なぜファイルサーバーはごちゃごちゃに?
ファイルサーバーを長期運用するときの課題
まず1つ目は、非効率な共有化である。企業では、膨大な数の文書が日々生成されており、それらはどこかに保存されている。そして、それら情報資産の大部分は、二度とアクセスされないまま放置されていることが多い。
個人が作成したファイルは、各部門のファイルサーバーに保管され、ファイルサーバー内で共有されている。しかし重要度に関係なく保存されるため、見た目の区別がつかずに同じ部門内でさえ共有が難しい。これは、ディレクトリのツリー構造が固定されているために、個人の好みで作ったツリー構造を他人が理解しづらいことにも原因がある。
しかも、ファイルサーバーの共有データは、それぞれ分散して保存されているため、企業全体の情報は一元的に管理されず、大事な情報資産の有効活用ができない状態となっている。これは、企業として情報を武器にすることができていないということに等しい。
2つ目がファイルサーバーの容量の低い使用率だ。ファイルサーバーの使用率がそれぞれまちまちであり、横断的に管理されていないため、ストレージの無駄が多くある。
しかも、大容量のストレージを少しずつ消費していったほうがしばらくの間は容量管理(クオータ管理)に悩まされないので、導入時に過剰なストレージ容量を搭載するケースが多い。これは、乱立したファイルサーバーすべてに渡るとしたら、大変無駄なストレージ容量がひっそりと眠っていることになる。
3つ目が無駄なコストの支出である。ストレージ容量を拡張するのに、ファイルサーバーを追加するということは、1台だけ見れば安価だが、それが100台にもなると企業全体で考えればコストがかさんでくる。それぞれのサーバーに、OS、バックアップソフトウエア、ウイルス対策ソフトウエアなどを用意して、製品サポートも場合によっては契約することになる。
上記の点に加えて、ハードウエアリソースの無駄遣いも発生する。例えば、サーバー(CPU)やストレージのバックアップ装置も各拠点に用意しなければならない。拠点間でそれらのシステムリソースを共有できないので、システム投資がかさんでしまう。もちろん、ハードウエアとソフトウエアの購入費用や保守費用が増加する。しかも、それぞれのファイルサーバーに配置された管理者の人件費も大きくなってしまう。
当然だが、ファイルサーバーが乱立すればそれだけ運用にかかる電力消費量も上がり、グリーンITの考えとは相反した運用となってしまうことは明らかである。
4つ目が情報保護の不安だ。バックアップとリストアに対する社内標準プロセスが存在しないことが多い。そのため、手順を知っているのは、それぞれのサーバー管理者のみ、というケースもある。いざというときに、管理者が会社を休んでいたら、出社してくるまでリカバリーができないということも起き得るのだ。また、管理者が変わることもありうるが、そのたびにきちんと引き継ぎが行われているとも限らない。
最悪のケースでは、一部のファイルサーバーはバックアップさえきちんと取られていない状態で運用されている。もちろんシステムが故障すればデータはなくなってしまう。
5つ目がセキュリティーの問題である。セキュリティーポリシーがなければ、管理者ごとにセキュリティー設定がばらばらにならざるを得ない。片手間の管理者を責めるのは酷であるが、一つ間違えると企業存続にもかかわる危険性があることを認識したい。しかもコンプライアンスを考えれば、なおさらである。
それぞれのファイルサーバーに情報が分散して保存して言う状況はセキュリティー上、望ましいはずはなく、そのような緩いシステムでは、社内からの情報漏えいがいつあってもおかしくないだろう。企業規模が大きくなればなるほど、すべてのファイルサーバーに渡る統一されたセキュリティーポリシーを構築して、全社レベルで確立することが重要となっている。
また、Windowsで構築したファイルサーバーでは、OSのパッチ適用を都度行う必要があるが、果たしてすべてのファイルサーバーに最新のパッチが適用されているのか分からない。もちろん、確実にアップデートを行っていたとしても、メンテナンスのダウンタイムなどを考慮する必要がある。
課題解決には?
これらの課題をどのように解決することができるのだろうか。次回は、ファイルサーバーの運用における注意点として、命名規則やソリューションについて解説していこう。