プロジェクトに欠かせない「PL」「PM」「PMO」の違いとは

2024年2月16日(金)
甲州 潤 (こうしゅう じゅん)
第3回は、プロジェクトに欠かせない3つのポジション「PL」「PM」「PMO」について、その違いをわかりやすく解説します。

はじめに

これまで、「PMO」(Project Management Office)についていろいろと解説してきましたが、プロジェクトにはPMOの他にも重要なポジションがあります。その代表的なものがPL(Project Leader)とPM(Project Manager)です。

PL、PM、PMOのいずれもプロジェクトには欠かすことができない重要なポジションです。そこで今回はPMOとPL、PMの違いを解説するとともに、中でも私がPMOという職業を選択し、みなさんにおすすめしている理由について解説したいと思います。

「PL」「PM」「PMO」それぞれの役割とは

まずは、1つひとつのポジションの役割を見ていきましょう。

プロジェクトは多くの場合、複数のチームが集まって形成されています。例えば、システム開発・導入を手がけるプロジェクトを進める場合は「アプリケーションチーム」「サーバサイドチーム」「運用チーム」といったチームが存在します。これらチームのまとめ役して配置されているのがPLです(チームリーダーと呼ばれる場合もあります)。PLは自身も現場の実務にあたりながら、チームメンバーへ意見の聞き取りをしたり、指示を出したりして、チームをまとめるのが主な仕事です。

PMは複数のチームから成るプロジェクト全体の総合的な責任を担います。目標の達成に向かって「プロジェクトに何が必要で何が不要なのか」といったこと見極め、全体方針の最終的な意思決定を行うのが主な仕事です。

PMOはこれまで解説してきたように、基本的にはPMを補佐する役割です。PMOが誕生する前はPMが一手に引き受けていたプロジェクト全体の進捗、人員、予算、納期、品質などの管理のほか、リスクマネジメントまで幅広く任せられることもあります。

なお、PMOについて️は前回で詳しく解説しているので、そちらを参照してください。

PMOの仕事の本質は、PLやPMにそれぞれの本来業務に集中して取り組んでもらうことです。技術の進化によって年々複雑化するプロジェクト管理やマネジメント業務、作業報告などの事務の効率化などをPMOが巻き取って交通整理することで、PLやPMは余計な業務に時間と手を取られることなく自分の仕事に集中できます。結果としてプロジェクト全体の円滑な進行につながるのです。

もしもプロジェクトがプロ野球の球団だったら?
大きな違いは担当領域と収入

3つのポジションについてもう少し理解を深めるために、1つのプロジェクトを「プロ野球の球団」と仮定してみましょう。するとそれぞれこのような立場に例えられます。

PL≒コーチ 〜専門分野のプロフェッショナル〜

球団には、投手コーチ、打撃コーチ、トレーニングコーチなどさまざまな「専門分野のコーチ」がいますよね。投手コーチが考えるべきは「もっと速い球を投げさせるにはどんなフォームが良いか?」といったピッチングのことだけで、バッティングにはもちろん口を出しません。バッティングは打撃コーチの担当領域だからです。

PLも同じで、アプリケーションチームのPLはアプリケーションのことだけ考えれば良く、サーバサイドチームのPLはサーバサイドのことだけ、といったように担当領域は専門分野に限られています。自分も手を動かすので専門スキルももちろん必要ですが、あくまでも自分のチームに課せられた業務や問題解決を遂行することが仕事で、それ以上のことは求められません。そういう意味で担当領域は狭めですが、自分の得意分野がある人はその力を発揮できます。

PM≒監督 〜球団全体の意思決定を行う〜

野球における監督は、球団が優勝するために何をすれば良いか球団全体を俯瞰して戦略を考え、戦術や施策を決定します。例えば「バッティングを強化したい」と考えれば、もっと専門知識や経験に長けたバッティングコーチを他チームから引き抜いてくるといった策も取れるわけです。ただしその際は「今年の予算だとこのレベルのコーチが限界だろう…」といったコスト面などまで考える必要があります。

PMもプロジェクトの総監督としてプロジェクト全体を担当領域とし、計画が円滑に進行して目指す成果が出せるよう、広い視点で最適な人材配置や環境整備といった方針を決定、実行します。例えば「アプリケーションチームのスキルレベルが低い」と感じれば、外部からアプリのプロフェッショナルをチームに加えることもできますし、事業戦略そのものに問題があれば良いコンサルタントを連れてくるといった判断もできます。もちろん人材を引っ張ってくるためにかかる費用についても考えます。

PMO≒球団のゼネラルマネジャー(GM) 〜球団内外の舵取り役〜

GMは監督やすべての選手、球団運営までを含む球団全体の舵取り役です。みんなが目指す球団を実現するための戦略を考えたり、他球団と交渉したりと球団外と関わることもあります。

PMOも同じです。各チーム、メンバ、PL、PMが「納期までにシステムを開発する」など共通の目標に正しく向かって行けるよう、管理や調整、効率化といったマネジメントを行います。ときにはチーム間やクライアント間の橋渡しをするなど、部署や自社の枠を飛び越え横断しながらの業務が求められることもあります。

つまり、PL、PM、PMOの大きな違いは、その担当領域の大きさなのです。特にPLからPM、PMOでは専門分野だけの狭い領域からプロジェクト全体、プロジェクト外までもとグッと一気に広がるのがお分かりいただけると思います。また責任を負う範囲も大きくなるため、その分、得られる収入も大きくなっていきます。

IT企業においては「PLからPMOやPMにステップアップしていく」のがよくあるキャリアパスですが、求められている仕事や領域、必要な能力や思考はかなり違うと考えて良いでしょう。PLとして経験を積んで専門知識に長けていても、全体を俯瞰して意思決定する判断力、マネジメント力がなければPMOやPMは務まりません。

野球のMVP選手や名コーチがみんな名監督になれるとは限らないように、PLみんなが優秀なPMOやPMになれる、というわけではないのです。またPMだからといって、すべての専門分野のプロフェッショナルである必要もないのです。個々の専門領域はPLに任せられるからです。

キャリアを選択する際に「ゲーム開発が好き!」「アプリケーション開発が得意!」といった好きな分野、得意分野がある人は、PLを極めるのも選択肢の1つだと思います。もちろんPMやPMOを目指して、さらに力を付けてキャリアアップするのも良いでしょう。

逆に「得意分野が見当たらない」「やりたいことも特にない…」という方には、ぜひPMOへの道をおすすめしたいと思います。

PMOは部署や会社、業種の垣根を超えて役立つ
ポータブルスキル

では、なぜ私がPMOをおすすめするのか。それは、社内のみならず社外、さらには業種も問わず幅広く応用できる職種だからです。

もっと言えば、会社員としてPMOになるのではなく、フリーランスのPMOとしてさまざまな会社のプロジェクトに参画するチャンスにも恵まれます。PLやPMは社内から選出する企業が多いですが、お客様から「客観的にプロジェクトを見てほしい」と言われることもあります。社外からプロジェクトに関わることで、進行や案件管理をスムーズに進められるというメリットも多々あるのです。

PMOのスキルを身に付けておけば、フリーランスになろうが、別の会社に行こうが、プロジェクトが存在する限りずっと活用できる、ということになります。つまり、持ち運び可能な「ポータブルスキル」なのです。

VUCA(ブーカ)*と言われる予測不可能な時代。変化が激しい中で、いつどんなことが起こるかわかりません。そんなときに、どんな部署でもどんな企業でも応用できるPMOスキルは、大きな強みとなるのではないかと感じています。 *: Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったもので、変化が激しく予測困難な状況を表す言葉。

おわりに

第3回の今回は、以下のような内容を解説してきました。

  • 3つのポジションはどれもプロジェクトには欠かせない役割だが、求められるスキルや担当領域、収入には違いがある
  • 何も目指すものがない人、幅広い分野で活躍したい人にはPMOがおすすめ
  • どんな場所でも応用できるPMOスキルは、VUCA時代の強みとなる!

第1回でも触れましたが、PMOはIT系企業やシステム開発のプロジェクトのみならず、商品開発やプロモーション活動、行政サービスなど、プロジェクトが存在する場所ならばどこでも活躍できます。そういう意味でも、今の仕事やこれからのキャリアに悩む方には、ぜひキャリア選択の1つとして知っておいていただきたいと思います。

次回は、PMOに向いている人、向いていない人、それぞれの特徴について解説します。どうぞお楽しみに!

著者
甲州 潤 (こうしゅう じゅん)
株式会社office Root (オフィスルート) 代表取締役社長
国立高専卒業後、ソフトウェア開発企業でSEとして一連の開発業務を経験し、フリーランスに転身。国内大手SI企業の大規模プロジェクトに多数参画、優秀な人材がいても開発が失敗することに疑問を抱く。PMOとして活動すると多数プロジェクトを成功へ導き、企業との協業も増加。2020年法人化し企業課題と向き合う。【著書】『DX時代の最強PMOになる方法』(‎ビジネス教育出版社)
URL: https://www.office-root.com/become-excellent-pmo/

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