なぜファイルサーバーはごちゃごちゃに?

2009年1月9日(金)
羽鳥 正明

情報量の増加>ディスクの増加という現状認識

 企業が取り扱う情報量は、近年50~60%の割合で増加しており、この傾向は、今後10年以上継続すると予想されている。そこでの課題は、急激に増加している情報を保存するインフラをどのように用意するかである。

 昨今の景気動向を考えると、企業が投資するITインフラコストは縮小傾向に進みつつある。しかも、省電力化やグリーン化など、方針がコストを縮小するほうに向いている状況で、情報インフラを年率50~60%の伸びで投資することは現実的ではない。投資を最小限にとどめつつ、必要な情報は適切に保存するために、今後は「単純にストレージ容量を増加する」のではなく、「よりインテリジェントに保存する」ことを考える必要がある。

 しかし、建前は上記のような将来を見据えた大きなビジョンで物事を考えなければならないが、実際の現場では、急激なデータ増加に対応するために、いわば応急措置のようにファイルサーバーを追加していることが多い。

 簡単に導入できるものとしては、部門サーバーにハードディスクを追加したり、量販店で販売しているようなLAN接続タイプの外部ストレージ(NAS:Network Attached Storage)を2台接続してディスク同士でコピーを作成するようなものがある。

 また、最近ではRAID(Redundant Array of Independent Disk)を組むことで、ハードディスクに障害が起きても復旧できるようなNASによるファイルサーバーも手軽に購入することができるようになってきた。これも、SATA(Serial ATA)ディスクの1個あたりの容量増加が著しいため、以前では考えられないほどの安価で大容量のファイルサーバーが手に入る。

 ただ、図1に示すようにディスクの容量増加の伸びよりも日々の情報量の増加のほうが著しいことを念頭に置くことが必要だ。

 本連載では、情報量の急激な増加とハードディスクの大容量化/低価格化という状況を踏まえ、ファイルサーバーの上手な運用方法や、大規模化に伴う統合方法のコツを紹介していく。第1回で紹介する1つ目のコツは、ファイルサーバーの目的や抱えている課題を整理し、現状を正しく認識することだ。

ファイルサーバー導入の目的

 ここで、ファイルサーバー導入の目的をあらためて見直してみよう。大きくは「1.ファイルをネットワーク経由で公開、共有」「2.文書作成の共同作業化」「3.ローカルのディスク容量を補完」「4.バックアップの一元化による運用管理の簡素化とデータ信頼性の確保」の4つに分けられる。

 これらはファイルサーバーがなくとも、メールのやり取りで事足りることもあるが、メールへのファイル添付が増えれば、その分重複したデータがメールサーバーや各個人のローカルディスクに保存されることになり、ディスク容量の無駄な消費につながってしまう。また、添付されたファイルを各個人がローカルに保存して、それぞれアップデートするのは共同作業とは言いがたい。そこでファイルサーバーの導入となる。

 ファイルサーバーの導入は比較的簡単である。一番敷居の低いファイルサーバーとしては、クライアントマシンがある。また、LAN接続タイプの外部ストレージはマニュアル通りに設定すれば、サーバーに関する知識がなくても導入することができる。多少高度な設定を行おうとするなら、安価なIAサーバーにWindows Serverをインストールしてファイルサーバーとして利用するのも、Windowsに慣れた人ならそれほど難しくはないだろう。

 一言でファイルサーバーと言っても、さまざまな導入形態があり、規模、予算などにあわせて検討することになる。

 続いて、ファイルサーバーの種類について考えよう。

EMCジャパン株式会社
マーケティング本郡 プロダクト・マーケティング・マネージャ。外資系ITベンダにてPC、サーバーのプロダクト・マーケティングを8年間担当。その後Linux/OSSビジネス関連企業にてマーケティング全般をマネジメントした後、現在はEMCジャパンにてストレージならびにバックアップ製品のマーケティングを担当。http://japan.emc.com/

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