GaucheでCOOLなWebアプリ!
続・継続を使ったCOOLなWebアプリケーション
先ほどの流れは、以下のように置き換えられます。
1. 編集用ページ表示用のデータを準備
2. Updateボタンが押されたら、「変更データを取得しRDBを更新」する処理を実行するように設定
3. 編集用ページの表示
リスト7のedit関数はこのように書かれています。define-continuationはマクロで「変更データを取得しRDBを更新」を行うlambda式を、継続用のpush-cont!関数を使ってハッシュ(hash)に格納しています。
コードの最初の方を見てみましょう。(define *conts* (make-hash-table 'eqv?))は、make-hash-table関数でハッシュテーブルを作成し、*conts*広域変数に代入しています。
make-hash-tableの引数はハッシュのキーの一致をチェックする関数の指定です。*cont*ハッシュのキーは乱数(数値)なので、数値も正しく比較できるeqv?を指定しています。比較関数については、Gaucheのリファレンスマニュアルを参照してください。
push-cont!関数は、random-integerで64bitの乱数を発生させ、その値がすでにキーに使われてなければ、その値をキーとして引数contをハッシュテーブルに格納し、キーの値を戻り値とします。すでにハッシュテーブルのキーとして使われていれば、再度キーを発生させます。引数contは次に行うべき処理(lambda式)です。
get-cont関数は、URL内のパラメターに@cont@があれば、その値をハッシュのキーとして、ハッシュテーブルから読み出しを行います。もし、@cont@の値のキーが存在しなければ、3番目の引数の#fを戻します。
また、アプリケーションの入り口であるrenderも変更されていて、get-contを呼び出し、継続がある場合は、その継続を実行するようになっています。
単に次のブラウザからのアクセスで記憶された関数を実行するだけなら、Javaでもできると思われるかもしれませんが、変更データのIDはhidden経由ではなく、edit関数でid変数に代入したIDの値が、そのままRDB更新処理でも使われています。
これは、Schemeの機能でlambda式が定義された時点でのlambda式の中で参照している、lambda式の外で定義されている変数の値も、lambda式と一緒に保持しているからです。このような概念をクロージャ(Closure)と呼びます。
クロージャはSchemeでは非常に重要な概念ですが、ページの都合上、今回は解説を割愛いたしました。興味を持たれた方はぜひネットや書籍で調べてください。また、このコードは「プログラミングGauche」第26章のコードを参考にしています。
まとめ
後半は、かなり駆け足になってしまいましたが、Gauche(Scheme/Lisp)でも、皆さんが普段書いているような、Webアプリケーションが書けることが理解できたのではないかと思います。
さらに、かなり短い行でテンプレートエンジンが作れたり、マクロで簡潔な記述ができたり、継続を使って複数のページにまたがる処理を1つの関数で簡単に書けたりするGaucheのシンプルさ、強力さを感じ取っていただけたら幸せです。
仕事の中でGauche(Lisp/Scheme)を直接使う機会はあまりないかもしれませんが、このような考え方を知ることは実務の中で役に立つことがあります。
筆者も以前いた会社でCADのベース部分を作る際には、再帰的なデータ構造の扱いなどで、Lispを知っていたことが大変役に立ちました。また、RubyやJavaScriptでプログラミングする際には、クロージャなどのLisp/Schemeの知識は直接使え、COOLなコードを書くのに役立ちます。
筆者自身、卒業研究で偶然Lispに触れたことは、その後のプログラマ人生をとても豊かなものにしてくれたと感じています。
また、今回の記事を書くにあたり、Gauche作者の川合さんをはじめ、Gaucheを愛する開発者の方々にいろいろとご指導いただいたことを感謝します。そして最後まで読んいただいた皆さまに大変感謝いたします。