2008年のGoogleを振り返る!

2009年1月16日(金)
栗栖 義臣

どこまでシェアを伸ばせるのか!「Google Chrome」

 Googleがついにブラウザをリリースしました。Safariで利用されているWebkitをベースに、V8と呼ばれる独自の高速JavaScriptエンジンとGearsを搭載したWebブラウザです。今年はちょうど、SafariやFireFoxなどのブラウザで新しいバージョンがリリースされ、ブラウザ戦国時代の幕開けとなりました。JavaScriptを多用した高機能なサイトが多数登場していることから、どのブラウザも「高速なJavaScriptエンジン」というのを売りの一つにしていました。

 Google Chrome(http://www.google.com/chrome/)はそれに加え、閲覧履歴が残らない「シークレットモード」や、デスクトップにサイトへのショートカットを作成する「アプリケーションショートカット」など独自の機能が提供されています。特にアプリケーションショートカットは、このショートカットから起動したウィンドウはメニューバーやアドレスバーが表示されないので、Webアプリケーションをまるでデスクトップアプリケーションであるかのように利用できます。

 Chromeには、対応サイトであればWebアプリケーションをオフラインでも利用できるGearsが標準で組み込まれていて、GoogleカレンダーやGoogleドキュメントなどをオフラインで利用するのに長(た)けています。一方で、開発者に人気のGreasemonkeyなどのプラグインが利用できなかったり、一般のユーザーにはまだまだ知名度が低いため、劇的にシェアを獲得したわけではありませんでした。一般公開から、定期的にバージョンアップが行われているので、2009年にはより機能が充実したものになって普及が促進されるでしょう。

今後の動向に注目したい「Google Health」

 最後に、今後注目のサービスについて触れておきます。筆者が注目しているのは、5月にアメリカでリリースされたGoogle Health(http://www.google.com/health/)です。名前から想像できるように、個人の健康状態をGoogleがウェブで一元管理するというサービスです。

 病気にならない方には今ひとつピンとこないかもしれませんが、病院に通った記録や、もらった薬の記録というのはなかなか面倒で難しいものです。個人の病歴や投薬記録は、それぞれの病院や薬局で独自に管理されています。医療ドラマなどでは、急患で運ばれてきた人の病歴が分からず、セオリー通りの治療を行ったところ、その治療の中で使われた薬にアレルギーがあり…というようなエピソードをよく見かけます。

 私自身、風邪やへんとう炎などでよく病院に行くのですが、まじめにお薬手帳とかをつけていないので、「前はどんな薬を飲まれてました?」と聞かれても答えられないことがよくありますし、健康診断などで撮影されたレントゲン写真や自分のカルテなどを、自分が見ることができないのには少々不満があったりもします。生命にかかわる重要や情報であるにも関わらず、個人が自分の医療記録を管理できていないところに、アメリカや日本の医療に関する問題が潜んでいます。

 そいうった医療に関する情報が一元管理され、自分に関する情報をいつでも手軽に見られるということは、かなり便利な気がします。一方で、医療記録というのはかなりデリケートな個人情報になるので、一企業を信頼して預けてしまって良いのかという指摘もあります。

 また、医療に関する領域は、いろいろな利権が絡み合っているところでもあり、政治的な解決を必要とするシーンも数多く見受けられます。果たしてGoogle Healthはアメリカで受け入れられ、成功するのか。そして日本でも同様のサービスが展開されるのか。今後に注目したいサービスの一つです。

 原稿執筆現在(12月上旬)にもGoogle Friend Connect(http://www.google.com/friendconnect)が公開されたり、Google Readerのデザインが一新されたりと勢いは止まりません。2009年もGoogleが便利なサービスやAPIを提供してくれることを楽しみにしていたいと思います。

【参考文献】

「Google Japan Blog」(http://googlejapan.blogspot.com/)(アクセス:2008/12)

「Google Blogoscoped」(http://blogoscoped.com/)(アクセス:2008/12)

「Google Mania - グーグルの便利な使い方」(http://google-mania.net/)(アクセス:2008/12)

株式会社はてな
大手SIerを退職後、エンジニアリングディレクターとして2008年に株式会社はてなに入社。Mash up Award 2ndで「サグール賞」「きざし賞」「特別賞」、iGoogleガジェットコンテストで「特別賞」を受賞。http://d.hatena.ne.jp/chris4403/

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