網羅的にリストアップしていきます。ここでは、以下の2つで分けて考えます。
- 検索可能
- 検索不可
検索可能
検索できるコンテンツはインターネット上で公開され、自由にシェアできます。このタイプのコンテンツに期待するのは、まず検索されて多くの人たちに見てもらうことでしょう。
ただし、見てもらうだけで満足するのは良くありません。メディアサイトならば閲覧数は大事ですが、多くのDevRelを提供するサービスはメディアサイトを運営しているわけではありません。そのため、記事を読んでもらった上で次のアクションを期待するはずです。例えばユーザー登録や問い合わせなどです。
そういった自分たちが期待するアクションに繋がっているのか測定することで、良いコンテンツが提供できているか判断できるでしょう。
検索不可
検索できないコンテンツとして挙げられるのはメールマガジンやeBook、ホワイトペーパーです。こうしたコンテンツはある程度の個人情報を入力してもらった上で提供されます。その目的は見込み顧客のリスト作りになるでしょう。最初からeBookとして作成する場合もありますし、ブログ記事を書く中で特に反響が多いものをeBookにして配布するというパターンも見られます。
検索できないコンテンツは訪問者に1つ以上のアクションを求めますが、それは訪問者にとってストレスでしかありません。しかし、それを乗り越えて情報が欲しいということは、より課題感を強く感じていたり、興味を抱いている方たちです。ブログ記事を読んで離れていく訪問者よりも、よりアグレッシブな人たちであると言えます。
こうして集まったリストには、ウェビナーや相談会など、顧客になるためのネクストステップを案内します。そうして接点を増やす際に、検索できないコンテンツは大いに役立ちます。
検索できるコンテンツの例
ここからは、具体的にコンテンツをリストアップしていきます。恐らく、多くの人たちが目にしたことがあるでしょう。
公式ブログ記事
自社サイト内に立ち上げた公式ブログの記事です。公式サイト内であれば、自分たちの発信したい情報を自由に発信できます。もちろん、それが読まれるコンテンツであるかは分かりませんが、少なくとも外部サービスと違い制約はありません。
主な記事の種類としては技術に関連したもの、イベント(案内・レポート)、機能リリース、その他お知らせなど何でも発信できます。基本的に社内リソースで記事を書きますが、外部ライターを頼ることもあります。
最近では求人を目的とした自社の雰囲気や技術力を伝えるテックブログが立ち上がっています。実際、多くの求職者がテックブログを読んで利用されている技術スタックを学んだり、どういった雰囲気の会社なのかを学ぶようです。
外部ブログ記事
外部サービスを用いたブログ運用もよく行われています。有名どころでは、はてなブログ、Qiita、Zenn、dev.to、Medium、noteなどがあります。これらのサービスは誰に発信するかによって使い分けると良いでしょう。技術系ではQiitaやZennを利用することが多いです。
こうした外部サービスを利用する場合は、投稿できるコンテンツに制約がある点に注意してください。例えば、はてなブログは契約形式により制限があります。そういった点に注意をしながら、サービス毎に合わせたコンテンツを投稿しましょう。
ドキュメント
開発者があなたのサービスを使いたいと思ったときに、確実に見られるのがドキュメントです。ドキュメントはSDKやチュートリアル、API、ヘルプなど様々な種類に分かれます。ドキュメントの読みやすさと理解しやすさは利用意欲に大きく関係します。
ドキュメントには正確な情報が求められます。ブログ記事は発信後に修正されたり、古くなって同じコードが動かなくても許される雰囲気があります。しかし、公式ドキュメントはそのような扱いをされないでしょう。大量のドキュメントは開発者体験を向上させますが、メンテナンスコストが大きくなります。バランスが大事です。
動画
最近は動画による情報発信も活発です。YouTuberというわけではありませんが、エバンジェリストやアドボケイトとして動画発信を強化している人も少なくありません。配信先としてはYouTubeが多いですが、Vimeoを利用しているケースもあります。また、ライブ配信の場合はTwitchを利用している企業(AWSなど)もあります。
動画はともすると冗長的になりやすく、テレビなどの編集された動画と比べると面白くないものになりがちです。近年はYouTuberのレベルも上がっており、手の込んだ編集動画も増えています。そうした中で「どのように見やすい動画を提供するか」が問題になります。編集にはかなり大きなコストがかかるのが難点です。