LFがOSS活用の経済価値に関する調査レポート「Measuring the Economic Value of Open Source」を公開
こんにちは、吉田です。今回は、2023年3月2日にLinux Foundationが発表した、オープンソースソフトウェア(OSS)の経済価値に関するレポート「Measuring the Economic Value of Open Source」の内容を紹介したいと思います。
これまで、OSSの貢献者がコードを提供する理由は広く研究されていましたが、オープンソースを利用する理由とその利用価値はあまり注目されていませんでした。そこで、オープンイノベーションの研究で有名なイタリア・ローマのルイス大学およびカリフォルニア大学バークレー校、またビジネススクールの教授も務めるヘンリー・チェスブロウ氏がオープンソースの利用に関する調査を実施しました。
なお、この調査はフォーチューン500の企業を対象としており、主に大企業がオープンソースをどのように認識しているかを知るうえでとても有用なレポートになっています。
今回の調査に回答した多くの組織で20年以上前からOSSに取り組んでいました。しかしながら、つい最近(5年ぐらい)から取り組み始めたという企業も少なくありません。そういう意味では、OSSの利用経験には大きなばらつきがありますが、この利用経験の違いがそのまま価値観の違いにもつながっているようです。
まず、OSSを利用することで得られるメリットについては、下記のものが挙げられています。
- コスト削減
- 開発スピードの高速化
- オープンスタンダードと相互運用性
また、OSSを使用する際に最もコストがかかると思われるものとして、下記のものが挙げられています。
- セキュリティギャップ
- 隠れたサポートコスト
- ライセンスに関するコスト
次に、自らの組織におけるOSSのメリットとコストの比率に関しては、約3分の2が「メリットがコストを上回る」と回答し、過去5年間においてベネフィット・コスト・レシオが改善傾向にあると回答しています。
さらに、ほとんどの回答者(67%)が、OSSを使用した場合と比較して、独自のコードを書いてソフトウェアの機能を提供する方が、かなり多くの費用がかかると考えているようです。
具体的には、社内でコードを構築する際のコストが、OSSを利用する場合の半分以下のコストであると判断した回答者は14%で、46%の回答者は、内部でコードを構築する場合、OSSを使用する場合の2倍以上のコストがかかると回答しています。
OSSを使用する代わりに商用ソフトウェアを購入するという選択肢もありますが、市販のソフトウェアでOSSを使用した場合の半分以下のコストで済んだと判断した人は、わずか6%でした。一方、30%の回答者は商用ソフトウェアがOSSを使用するよりも4倍コストがかかると判断し、さらに25%の回答者は、商用ソフトウェアは少なくともOSSの2倍コストがかかると感じたと回答しています。
OSSの価値がコストを上回ると考えている回答者ばかりではないことにも注目するべきだと思います。これは、人員不足に加え、最近OSSを使い始めた組織もあり、OSS導入のための準備の費用が、これまでのOSSのメリットでカバーしきれていない可能性があるためと考えて良いでしょう。
OSSの利用に伴うコストとして認識されているのはライセンス要件の管理であり、これを効果的に追跡するための社内プロセスが必要であると考えられています。これらの要件の管理を一元化できるOSPOを正式に設立している回答者はごく少数でした。
LFによるOSPOの最近の研究によると、OSSを扱う際のベストプラクティスを組織全体に広めることにOSPOが役立っていることも分かっています。これは、組織内の異なる部署にある個々のプロジェクトが、その場しのぎの方法でOSSに取り組む状況とは対照的なものになっています。今回のアンケートでは19%の企業でOSPOが設置されていることがわかりましたが、今後増加していく傾向にあると思います。
* * *
OSSは、ソフトウェアコードの開発コストの低減、コードの迅速な展開、広く共有された技術標準に準拠することで得られる自由度など、いくつかの重要なメリットを提供していると認識されていますし、OSSを戦略的に利用し、組織にとって有利な環境を形成することを学んでいる組織もあります。
また、OSSの利用経験が豊富であればあるほど、これらのメリットはさらに高まると考えて良いと思います。つまり、OSSを利用することで、より活気に満ちた、驚きと興奮に満ちた未来を手に入れることができるということになります。
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