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これが進化する組織力だ!

2008年12月8日(月)
矢野 和男

組織力とセンサー

 組織固有の記述は一般化してあるが、第2話の内容も実際に起きたことだ。最近、組織の力が発揮できていない会社が増えている。そして、それに気づく人が徐々に増えている。さらに、これはITでは解決できないのではないか、と感じる人も増えている。

 われわれがコンサルティングしているほとんどすべての組織で、顧客の案件の受動的な対応はできているが、それを超えた価値の創造ができないという問題が出ている。人と人の横のつながりが弱っていることも共通である。こういう状況では、若手の育成がおろそかになり、職場には「やらされ感」が増す。成果主義の影響やメールの発達で、人と人とのフェーストゥフェースのコミュニケーションができない人たちが増えていることもある。

 しかし、それは本質的な議論ではない。上記組織力の問題の本質は「人の心」と「人と人の関係」の問題であり、これがマネジメントにおいて無視されやすいことにある。

 人の能力は、前向きにとり組む時と、そうでないときとは、比べものにならないほどの違いがでる。感覚的には、10倍以上の差は簡単についてしまう。「人と人との関係」についても同様である。うまくいっている関係では、1人で行う時の10倍以上のスピードで仕事は価値を生む。うまくいっていない関係では、逆に1/10以下の価値しか生まない。能力を最大に発揮しつつ、周りと相乗効果を生みつつ仕事に挑戦することをわれわれは「仕事を楽しむ」と呼ぶ(図2、これの詳しい説明は第4回に行う)。

 しかし、こうしたことは目には見えず、定量的に計測できない。よってお金などの定量性の前に、こうしたことは判断における優先順位が一気に下がってしまう。これが、無意識に訴えかける「量(として測れるもの)の暴力的な力」である。変化があるたびに、それが繰り返され、変化のスピードが速まる中で、お金の力は増幅されてきた。結果的に、「人の心」や「人との関係」は無視されつづける。それが、上記の根本原因なのである。

 この状況を一変させるのが、「X-顕微鏡」というセンサーだ。

 われわれは、上記「仕事を楽しむ」ことが、企業価値の最も大きな核と考えている。仕事を楽しむことにより、業績面での結果もついてくる。それがさらに仕事を楽しむ機会を増やす。このポジティブサイクルをつくり出すためには、「仕事を楽しむ」を定量化し、これを育成する施策を絶えず進めることが重要である。これにより、お金の「量の暴力」によって、これらを無視しようとする圧力と初めて戦うことができる。量には量で戦う。それが「X-顕微鏡」の最大の威力である。

三角関係に隠された意味

 人と人とのつながりは複雑であるが、基本的な単位を深く知ることで性質を解明できると考えている。これは、筆者が「組織フィジクス」と呼ぶ新しい分野の一環である。

「組織フィジクス」と呼ぶのは、「X-顕微鏡」のセンサーデータにより、社会科学、人文科学などで使われている「科学」という言葉を超えて、原理から組織を解明することを期待するからである。

 既に、われわれは、30,000人日の世界最大の人間行動のデータベースを構築し、現在もデータは急速に拡大している。これを活用し、生産性、組織の壁、チームワーク、リーダーシップ、活気、そして「仕事を楽しむ」の原理を解明しようとしている。

 このために、最小の組織ネットワーク単位である「三角関係」に着目している。自分をXとすると、知り合いにAさんとBさんがいる。ここで、A-X-Bという三角関係が生まれる。

 組織において、最も小さい単位は2人であるが、2人から3人に増えると、質的な差がある。つまり、組織の重要な課題は、3人集まって初めて現れる。情報交換、共同作業、意思決定いずれも3人では、一気複雑になる。同時に、この複雑さゆえに、生み出すものの価値も可能性も一気に増す。このトリオの価値を活用しなければ、組織をつくった意味はないと考えてよかろう。

 ではなぜ、トリオは組織図に現れないのか。組織図では、すべての社員を「上司-部下」というペアの構成員に分解する。決してトリオは現れない。トリオの複雑さもそこから現れる真の知恵も無視する。むしろ「トリオは組織に存在してはいけない」と暗にいっているように見える。しかし、ここに21世紀の組織力の飛躍の機会がある。

株式会社日立製作所
1984年日立製作所入社以来、中央研究所にて半導体の研究、特に世界初の単一電子メモリの室温動作、携帯電話用プロセッサなどのシステムLSIの研究を行う。現在、センサー情報を使った新しい生き方や働き方の研究と事業化を進めつつ、自ら実践している。中央研究所主管研究長と基礎研究所人間情報システムラボ長を兼任。工学博士。IEEE Fellow。http://www.hitachi.co.jp/

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